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空に描く自由の軌跡 〜翼なき魔法使いの夢〜  作者: kchan
理想は空の彼方に
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第38話「ミラー教」

ラクスのゆっくりとした帰還に、マルクウェルは(ほぅ…)という感心と驚きの顔している。


兵士が数人近づいてきて、状況を説明せよとのこと。

地竜を倒し、道の整備をしてきたことを伝えると「嘘だろ!?1人で倒したのか?道まで!?」という反応だった。馬車で腰が痛くなる原因は悪路を進んでいることもあるのでしっかり整地してやった。辺境伯様まで連絡が届いたようで、ちょっとして顔を見せるよう連絡があった。




「まさか倒すとはな」

「そんなに強い個体じゃなかったのかもしれません」

「戦争が落ち着いたら対処する予定だったが、手間が省けた。礼を言う。それから亜種だからと言って地竜が弱いわけではない。手練れが複数死んでいるからな、お前が強いのだろう」


(まぁ正直言うと魔円斬はオーバーキルだな。抵抗なくスパッと行ってたし)



「で、帰ってからだが冒険者ギルドへ依頼削除を行い、地竜を解体屋に持ち込む。つまり討伐されたことがバレる……兵たちにも知っているのでお前が1人で戦って討伐したことは変えられない。つまりお前は地竜殺しの英雄で、学校はおろか領民の話題の中心となるわけだ」


(……ししし、しまったぁぁぁあ!!!)

「あの……できるだけ目立ちたくないんですが…」


「ん?あれだけやってのけたのにか?承知の上ではないのか?」


(何だそのニヤニヤした顔は!後先考えない奴を馬鹿にしたような顔だ!!チクショー)


「英雄様の誕生だ、いや勇者か?」

(まぁ面白いことだけではないがな……王の耳に入る前に色々と調整が必要だな)




先遣隊が帰ってくると、出立の準備が進められる。「やはり討伐されていたらしい」とか「見たこともないような道が整備されている」など、先遣隊から漏れ出る声が伝達し、兵士が噂していた。



森へ入ると兵たちが「す、すごい」「何だこの道は」「滑らかだ」という感嘆の声をあげていた。

(アスファルトをイメージして作りましたー)



途中、分岐から地竜までの道を、ラクスと兵士20名で進む。現場に着くと兵たちは驚いてポカーンとしていたが、すぐに意識を取り戻し、台車に地竜を載せ始めた。また動き出すんじゃないかとビクビクしている人もいる。新米兵士も参加しているらしい。



回収が終わり、領都へと向かった。森は数キロあるため結構時間がかかるが、道が整備されているため、あっという間に森を抜けて驚いたと、後で辺境伯様に言われた。



事前に門番には連絡が入っていたようで、門に近づくと勝手に門が開き始めた。スムーズに隊が領都へ入っていく。地竜を載せた台車が門に差し掛かり、声が上がり始める。


「うおぉぉぉぉおお!地竜が討伐されたぞ!」

「領主様、バンザーイ!」

「デカっ!あんなのどうやって倒したんだ!?」

「すごーい」

「やったー」



声は様々だったが、喜んでくれている様だ。ラクスは皆が喜んでくれることがとても嬉しかった。魔法を皆の幸せのために、笑顔のために使うんだと言う誓いを早くも実現でき、誇らしく感じた。


地竜は領都の解体屋に運ばれるらしい。途中で別方向へ向かって行った。

領主やラクスは領都の奥にある領主邸へ。馬車を降りると兵が来て、部屋へ案内された。領主邸は質実剛健と言う言葉そのもので、建物は大きかったが、あまり飾り気がなかった。



案内された部屋は食堂のような感じだった。席に着くと次々に豪華な服を着た子どもたちが入ってきて席に着く。皆顔立ちが恐ろしく整っている。続いて奥方様であろう方も来られ、こちらを一瞥した後席に着いた。少しして領主様の御成である。同時に飲み物と前菜が配膳された。



「皆、予定より少し早いが帰った。食事しながらとなるが話すことがある。まず食事への感謝を祈るぞ」

皆が胸の前で両手を編み合わせ、祈りのポーズをする。


(えーと、この国はミラー教だったか。実家じゃ「いただきます」としか言ってないし、祈りなんてしないけどな)



「全ての命と食事に携わる全ての人々に感謝し、今日の糧をいただきます」

『いただきます』


(え!?ここ日本!?いただきますってのはいつも言ってたけど、確か前世もいただきますの意味ってそんなんじゃなかったっけ?)


ラクスはミラー教がどんな教えかなど何も知らなかったが、何か仏教に近いなぁと思っていた。


食事が次々と運ばれてくる。特にコース料理とかではないらしい。前菜後は全部来るスタイルのようだ。



「皆、食事の手を止めずに聞いてもらいたい。この後も数件打合せが入る。家族との大事な時間だが紹介したい者がいる。ラクス」


「はい」

立ち上がり深く最敬礼する。これで合ってるか分からないが、しないよりした方がマシだろう。


「その者はラクスと言う。ハロルドタウン出身だ。ハロルドタウンは数年前まで村だった。その者が魔法による農業改革・狩猟改革を行なったことで、村は町となった。その手腕を買い、ここへ連れてきた。我が領の教育長長官の相談役となり、領全体の魔法教育を改革してもらうつもりだ。また、これが成功すれば行く行くは食糧改革が実現する。我が領土からこの国を強くし、争いのない世を作るぞ」


『はい、父上!』

「まぁまぁ、勇ましいこと」



(侵略戦争はしないと言ってたから、攻め込ませないように経済的に少し依存させるくらいがちょうどいいかな。その為にまず食糧改革ね)

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