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■第39話 西の岩山編 天空のサバンナ

小さな冒険者たちが辿り着いた新天地

金色の草原と猫たちと共に過ごす夜

星空の下で育まれる、次なる夢への想い


■山頂への物資補給

 数日後の午後、山頂では150人のリトルさくやたちが、黄金の草原の上で昼寝をしていた。長い工事の疲れと、頂上到達の達成感で、みんな気持ちよくうとうとしている。

 暖かな陽射しと心地よい風。まさに極楽のような時間だった。

 そのとき——

 ゆっくりと音を立てながら、ケーブルに沿ってゴンドラが上昇してくる。鋼材の滑車が淡くきしみ、朝の光を受けてわずかにきらめいた。

 しかし、誰も気づかない。みんな熟睡していた。

 ゴンドラが到着し、中から物資がぎっしりと降ろされる。食料、テント、工具、そして——

「……にゃーん」

 その中に温かな毛玉が3つ、ふわりと揺れていた。

 みけが一声鳴くと、くろとしろも続いて鳴き始める。

「……ん……」 「……なんか聞こえる……」

 それでも起きないリトルさくやたち。

 みけが近づいて、一人のリトルさくやの頭にごんっと頭突きをした。

「痛っ!」 「……あ、猫が来てる………」

「あー、起こされた」 「頭突きで起床って」 「みけちゃん、容赦ないな」

 爆音社長の声が無線から聞こえてくる。

「おーい、荷物降ろし完了や。監督官も無事配達したで」

「監督官って…」 「猫のことですか?」 「そや。『あの子らサボってたら頭突きしたって』言うてたで」

 3匹の猫は、まるで「仕事しなさい」とでも言いたげな顔で物資から出てくる。

「この子ら、私らをサボり魔扱いしてる」 「でも、実際昼寝してたからな…」 「反論できんわ」


■仮設キャンプの設営

 猫に起こされたリトルさくやたちは、慌てて物資の整理にかかった。

 猫たちはそれぞれ監督業務を開始する。みけは設営状況をチェックし、くろは周辺警備、しろは最適な休憩場所を確保している。

「完全に査察してるやん」 「みけちゃん、テント張り具合確認してる」 「くろちゃんは警備担当か」 「しろちゃんは既に管理職の貫禄や」

 さらに数日後。手すりを設置しながら階段を登ってくる後続部隊の姿が見えた。

「おーい!」 「やったー!みんな無事や!」 「って、なんで猫おるん?」 「しかも偉そうにしてるし!」

 実際、3匹は高いところから後続部隊の到着を見下ろしていた。

「査察官の到着確認、完了」 「監督業務、順調に進行中」 「私ら、部下扱いされてるで」


■150人が集結

 総勢150人が揃った山頂で、全員が同時に目にした光景に言葉を失った。

 どこまでも続く黄金の草原。遠方のジャングル。そして、その壮大さ。

 しばらくの沈黙の後——

「……これ、完全に想定外やん」 「誰もこんなん予想してへんかったやろ」 「測量班、仕事増えるで」 「まあ、悪い景色やないけどな」

 猫たちも景色を眺めているが、その表情は「まあ、こんなもんか」といった余裕の態度だった。

「猫の方が動じてないやん」 「肝が座ってるな」 「私らの方が慌ててる」


■夜のキャンプファイヤー

 やがて日は暮れ、キャンプの中央に小さな焚き火を作ることになった。

 一人のリトルさくやが薪に火をつけると——

 ボゴォォォォッ!

 空に向かって巨大な火柱が立ち上がった。まるで漫画のような真っ赤な炎の塔が、夜空を照らしている。

「うわあああああ!」 「でかっ!!」 「なんやこれ、ロケットか!」

 猫たちも炎の大きさに完全にパニック。

「シャー!!」 「シャー!シャー!」 「フーッ!!」

 みけ、くろ、しろが一斉に毛を逆立てて威嚇している。特にくろは完全に猫パンチの構えを取っていた。

「猫が火にケンカ売ってる!」 「くろちゃん、火と戦うつもりか!」 「シャーシャー言いながら後ずさりしてるやん!」

 しばらくして炎が少し落ち着くと、恐る恐る近づいていく。猫たちもまだ警戒しながらそろそろと戻ってくる。

「やっと普通のサイズになった」 「猫もやっと落ち着いた」 「でも、まだ警戒してるな」

 そんな騒動の後、みんなでおにぎりを取り出して食事を始めた。

「このおにぎり、なんでこんなにうまいんやろ」 「火事騒動でお腹すいたからか」 「猫のシャーシャーも良いスパイスやったな」


■天空の宝石箱

 やがて夜が深まると、空が完全に変わった。

 それは、この世のものとは思えない光景だった。

 濃紺のベルベットのような夜空に、無数の星が散りばめられている。まるで神々が宝石をばら撒いたかのような、圧倒的な美しさ。一等星が大きくきらめき、天の川が白い帯となって空を横切っている。

 街の明かりが一切ない山頂では、肉眼でも銀河系の渦巻きがうっすらと見える。星座たちが、古代の神話を物語るように配置され、北斗七星がひしゃくの形をくっきりと描いていた。

 そして何より圧倒的だったのは、星の数だった。数え切れないほどの星々が、まるで生きているように瞬いている。大きな星、小さな星、青白い星、オレンジ色の星。それぞれが異なる光を放ち、夜空を彩っていた。

 時おり、流れ星が静寂を破って空を横切る。一筋、また一筋と光の軌跡を描いて消えていく様は、まるで天からのメッセージのようだった。

 月はまだ昇っておらず、星々だけがこの世界を支配している。その光は優しく、リトルさくやたちの小さな体を包み込んでいた。

「……すごい……」 「こんな星空、見たことない……」 「宝石箱みたい……」

 誰もが息を呑んでいた。日常では決して出会うことのできない、宇宙の神秘がそこにあった。

 猫たちも空を見上げている。先ほどの火柱への警戒を忘れたかのように、じっと星空を眺めていた。その瞳にも、星の光が映り込んでいる。

「猫も見とれてるな」 「みけちゃん、哲学者みたいな顔してる」 「宇宙を考えてるんかな」

 風が草原を渡り、草がささやくような音を立てる。その音さえもが、この星空にふさわしい静謐な調べだった。

 空気は澄み切っていて、星の光が屈折することなく真っ直ぐに降り注ぐ。まるで、宇宙と直接繋がっているような感覚だった。

「こんなに星があるなんて知らんかった」 「私らって、ちっちゃいなあ」 「でも、それがええ感じや」

 深い静寂の中で、彼女たちは宇宙の広大さと、自分たちの存在の不思議を感じていた。小さな体でここまで登ってきて、この星空に出会えたことの奇跡を。


■師匠への報告

 下から支援する師匠は、無線の向こうに静かにいた。

「師匠、報告します」 「頂上に150人全員到着、物資も十分です」 「あと…指導官が3匹来てくれて、焚き火が火柱になって、猫がシャーシャー言いました」

 長い沈黙。

「……なんだって?」

「えーと、順番に説明すると…」 「猫が密航してきて、焚き火が火柱になって、猫がパニックになりました」 「でも今は、みんなで星空を見てます」 「すっごくきれいです」

 また沈黙の後、師匠の声が優しく響いた。

「そうか。それは良かった」 「星空も楽しんでいるなら」 「明日からも、気をつけなさい」

 風の音はやまなかったが、火は適度な大きさで燃え続けた。サバンナの夜が、小さなキャンプを静かに包み込んでいた。

 150人のリトルさくやたちと、火柱にびっくりした3匹の猫たちの夜。満天の星空の下で、新たな冒険への想いを静かに育んでいた。

「この星空、忘れられないな」 「一生の思い出や」 「ここまで来て良かった」

 星空が見守る中、小さなキャンプの火は朝まで静かに燃え続けた。そして、宇宙の神秘に包まれながら、小さきものたちは静かな眠りについた。天の川が、彼女たちの夢路を優しく照らしながら。



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