花見
春はイベントが多いがすべて私的なイベントなので参加しないと表明したからのんびり近所の公園で一人の花見をする予定だったがなぜか本家の花見に連行させられた。本家は表で他家を招いての花見をおこなっりながら奥では一族の花見を開催している。奥の花見もほぼ私的なものなので参加する気はさらさらなかったのに今年からは公的な花見とみなされたらしい。
公的というのだから桜を見ながら一年行事の話し合いや一族間の婚姻の許可や縁組などの話し合いと新しい技術の開発についてと古い技術の洗い直しについて討議・報告することに決まったらしく私がゲーム内で行っている技術が一族内の古い技術を今風に直したものだろうとゲーム内の映像を参考映像として提出しながら発表するということで考案・使用者として強制出席させられたのだ。公式の場だから制服で良いよね?と通達が来た時に母に聞いたら何を言っているの!!と言われて珍しく私が公式の場に出ることを乞われているのを喜んでいた。で、今の今まで袖を通さなかった私の公式用衣装を引っ張り出してこれを着ていこうねと言われた
私の公式用衣装というのは家の家紋と私用の文様を縫い付けた訪問用の着物の事。のっぺりした顔の私ははっきりした色が似合うということで稲穂色の生地で春めいた花が舞っている春用と同じ生地の紅葉が舞っている秋用。水色の朝顔が付いた絽の夏用着物がある。小物は私が刺繍したものやその時期にあった柄の巾着とかんざしだ。あまりキラキラしたような装いではなく私に見合ったものを取り揃えてもらっている。姉たちは公式に出ることが多いで着物以外は自分たちの婚約者からプレゼントされた以外の小物は共有している。一般サラリーだといちいち新しいのを買う事は難しいのでそこら辺でケチっているし私が作った小物も姉たちに使ってもらっている。和柄の布で出来た髪留めとか着物でも違和感のないシュシュは私製作したものだったりする。
話を戻す。本家の奥に朝から親に付き添われて出向き指示された部屋で順番を待っている。
ふと表では他家を招く前に会場にいろいろと仕掛けを設置しているだろうとその発動のために分家の一つで舞い踊ることで能力を発動する一族の友が躍るのだろうと思い出して春を喜ぶ歌を小声で歌う。春が来て暖かく幸せな季節が来た。草木が芽吹く季節をともに喜ぼうという趣旨の歌だ。彼女のお爺ちゃんつまりは先々代が良く歌っていながら舞い踊っていたのを思い出したから
その時の風景を思い出しながら歌を間違わないように教本を出して歌う。彼女が躍るだろう舞と彼女のおじいちゃんが躍っていた舞を脳内再生して。脳内再生された場面で流れる曲と自分の音を重ねて歌う歌は間違っているのかどうなのかちょっと私の脳みそだと判断できないが歌い終わった時の満足感が得られたので間違わないようだ。
ふーっと息を付き茶を入れて余韻に浸る。そーいえばと思いながら思い出しながらそのあとにも数曲歌を歌い自己満足しながら庭を眺める。案内された部屋からは桜が見えるので脳内再生していないときの歌は桜に歌を聴いてもらうような気持ちで歌っていたのだ。その歌がいつの間にか表の会場に流されていたとは知らなかったしそのあと歌を司る一族と友人に突撃されるとは思わなかったが。
なかなか呼びに来ないので暇だった私は姉のためにシュシュを作り出すためにお道具箱を開ける。巾着を作るだけない切れ端の生地で可愛い奴を出してチクチク縫い始める。ふんふん鼻歌を歌うのは教本に書いてある効果いろいろつけれる歌。口ずさむ和歌は防御や回避力を上げる歌。大切な姉たちを微力ながら守るために。ちなみハンカチや巾着の裏地には刺繍で防御とか回復とか結界とか身を守ることを重点的に刺繍している。婚約者が守ってくれると言っても男が入れない場所で攻撃されたら困るでしょ?攻撃されたらその攻撃を倍々返しにするように刺繍をしている。一応何かあったら困るからね?と言って渡した時の姉の婚約者たちの何とも言えない顔が思い出させる。信用していないわけじゃないのよ保険だよ。保険と言って何とか納得してもらった
夏用に朝顔かアジサイを作るかとどんなのを作るかデザインを描いていく。ちなみに絵心がないのでどんなのがいいのか姉や絵心のある姉たちの婚約者たちに書いてもらったスケッチブックがあるのでその中からどれがいいのか考えるだけ。お小遣いをためて買った窯でちまちま作っているのがたまに姉の婚約者が乱入してきて勝手に作品を作り始めて勝手に完成させていくが、材料は私のものを使っていくのでむかつくのだ。勝手に使うな使うながら補充しろと言っているのだが聞き入れてくれないところがさらにむかつく
などと考えながら好き勝手に過ごしているとやっと呼びに来た。いつでも人が来ていいように出したらちゃんと仕舞って散らかしてなかったからあわてないで手元にあるのを仕舞う。仕舞うと言ってもお道具箱は私の特有の能力で仕舞っているのでどこでも空いた時間でできる暇つぶしの逸品。読書用の本も時代小説や冒険もの奇譚ものまでさまざまなものを仕舞っていて読みたいジャンルを思い浮かべれば脳みそが勝手に判断してその時の気分に見合ったものを出してくれるし教本も各種揃えていて目的のものを出してくれる優れもの。本人のスペックよりも優秀な能力なのでとても重宝している。教本は本家の所蔵本を写本しているのでもとで無料。ああ!!この機会に奥の書架からいい感じの本を借りて諸本すればよかった!!と後悔したがお呼び出しが終わったら家族が迎えに来るまで写本すればいいかと思い直しておく。呼びに来た人は百面相している私を見て困った顔をしているのが気にしない
さて、朝から待たされて呼び出されたのは昼前とか無駄時間じゃね?と思いつつゲームでいつも以上に好き勝手にしている自分の映像を見させられながらこの時の発動スキルはとかこの時のスキルの使い方はとか説明している分家の話を聞いている。彼らいわく自分たちの家の技術を勝手に使っていると主張しているがそれを聞いている重役や当主はあきれ顔で聞いている。すべて本家でどの一族でも申請すれば解放されている技術を掛け合わせているいる物や熟練度でノーモーションでやっているように見えるだけでどれも基礎中の基礎技術だとわかっているからだ
「それで何が言いたい。彼女は公開されている情報を自分なりに進化させたり複数の技術を掛け合わせて使っているだけだろ?それが上位種の技術になっているのは彼女の判断力と技術の熟練度が君たちよりも上だからだ。自分たちの未熟を公開して私たちに何をしろと?そもそもあのレベルまで適性のない人間が頑張っているというなら彼女に褒賞金を出した方がいいかな?」と聞いている重役さん。それに頷く周りの大人たちと悔しそうな顔をしてる訴えていた人。自分たちの息子はなんていう事を言っているのだろうと呆け顔をしている親たち。
「私はどうすればいいのでしょうか?ゲームで今使っていた技術を使わなくても取って変わる技もありますし。停止しろというならばそれに従います。私的には各家の先代・先々代の指導映像を脳内再生してそれに沿って体を動かしたり自分なりに工夫して取得したものなので特に。公開技術を積み重ねればという言葉通り技術に磨きをかけただけた物の内の数個ですから」しらっと良い切っる私を見て変な顔をしている人たちがいる。防御も攻撃も各家の公開技術を指導映像を見ながら取得したからいつでも脳内再生できるし教本を補佐的に使っているので数個の技術が使えなくても応用で代用できる技術など沢山ある。現在進行形で公開されている技術も同時に習得しているので昔の技術を今の技術と掛け合わして違う技術を生み出してみたりしている。新しいのは私の技術だから他の人に文句を言われることもないし公開している物だがらそれを発展してどうのようにしても本家本元に文句言われる筋合いはない。そんな風に思っているから焦ることもなく背筋を伸ばして胸を張っている私に姿を見て何やら考える人もいるみたいだ
「この話はこれで終わりだが。脳内再生で今代・次代に伝えたいことをはないか?」重役に言われてふと思い出した言葉を映像通りの口調で伝えた。私の声なので発言した当人の声ではないが、息継ぎや声の出しかた。雰囲気は同じだったのだろう話し始めると息をのんで聞いている人間の真剣度合いが増している。言い終えたて自分に戻るとピリピリしている雰囲気にびっくりした
「私には意味が分からないですが、託されていたので。各家の当主様たちには意味がお分かりになると思います」そういうと気を引き締めている人が多いなと見ながら思う。誰しも大切な人がいるように映像に残っていた彼らにも大切な人のために残した思いがあるのだから。理解できた私がちゃんと伝えないといけないとは思っていたが渡すタイミングがなかったからちょうどよかった
「審議はこれにて」と下がる許可を貰ったので一度部屋に戻った後に図書館と言っていいくらいの規模の図書室に行き取得したい技術や取得したが何か足りない技術を練習するために必要な教本を捜索に行く。ふんふん鼻歌を歌いながら自分の巣と言っていいぐらいの図書室で、新しく公開されている技術もなんとなく読んでみたが取得した技術の補佐的な技術とかそれを簡易タイプにしていたものなので一緒に使えば幅が広がるんだな~と思いながらまずはこっちと数本借りて与えられた部屋に本を持っていく。
部屋に付くとお客さんが数人というかかなり重要な人たちが部屋にいた。図書館を満喫している間に集合したらしいのだが何の用だろう?教本をテーブルに置いてまずは要件を聞くと脳内再生の映像はどこから得られたのかと言われたので他家用の映像集で見つけたと置いてある場所を教えて差し上げた。ちなみに自分なりに編集したものもあるがそれより全部一度見た方がいいだろうと思って言わなかった。さっそくと言いかけた各家の当主が立ち上がるのを止めたのは私と交流がある人の一人
「どうせお前の事だからダイジェスト版があるんだろ?」手を出して早く出せ言っている
「全部まるっと移したものと技術特集と雑談特集はありますが、全部の家の技術を見ないと借りれない特典映像なので出したくないです。一日一本ずつ見て技術を取得したら今より良い技術を排出するとおもんで、伸びしろっていうんですか?それを摘み取ることは私はしたくないです。先代・先々代の思いを潰すことはしたくないです」
「何エラそうに言ってんだよ。面倒なんだろ?出すのがどうせ。さっさと出してさっさと放映しろ」お茶をすすりながら一歩も引かない姿勢で言ってくる。あーとこのやり取りしている時間がすでにもったいないと思い直して
「わかりました。でもまるっとすべての技術映像を見てもらわないと公開できなものもあるので。まずは普通バーションの短時間で見終わるのを出しますから勝手に見て勝手に考えてください」どさっと出した簡易技術特集の映像をテーブルに置く
「そもそもそれを探すこと自体が技術公開できる人間を選抜する試験的なものなのでそれを踏まえた説明だと思ってください。納得いかないのならば自分たちで図書館をうろうろしながら探してくださいね」と言い残して写本に取り掛かる。カリカリと写本しながら何を何を言っているのか良く分からないところもあるがそれはあとからゆっくり読んで勉強しなおさないといけない場所。まずはきれいな字できちんと書き写していく。目が疲れたら桜を見ることで当目に切り替える。はらはらと舞い踊る桜にほっこりしながら目の前で涙を流したり思案気な顔をしている大人たちを見て変な環境だなと思いつつ写本を家族が車で続ける。すべて写本し終えると簡易技術特集を見終わった今代当主たちで技術の交流が始まったていた。本を返して教本を教本のカテゴリーに登録して能力内に仕舞っていると親が迎えに来て帰宅。
「何があったの?」と部屋に入ってきたときに聞かれたので
「教本映像特集を貸してくれって言われた」そう答えると納得しているがそれでいいのかと思う。