表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
20/68

第18話 東の村探索編 小さきサムライと夜の大脱走 村に、希望の光が灯る

牢の中で、さくやたちは決意した。

言葉ではなく、行動で示す。

武士が求める「覚悟」を――小さな手で、証明する。

 

■夜の大脱走

夜の森は深い静寂に包まれていた。

牢に閉じ込められたリトルさくやたち──だが、奥の手があった。

リトルさくやの中には、気配を消して動ける者たちがいる。

忍者部隊と呼ばれる、ごく一部の存在だ。

「……鍵、きたよっ!」

暗闇の中、しゅるんと忍び寄る影。

「しずかにね……」

「は〜い……」

鍵を開ける音。

かちゃり。

静かに、静かに。

見張りのジュウベェたちは、気づかない。

全員が音もなく牢から脱出。

「……すごい」

「忍者部隊、ほんまにすごい」

「でも、逃げるんやないで」

リーダーさくやが、小さく言った。

「これから、見せるんや」

「わたしたちの、覚悟を」


■痛々しい村の現実

夜明け前。

さくやたちは、村を見て回った。

音を立てず。

気配を消して。

そして、見た。

村の端に広がる畑──作物たちがしおれていた。

小川はある。

水路も流れている。

なのに、枯れている。

「……これ、土が悪いんや」

一人のさくやが、土を触った。

「栄養が、ない」

「水はあるのに……」

近くの長屋。

屋根は抜け落ち、壁には大雨の跡。

柱が傾き、床が腐っている。

「……住めるんかな、これ」

「住んでるんや。他に、場所ないから」

村はどこか痛々しく見えた。

必死に生きている。

でも、限界が近い。

そんな空気があった。

森の奥に身を潜めていると──

「にゃあ」

ふわりと白い影。

五匹の白いヤマネコたちが、忍ぶように戻ってきた。

「白いヤマネコたち……!」

「無事だったんだ……!」

ヤマネコたちは、さくやたちを見て、鼻を鳴らした。

敵意はない。

でも、まだ警戒している。

それでも、そばにいてくれる。

それだけで、心強かった。


■真の心を見せる時

朝。

牢屋で大騒ぎの声が響いていた。

「開いておる!牢が!」

「何者の仕業じゃ!?」

「鍵が外されておるぞ!」

ジュウベェたちが、慌てて村中を探し回る。

「見つけよ!逃げた者たちを!」

「拙者、警備を怠ったにござる!」

一人のジュウベェが刀を抜く。

「これは武士の恥!切腹するにござる!」

「今はそれどころではないぞ!」

別のジュウベェが止める。

「だが……!」

「後で切腹せよ!」

「……承知したにござる!」

そのとき──

「逃げてません。むしろ、全員ここにいます!」

村の広場。

整列したリトルさくや100名が、びしっと手をあげた。

ジュウベェたちが、一斉に駆けつける。

剣を抜く。

構える。

だが、さくやたちは動かない。

ただ、真っ直ぐ立っている。

「わたしたちは探索中の小さきもの、リトルさくやです」

リーダーさくやが、前に出た。

「この村を見て、見過ごせませんでした」

「畑が、枯れています」

「家が、壊れています」

「でも、あなたたちは必死に生きている」

「だから……」

リーダーさくやは、深く頭を下げた。

「手伝わせてください」

ジュウベェたちが、動きを止めた。

剣を構えたまま、固まっている。

「……なぜじゃ」

一人のジュウベェが、震える声で言った。

「拙者たちは、お主らを牢に入れたにござる」

「敵として、扱ったにござる」

「なのに……なぜ、助けると申すか」

リーダーさくやは、顔を上げた。

「わたしたちの師匠が、言ってました」

「困っている人を見たら、手を差し伸べなさい、って」

「それが、わたしたちのやり方です」

ジュウベェの目が、揺れた。

剣を持つ手が、震えている。

やがて、一人のジュウベェが剣を収めた。

次々と、剣が収められていく。

「……ついて参れ」

ジュウベェが、歩き出した。

「拙者が、すべてを話すにござる」


■森の守り人の苦悩

案内されたのは、村の奥の城のような建物。

石垣は崩れ、門はひしゃげ、屋根瓦もはがれていた。

「……拙者たちは、ここに暮らしておるにござる」

ジュウベェが、静かに言った。

「代々、森の守り人として」

「この森を守り、この村を守り、生きてきたにござる」

「だが、いかんせん近年は異変が多くてな……」

ジュウベェの声が、少し震えた。

「作物は枯れ、家は壊れ、獣どもも攻めてくる始末……」

「拙者たち、何もできぬにござる」

「畑の育て方も、家の直し方も、分からぬにござる」

「ただ、剣を振るうことしか……」

ジュウベェは、膝をついた。

「これは拙者の不徳にござる!」

「村を守れなかったは、武士の恥にござる!」

「切腹するにござる!」

刀を抜く。

「待って!」

さくやたちが、飛びつく。

「切腹したら、誰が村を守るの!?」

「だが……!拙者、村を守れなかったにござる!」

「だから、わたしたちが手伝う!」

「手伝う、だと……?」

ジュウベェの目が、見開いた。

「なぜじゃ。拙者は、お主らを……」

「もういいって!」

リーダーさくやが、ジュウベェの肩を叩いた。

「過去より、未来や」

「わたしたち、村を良くしたい」

「だから、一緒にやろ」

ジュウベェは、しばらく黙っていた。

やがて、刀を収めた。

「……かたじけないにござる」

深く、深く頭を下げた。

「この恩、一生忘れぬにござる」

「拙者、生涯お主らに仕えるにござる!」

「仕えるはいらんから、切腹だけやめてな」

「……次は、必ず切腹するにござる」

「次もやめて!」


■灯りと笑顔の宴

夜──

広場に灯りがともり、大宴会が始まった。

保存食と森の果実、リトルさくやたちの手作り料理がずらり。

「うまいにござる……!」

「この味、なんと心温まるにござるか……!」

「何を揚げておるのじゃ!うまいにござる!」

「レシピを教えてくださらぬか……?」

ジュウベェたちは、初めて食べる味に目を輝かせた。

「これは……何と申すか」

「天ぷらです」

「てん、ぷら……」

「うまいにござる……!」

白いヤマネコたちもちゃっかり料理をねだっている。

さくやたちが作った魚料理を、ヤマネコたちは喜んで食べた。

「この白いヤマネコたち、拙者たちの仲間にござるな!」

一人のジュウベェが言った。

「森の守り神にござる!」

「拙者たちを、導いてくださったにござる!」

ヤマネコたちは、ごろごろと喉を鳴らした。

認められた。

そんな顔をしていた。

「拙者、感動したにござる……!」

一人のジュウベェが立ち上がった。

「感動して、切腹したいにござる!」

「それは違う!!」

さくやたちが、一斉に止める。

笑い声が、広場に響いた。

ジュウベェたちも、初めて笑った。

炎が揺れる。

料理の湯気が立ち上る。

白いヤマネコたちが、さくやたちの間を歩き回る。

ジュウベェたちの笑い声が、夜空に響く。

長い、長い夜だった。

でも、あたたかい夜だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ