第47話「目覚め」
目が覚めるとハロルドタウンの実家のベッドだった。
「あっ!おかーーーさーーーん!お兄ちゃんが起きたよー!!!」
「えっ!ほんと!?」
家の外で作業をしていたのだろうか、母さんの声が遠くから聞こえた。
「ラクスっ!あぁ良かった。どこか痛いところはない?酷い怪我してたのよ、あなた。目はちゃんと見える?目からも血が出てたように見えたわ」
(言われてみればかなり無理な身体強化をしたのかもしれない。目を酷使し過ぎた。目は見えるが頭痛が酷い)
「あだだっ」
そう考えてたら頭痛が襲ってきた。
「キャアッ!ラクス!大丈夫なの?どこが痛いの?頭が痛いの?」
(体が重い。どれくらい寝ていたんだろう?魔力が完全に回復できていない気がする。普通は一晩で回復するんだけどなぁ)
「お腹空いていない?すぐにスープを作るわ。何日も寝てたんだからお腹空いているでしょう?」
「え?何日も?」
「ええ、そうよ。3日……間、うん、丸3日間寝てたわ。すぐ作って持ってくるわね」
(3日間も寝てたのか……魔力が回復していないのは食事していないから?……頭痛い……)
しばらく横になっていると、母さんがスープを作ってきてくれた。野菜スープにミルクが入っている。
(これシチューだ……やった!嬉しい……)
「お母さんね、前ラクスが野菜スープにミルク入れたら美味しいかもって言ってたの思い出したの。それで1回作ってみたらホントに美味しくて!リリーもこのミルクスープが大好きなのよ。ラクスが帰ってきたらきっと作ろうって思ってたの!」
ラクスが一口スープを飲む。
「美味しい……とても美味しいよ、母さん……」
なぜか分からなかったが涙がボロボロとこぼれてくる。
「でしょう?……えっ?えっ?どうしたの?口の中怪我してたの?どこか痛かった?」
いきなり泣き始めたラクスにルーネは驚いたが、皿を横に置いて優しく頭を抱きかかえてくれた。
「……よしよし、頑張ったね」
「母さん、僕がもう少し早く村につけば、助かった人がいたんだ……もう少し早く……目の前で魔物に襲われて……助けてあげられなかった」
「……いいえ、あなたは助けたのよ。あなたの出来る範囲で頑張ったの。その魔物がもしハロルドタウンに来ていたら町に被害が出ていたかもしれない。ハロルドタウンの人たちを助けたの。誰にでも自分にできる範囲でしか行動できないわ。あなたは精一杯頑張った。」
「……うん、でももっと出来たかもしれない。分からないんだ。もっと出来たはずなんだ!」
「それはねラクス、理想の自分なのよ。思った通りにならなかった時に、どうすれば良いか、どう準備をすれば理想の自分にたどり着けるか、考えるの。結果はどうやっても変わらないわ。でも理想とした自分にたどり着くための行動は変えられる」
(そう……そうだ。結果は変わらない。これからどう行動するかが大事だ。もう二度と同じことは繰り返さない。二度と)
「ごめん、母さん。ありがとう」
「いえいえ。スープ食べれる?」
「うん、急にお腹空いてきたよ」
「ふふ、でもいっぱい食べすぎたらお腹がびっくりするから、今日はそれくらいにしておきなさい」
「はい」
そう言うと母さんは家の外へ戻っていった。外から声が漏れ聞こえる。
「おとーさーん!誰か来たよー!あ、なんだ町長さんだ」
「……なんだとは何じゃ。ラクスは目覚めたか?」
「あぁ、さっき目が覚めたみたいだ」
「そうか。領から派遣された部隊が先ほど到着されての。状況は伝えておるが、ラクスがいないかと聞かれての」
「ラクスはさっき目覚めたばっかりだ。3日間も寝ててまだ完全に回復しきれていない。今日は無理だ」
「ん。大丈夫じゃ。いることは言ったが、壮絶な戦いをして疲れ果てて寝ていると伝えておる。目覚めたら教えてほしいそうじゃ。兵士様たちもあの村の状況を確認しに行くそうなので、1日2日はラクスが家から出んようにの」
「分かった。ありがとう町長」
「なんのなんの」
「そうじゃリオン、今回の魔物掃討について兵士様に報告せねばならんが、リリーの件はどうする?」
「リリーは……まだ止めてくれ」
「そうか。では討伐隊のみで掃討した、ということで話を合わせる。じゃあの」
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あの日の夜、町の東南より「ドドドドドドドドド」という音で町の東門兵は目覚めた。ついうとうとしていたが(何事か?)と目を凝らす。土煙のようだった。(なんだ?何が起こった?)と見ると魔物が群れを成してこちらへ突っ込んできている。
「まずい!」
カンカンカンカン!カンカンカンカン!カンカンカンカン!
非常時の鐘を鳴らしていると待機所から門兵長が駆け上がってきた。すると南門からも鐘が鳴り始める。あちらも魔物の群れに気づいたようだ。
今は深夜だった。門兵長は焦った。
「まずい!今はまだ皆寝ている時間だ。クソっ!なんでこんな夜遅くに……急いで討伐部隊へ知らせろ!たたき起こせ!!!」
その音で町の北側に住むリリーは目が覚めた。
(どうしたんだろう?こんな音聞いたことない)
お父さんとお母さんが焦った感じで喋っている。
「4回ずつ鳴ってるな!こんな夜遅くに魔物襲来って何なんだ!」
「南と東側から聞こえたわ!」
「ルーネッ!俺は先に東門へ向かう!ここら周辺の家に東門へ向かうよう指示を出せっ!」
「はい!」
(何か起こったんだ……お父さんは東門に行くのか。リリーも行かなきゃ!)
ルーネが周辺の男衆に東門へ向かうよう伝え、武器を持って行った夫の妻や子どもたちと一緒に家の外へ出て「こんな時間に魔物なんて…」と話しをしていた。ふと我に返り周りを見ているとリリーがいない。こんな騒ぎなのにあの子が出てこないなんてありえない。
急いで家に戻ると、出入り口が空いている。
「リリー!リリー!!!」
部屋を探すがどこにもいない。
「まさか…まさか、あの子……」
リリーを探すルーネの声に、他の家の妻や子どもたちが集まって来る。
「リリーちゃん、いないの!?」
「あぁ、どうして!?いつも勝手にいなくなっちゃう!探しに行かなきゃ」
「ルーネさん、危険よ!ダメっ!今行っちゃ危ないわ!!」
「やめて!離してっ!!リリーが…りりーが…」
数人に引き留められてルーネは泣きながら崩れ落ちた。
リオンが東門に到着すると、門の手前200mほどまで魔物が迫っているのが見えた。
「いったい何だってんだ!?なんだあの数は!?おい!門兵!数はどれくらいだ!?」
「分からん!が、500近くいるぞ」
「500だと!?」
「500って多いの?」
「あぁ、すごい数だ。多分これは討伐隊だけでは無理かもしれない」
「でも戦うんでしょ?」
「当然だ!家族は絶対に守る!」
「リリーも守る!!!」
「そうだ!リリーも………リリー!!!なんでお前ここにいるんだ!!!」
「リリーが守る!お父さんもお母さんもみんな守る!!」
「なに言ってるんだ!すぐに家に帰りなさい!ここは戦場になる!!!」
「お兄ちゃん……いまだったらいいよね?みんなを守りたい!」
リリーは手をかざし、魔物の群れに向かって魔法を放った。




