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■第105話 市街地再開発編 一次選定と湖畔の拠点へ

勝利の喜びも束の間なり、真の戦い今始まらん

陰謀うごめく街の影に、小さき者の光を灯す

湖畔に集いし仲間たち、希望の旗を高く掲げ


■勝利の後に訪れる静寂

一次採択の通知から24時間が経過した。オフィスにはまだ勝利の余韻が漂っているが、師匠の表情には新たな緊張が宿っていた。

「これで終わりではありませんね」

OLさんが資料を整理しながら呟く。師匠は窓の外の街並みを見つめて静かに頷いた。

「ええ。本当の戦いは、これから始まります」

リトルさくやは小さなマウスでPCを操作しながら言った。

「でも一次通ったんやから、もう安心やんな?」

「そう簡単にはいかないでしょうね」

師匠の予感は的中していた。


■委員会からの奇妙な依頼

朝10時——市庁舎の小会議室。

昨日の大会議室とは違い、今日は実務的な打ち合わせのための小さな部屋だった。円形テーブルを囲むのは師匠、OLさん、リトルさくや2人、そして市の担当者数名。

「師匠、実は委員会から追加の検討依頼が来ておりまして…」

市の担当者が慎重に封筒を取り出した。正式な委員会の印が押された書類だった。

「球場の仕様について、屋外型とドーム型の両案で詳細検討をお願いしたいとのことです」

師匠が依頼書を受け取って目を通す。その瞬間、表情がわずかに変わった。

「これは…」

OLさんも書類を覗き込む。

「鉄道新線の建設も同時検討って書いてありますね。それに国道の拡張工事も…」

「ちょっと待ってや」

リトルさくやが書類を指差した。

「この鉄道の線路、ウチらの歩行者回廊と完全にぶつかってるやん!」

「それに建設費も…」

OLさんが電卓を叩きながら概算する。

「詳細は不明ですが、私たちが提案した120億円の3倍から4倍はかかりそうですね」

「これは明らかにおかしいで」

リトルさくやが声を上げた。

「ドームも鉄道も国道も全部一緒に作るって、そんなん物理的に無理やろ?場所が足らへんわ」

市の担当者も困惑した表情を見せる。

「実は私どもも、この依頼内容には疑問を感じているのですが…委員会からの正式な要請でして」

師匠は静かに書類を机に置いた。

「分かりました。検討はいたしますが、実現可能性については正直にお答えすることになります」

「はい…よろしくお願いします」

担当者の表情には、申し訳なさそうな色が浮かんでいた。


■真意を探る

会議が終わった後、廊下で市の担当者の一人が師匠に近づいてきた。

「師匠、実は…」

周囲を見回してから小声で続ける。

「この依頼書、普通の手続きで来たものじゃないんです」

「どういうことですか?」

「委員会の一部の方々が、急に持ち込んできたもので…他の委員は詳細を知らされていないようです」

師匠とOLさんが視線を交わす。

「つまり、委員会全体の意思ではない、と」

「はっきりとは言えませんが…そういうことかもしれません」


■不審な匿名メール

正午——師匠のオフィス。

「師匠、またメール来てるで」

リトルさくやがPCの画面を指差す。受信ボックスには匿名のメールがいくつも並んでいた。

「『計画は地域住民の理解を得られていない』…『環境破壊につながる恐れがある』…なんか文章が似すぎてるわ」

OLさんが内容を確認する。

「差出人も送信時刻もバラバラですが、文体が統一されすぎてますね。ちょっと不自然です」

「普通の住民の人やったら、もっと個人的な文章になるはずやのに」

リトルさくやが首をかしげる。

「みんな同じテンプレート使って書いてるみたいやわ」

師匠は黙って画面を見つめていた。委員会の奇妙な依頼書といい、組織的な匿名メールといい、何かが動き始めている——そんな確信が強くなっていた。


■湖南西の拠点へ

午後——裏山を抜けて湖南西の拠点へ。

「詳細な検討は、湖の拠点で行いましょう」

師匠が提案した。オフィスから裏山を抜けた湖南西の拠点なら、人間社会の監視も届かない。

「あそこやったら落ち着いて会議できるわ」

リトルさくやが同意する。

拠点に到着すると、既に数名のSPが待機していた。師匠とOLさんは会議室に資料を広げ、本格的な検討に入った。

「今日の委員会依頼書について整理しましょう」

師匠が口火を切った。ホワイトボードには、これまでの経緯が時系列で整理されている。

「あの依頼書、明らかに変やったで」

リトルさくやが手を上げる。

「ドームも鉄道も国道も、全部同じ場所に作るなんて物理的に無理やもん」

OLさんが資料を見直しながら分析する。

「概算でも私たちの提案の3〜4倍の予算が必要になります。恐らく、私たちに『実現不可能です』と回答させたいんでしょうね」

「なるほど」

師匠が頷く。

「そうすれば、『師匠たちの提案は現実的でない』という口実ができる」

「そういうことか!」

リトルさくやが手を叩いた。

「めっちゃ回りくどいやり方やけど、そういう作戦なんやな」

「でも、こちらも対策を立てられます」

師匠が静かに微笑む。

「無理な依頼だからこそ、逆に相手の本音が見えてくる」

湖面に夜の静寂が降りる中、チームの結束は更に強まっていった。どんな策略が仕掛けられても、真摯に向き合っていけば必ず道は開ける——そんな確信が、一人一人の心に宿っていた。



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