第12話 ヴィヴィ性能評価
なんでヴィヴィの性能書き忘れてるんだ……
朝、防衛局の居住区にある自室で、俺は胸元の異様な重みと息苦しさで目を覚ました。重い瞼を開けると、黒い毛玉が乗っている。いや、毛玉じゃない。
「……何してんだヴィヴィ」
「んぅ……? あ、黎、おはよ……すー……」
「おはよ、じゃねぇよ。なんで、俺のベッドで寝てんだよ。自分の寝床があるだろ」
俺が首根っこを掴んで引き剥がそうとすると、黒猫はポンッと音を立ててパジャマ姿の少女へと変わり、そのまま俺の布団にくるまった。
「えー、ケチ! 夜中、なんか寒かったんだよ。黎の魔力の近くにいるとポカポカするし」
「湯たんぽ代わりにするな。ヴィヴィ、寝てる間も無意識に俺の魔力を啜ってるだろ。ただでさえ燃費最悪なんだから、四六時中パス繋いでたら俺の身がもたないっての」
「むぅ……だって私、すぐお腹空いちゃうんだよ。黎の魔力すっごく美味しいし」
「はぁ……まぁいい。ほら、着替えるから向こう向いてろ」
「はーい。あ、今日の朝ごはん何? 防衛局の食堂の合成パン、パサパサしてて美味しくないから嫌だなぁ」
「そんなこと言われてもずっと吸われたら俺が倒れる。魔力節約のために普通に飯を食え」
「えー……」
不満げにうめくヴィヴィは、再び小さな黒猫の姿になると、ピョンと俺の肩へ飛び乗り、だらけた姿勢をとった。俺はため息をつきながら、支給されたばかりの黒い防衛局の制服に袖を通した。
ーーー
食堂は、朝から出撃を控えた局員たちでごった返していた。
俺たちがいつものテーブルに着くと、すでに獅狼と、のどかさんが向かい合って座っていた。
「おはよう黎くん。ヴィヴィちゃんも、今日も可愛いね〜」
「おはよー」
のどかさんがニコニコと微笑みながら、猫なで声でヴィヴィに手を振る。
その隣で、獅狼はトレイに山のように積まれた目玉焼きと分厚い肉を爆食いしていた。
「獅狼、お前よく朝からそんな重いもん食えるな……」
「おう黎! 昨日かなりダメージを負ったからな、腹が減ってしょうがねぇ……ゴフッ、ケホッ!!」
「……朝から喋りながら食うから詰まらせるんだよ。ほら、水」
むせ返る獅狼をのどかさんが笑いながら介抱している、そんないつもの騒がしい朝。背後から圧倒的な威圧感を持った声が響いた、周囲のテーブルで談笑していた他の局員たちも、一斉に押し黙って視線を逸らした。
「――おはよう」
「ギャッ!?」
振り返ると、純白のコートを羽織った隊長・蛍が立っていた。
俺の襟元から顔を出していたヴィヴィがと短い悲鳴を上げ、俺の服の奥深くへと超高速で潜り込んで縮こまった。
「た、隊長! おはようございます!」
獅狼が慌てて立ち上がり、敬礼する。口元にはソースがついている。
「座りなさい、食事中は立たないものよ……それより今日の予定を報告するわ、今日は午前中のみ訓練のち、第3ブリーフィングルームで話があるわ。訓練ではそこにいる猫の性能を確かめる……以上、食事を続けなさい」
それだけ言うと、蛍は踵を返し、冷たい足音を響かせて去っていった。
彼女の姿が食堂から完全に見えなくなって、ようやく周囲の温度が元に戻り始めた。
「……あ、あの人、絶対この世界のラスボスだよ……。黎、私もう一生服の中から出ない……」
「あはは、隊長、相変わらず寝起き悪いんだね~……」
のどかさんが苦笑いしながら、味噌汁を啜る。
「あぁだから、あんな不機嫌そうだったんですね」
(あのマスターにそんな弱点があったのか……)
「ていうかあの人と戦いたくないんだけど……」
「そういわれても、ヴィヴィが助けてくれなくちゃ俺が死んじまう」
「わかってる……ちゃんと戦う」
ヴィヴィは俺の服からひょっこりと顔を出し、にゃ〜んと鳴きながら俺のトレイのパンをかじった。
食事が終わり、全員がそろって灰原小隊の専用訓練室へと集まった。
すでに広場の中央には、蛍が木剣を手に素振りをしていた。風を切る音がざっと20メートルは離れているこちらにまで聞こえてくる。
「あの人の強さ、人間がたどり着いていい領域なの?人間じゃない私にもあれはおかしいって分かるよ……」
「ッシ!聞こえるだろ」
「聞こえてるわよ、時間通りね……さっそく始めるわよ」
蛍の視線が、俺と、俺の肩で丸まっている黒猫に向けられる。一瞬、肩の猫がビクッとなった気がしたが気にしない。
「行くぞ……ヴィヴィ」
「あぁもう!わかった!やってやる!!」
やけくそのような返事と共にヴィヴィがドロリと融解する。俺はダミーのデバイスの柄を起点に刀を生成し、それに合わせた鞘を創り出す。さらに両足の靴を覆うように靴型のデバイスを生成する。
感情を持つ生命体でありながら、デバイスである彼女の真骨頂は、『流体変形』と『魔術回路の瞬時構築』にある。
俺の生成する銀の流体をベースに、彼女自身が自在に形態を変化させ、大剣、銃、槍、などのあらゆる姿に変えることができる。
さらに恐ろしいのは、彼女を通すことで、通常ならデバイスに直接の刻印が必要な複雑な魔術式を、実戦の中で、しかもノータイムで付与・起動できることだ。圧倒的な汎用性と出力。その代償として、彼女は俺の魔力を常にごっそりと喰い尽くすのである。
液状化したヴィヴィは、まるで意思を持つ黒い水銀のように銀の刀身へと這い上がり、シアン色の怪しい輝きを放つ紋様を描きながら、刃と鞘を覆うようにピタリと張り付いて同化した。
『どんな魔術がいい?』
「足には【ベクトル操作】と【身体強化】、刀には【流体圧変換】に【振動エネルギー変換】、それと……」
『それと?』
「こんなことってできるか?」
俺はヴィヴィにある作戦を伝えた。
ーーー
「……作戦会議は終わり?」
「えぇ……終わりました」
「なら……来なさい…」
「行きます!!」
これを聞いた見た人はみんな思うと思います。
こいつやばくね?
私もそう思いながら書いてます。




