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ディヴァイン・アーカイブ~罪の影を斬り、黎明を呼ぶ者~  作者: するめ
第2章 魔術戦争編

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第5話 人間の皮を脱ぎ捨てて

「……休憩は終わりよ。獅狼(しろう)、のどか。お前たちは防音ガラスの向こうへ下がりなさい。この駄犬の基礎訓練がまだ済んでいないわ」


蛍の冷ややかな一瞥で、やかましかった二人はそそくさと訓練室の端、分厚い防音壁の向こう側へと退避していった。


再び静寂が落ちた室内で、蛍は自身のデバイス――白銀の細剣をゆっくりと抜き放った。


「黎。あなたは、自分の皮膚の下を流れるその銀色が、本当は何なのか知っているの?」

「……スラムの違法な魔術実験の失敗作か何かだろ」

「違うわ」


蛍は細剣の切っ先を俺の喉元に突きつけ、事務的な報告書を読むように淡々と告げた。


「お前はこの世界の中枢に眠る(アダムカドモン)の死骸……神の骨髄から錬成された、絶滅したはずの神の眷属。ネフェリア族」


「……ネフェリア、族……神の、眷属?」


「ネフェリア族が持っている能力は主に4つ。自身の体液を自在に変形、変質させる生体武装、肉体を流体へと変える液状化、すべての系統の魔術をデバイスなしで放てる全系統魔術適合、重症程度の傷なら数秒で治癒する超再生」


淡々と読み上げられる、俺自身の異常性。


「お前は自分が何者かを知らないから、その力をただ硬い銀の塊としてしか出力できていない。己のルーツを理解しなさい。お前はただの化物じゃない。事象そのものを自在に書き換えることができる」


蛍の言葉が、自分の体に染み込んでいくような気がした。

俺は、得体の知れない化け物じゃなかった。神の骨髄から作られた、生物兵器。


(……だったら、なんだって言うんだ)


俺が何者だろうと関係ない。俺に、親父が温かいスープと朝霞 黎という名前をくれた。

――なら、俺はこの神の力を、生物兵器として親父の日常を守るために使い潰してやる。


「……教えてくれて感謝するよ、マスター」


俺の身体を流れる銀色が、これまでにないほど澄み切った熱を持ち始めた。


「俺のルーツは理解した。……この力、全部アンタのために使いこなしてやる」


「口では何とでも言えるわ。証明してみせなさい」


蛍が踏み込む。音を置き去りにする神速の突きが、俺の眉間を穿とうと迫る。

だが、今の俺はもう迷わない。


集中する……ただ闇雲に硬くするのではない。


骨格系の物質を模倣、

分子の密度を極限まで圧縮、

物質内に血管系を張り巡らせるように骨格の内部に組み込み、

その銀色が形を(いろど)っていく。


柄の先端から噴出した銀の血が、瞬きする間もなく刃へと変質する。

刃渡り八十センチの白銀の長剣。


――ガギィィィンッッ!!!


直後、鼓膜を劈くような金属音と、激しい火花が散った。

俺の創り出した刃が、蛍の神速の突きを正面から受け止めていた。


「……事象の固定化、魔力伝導率。まぁ……合格点ね」


俺の木が緩むと、白銀の刃は瞬時にドロリとした液体に戻り、俺の皮膚の下へと吸い込まれて消えた。

防音ガラスの向こう側では、獅狼が目を丸くしてガラスに張り付き、のどかがニコニコと拍手をしているのが見えた。あちら側からならただデバイスの刃をしまったようにしか見えないだろう。


「これから、私と本気の模擬戦をするわ」


「……え?死にますよ……俺」


さっき攻撃を止めれたのは、蛍が剣ができる線上に攻撃をしてくれたのと大分攻撃を緩めてくれたのが大きい。この前、戦場で見た彼女はさっきの比じゃなかった。


そんなことは知らないとばかりに、ギロッと隊長が俺を睨む。早く準備しろという無言の圧が、肌を刺すように伝わってきた。


「わかりました…マスター」


俺と蛍が3メートルほど離れると、隊長から木剣を投げられる。


「ルールとしてデバイスはこの身体強化の魔術刻印が刻まれている木剣以外は使用禁止、それ以外は何でもあり…死ぬ気で私に一撃見舞ってみせなさい」


「……では行きます!!」


俺はまっすぐ向かい木剣を振り下ろす。身体強化を使っているため速度は60キロ近く出ているはずだが、蛍は難なく剣をからめとるように弾き、俺の腹部に容赦なく木剣を叩き込んできた。


「ぐっっ!!」


俺の体は軽く10メートルは飛んで、分厚い壁へと激突した。


「何?今の腑抜けた攻撃は……直線的な攻撃なんて見切れるに決まってるでしょう?」


「ゴホッゴホッ……だからって容赦なく叩き込みますか?」


「実戦で、怪物が手加減をしてくれるとでも?」


蛍はゆっくりと木剣を下げ、試すような目で俺を見下ろしてくる。


「何でもありと言ったはずよ。……この訓練室に研究開発部の監視カメラはないわ。そして、ガラスの向こうにいるあの二人に、お前のその中身がバレたところで私は一向に構わない」


「……初めからそのつもりかよ……」


「黎。あいつらはもう、お前の背中を預かる仲間よ」


氷のように冷たい蛍の声に、ほんの僅かだけ、決して折れない強靭な熱が混じった気がした。


「味方にすら怯え、人間の皮を被ったまま戦って無駄に死ぬような甘えは、この部隊の隊長として私が絶対に許さない。……完全に形を崩してでも、生き残るためのすべてを今ここで解き放ちなさい」


俺はニヤリと口角を上げ、立ち上がる。

カメラはない。獅狼たちにバレてもいい。隊長がそれを許し、望むのなら。

だったら、俺を人間へと繋ぎ止めているこの皮膚なんて、今はどうなったっていい。


「……行きます、マスター!」

「来なさい……駄犬」

戦闘シーンって書くのムズイっすね

めっちゃみんな見てくれるのうれしいです。改善点とか感想書いてくれるとモチベが上がります。

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