■第78話 港町建設編 嵐の夜の漂流者
港が完成に近づいた夜、激しい嵐が海を襲う。
そんな中、傷ついた小型船が漂着し、異国の小さきものたちが発見される。
リアンとその仲間たちとの出会いが、港町に新たな風をもたらす。
■嵐の夜、運命の出会い
夜の港は、怒れる海に飲まれようとしていた。
風がうなり、波が岸壁を叩き、船のロープがきしむ音が不気味に響く。
リトルさくやとリトルジュウベェは、暴風の中でも師匠からプレゼントされた白い船を守るために飛び回っていた。港はまだ建設途中で、防波堤も完成しておらず、爆音社長特製の小型照明だけが頼りだった。
「ロープ締め直して……!このままだと船が流される!」
さくやの声にジュウベェは無言で頷き、俊敏に動く。小さな身体ながらも、二人の連携で船はなんとか耐えていた。
だが次の瞬間——
「……あれは?」
ジュウベェが眉をひそめ、暗闇の中を指さす。
荒波の向こうから、黒く傷ついた小型船がゆっくりと近づいてきた。マストは折れ、船体は傾き、海に揉まれた跡が痛々しい。それでも船は、何かに引かれるかのように港へと流れ着く。
■謎の漂流者たち
ジュウベェは即座に跳躍し、船に飛び乗った。
湿った甲板の上には——
「……!」
倒れ伏した、小さな人影が10体。
濡れた衣服、かすれた呼吸、弱々しいうめき声。
「これは……小さき者……?しかし、見たことのない姿……」
驚きを隠せないジュウベェに、さくやも駆け寄り、爆音社長特製の小型ウインチで船を岸壁にしっかり固定した。
「小さきものやな……けど、なんや、この肌の色……」
日焼けした褐色の肌、くせ毛の黒髪、茶色の大きな瞳。見慣れた小さきものたちとは異なる異国の仲間たちだった。
「さくや殿!救護班を!」 「了解っ!」
現場監視カメラを通じて師匠も緊急事態を把握し、医療用品の準備を指示した。
■目覚めと出会い
翌朝、柔らかな朝日が仮設医療棟に差し込む。
爆音社長特製の小型ベッドの上で、ひとり、またひとりと目を覚ます小さき者たち。
「……ここ……どこ?」
かすれた声で茶色の目をした小さきものが尋ねる。
さくやは笑顔で答えた。 「ここは港の病室……大丈夫?」
すると一人が、つたない日本語でぽつりと告げた。 「ワタシ……リアン。みんな……うみ、こえた。にげた……」
「リアン……?」
さくやとジュウベェは顔を見合わせる。師匠も監視カメラ越しに興味深そうに見守っていた。
■語られる航海の記憶
数日かけて回復したリアンたちから、少しずつ事情が聞けるようになった。
でも、リアンはあまり深刻そうではない。
「大きい船、来た!バーン!みんな、わー!って逃げた!」
手をパタパタ振りながら説明するリアン。まるで冒険談を語るような明るさだ。
「怖くなかった?」とさくやが心配そうに聞くと——
「怖い?うーん……ちょっと。でも海、きれい!魚いっぱい!船、楽しかった!」
「楽しかった……って」
この能天気さに、みんな拍子抜けしてしまう。
「故郷のみんなは大丈夫なの?」
「うーん、わからない!でも、みんな泳ぐの上手だから大丈夫!きっと元気!」
手をひらひら振って答えるリアン。心配という概念があるのかどうか…。
■日常の中での言語の壁
回復したリアンたちが港町の生活に参加し始めると、言葉の問題が次々と発生した。
食事の時——
「これ、なに?」 「おかゆや」 「オカユ?美味しそう!パクパク!」
即座に食べ始めるリアン。味を確かめる前に完食してしまう。
作業の時——
「リアン、これ持って」 「これ?重い!でも大丈夫!リアン、力持ち!」
間違った物を持ち上げているが、本人は満足そう。
お風呂の時——
「熱い!」 「大丈夫?」 「大丈夫大丈夫!リアン、熱いの好き!あー、気持ちいい!」
すぐに慣れてしまい、鼻歌まで歌い始める。
■みんなで教えよう作戦
そんな様子を見ていたさくやが提案した。
「リアン、日本語もっと覚えたら、いろんなお話できるな!みんなで教えたろう!」
「日本語!覚える覚える!リアン、勉強好き!」
リアンの目がキラキラ輝く。学習意欲だけは人一倍だった。
「それは良い案でござる!」
ジュウベェも賛成し、師匠も監視カメラ越しに頷いた。
「言葉ができるようになれば、リアンたちの技術も詳しく教えてもらえるね」
■リアン流釣り講座
言葉がうまく通じない中でも、リアンが積極的に何かを教えようとした。
「釣り!リアンの故郷、釣りいっぱい!教える教える!」
港で釣りをすることになった。
「まず、竿!これで……ブンブン振る!」
いきなり竿を振り回すリアン。
「危ない危ない!」
「あ、そうそう!餌も大事!何でもいい!パンでもいい!」
適当に千切ったパンを針に刺す。
「そんな雑でええの?」
「大丈夫大丈夫!魚、お腹空いてるから何でも食べる!」
そして豪快に投げ込む。すると——
「あ!すぐ来た!大きい魚!」
本当に大きな魚がかかった。
「えええ!ほんまに釣れた!」
「リアン、釣り天才!でも……」
振り返ると、リアン自身の竿は海藻まみれ。
「あれ?リアンのは海藻……」
「海藻も美味しい!サラダにする!」
全然気にしていないリアン。
でも、リアンが教えた通りにやると、みんなも次々と魚が釣れた。
「すごいやん!リアンの方法、めっちゃ効果ある!」
「えへへ!リアンの故郷、みんなこんな感じ!簡単簡単!」
■心の灯台
「ここ、楽しい!みんな優しい!リアン、もっといっぱい日本語覚えて、いっぱいお話したい!」
リアンの屈託のない笑顔に、さくやは目を細めた。
「こっちこそ、リアンからいっぱい教えてもらいたいわ」
港には今、防波堤灯台よりも明るい心の灯りが、確かに灯っていた。
リアンの底抜けに明るい性格が、港町に新しい活力をもたらしていた。言葉の壁なんて、笑顔があれば何とでもなる。
嵐の夜がもたらした出会いは、小さきものたちの世界を大きく広げる運命の始まりだった。
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