第34話「家族」
振り返るとリリーは既に大泣きしていた。
(もう!?)
「ぅおでぃいいじゃんがーーー、どっが行ぐっでーーーーいーーやあぁぁあぁぁああ」
「いや、リリー?まだ決まったわけじゃないんだよ?」
精一杯の嘘をつく。僕は既に行く気まんまんだし。
「ぅおでぃいいじゃんのバガーーー、うぞばっかでぃいぃいいぃぃ」
「嘘ってお前……」
ばれてる。ちょっと落ち着くまでしばらく待ってみる。10分くらい泣き続けたが、少し落ち着いてきた。
「リリー、あのな、リリーはお兄ちゃんの悩みを知っているか?」
「なやみってなに?」
「困っていることだな。お兄ちゃんは自分の魔法でいろんなことをしたいと思ってる」
「うん」
「でもこの町にしても1人では出来ないことがいっぱいあるんだ」
「リリーがいる」
「うん、リリーがいてくれて助かっているよ」
「えへへ、そうでしょ」
「でもリリーがいてくれるだけじゃ出来ないことがあるんだ。もっと魔法を勉強したいんだ」
「……」
「じゃあリリーも学校に行く」
「そうか、今もこの町で教えているけど、もうすぐこの町にも学校ができるんだ」
「じゃあお兄ちゃんもリリーもそこに行けばいい」
「僕はね、この町では先生になっちゃうでしょ?もっと知らない魔法を勉強したい。リリーはまだ文字が書けないでしょう?町の学校で文字が書けるようにならないと領都の学校へは行けないよ」
「やだ」
「そうだろう、じゃあ町の学校とか父さん母さんに文字を習わなきゃね」
「うん……」
「でもお兄ちゃんによしよし出来なくなるよ?怪我したとき良くならないよ?」
「そうだね、実はね、お兄ちゃんリリーには追い付けないけど、よしよしが少しできるようになったんだ。リリーに見せてもらって教えてもらったからね」
そう。リリーが回復魔法を教わりもせず使っていたことにビックリした。でも待てよ……よく考えると以前からリリーがよしよししてくれると痛みがなくなっていたような気がする。なんで気づかなかったんだー、僕バカじゃん。と、気づいたときは考えたもんだ。
リリーの適性は明らかに水だ。水……僕の苦手な魔法。しかし溢れ出すほどの魔力でカバーできるのではないかと、回復魔法を何度もイメージして自分で付けた指先の傷を治していく。人体はほぼ水だ。だから水魔法で回復するのか?分からないが、この程度であれば傷もすぐ塞がるようになった。問題は魔王拳だった。日々鍛錬を続けてきたが強烈な筋肉痛は来るので、魔王拳を使いつつ、体中を徐々に回復できないだろうかと考えた。イメージ通り。魔力はそこそこ使うが魔王拳3倍までなら大丈夫そうだ。これ以上は回復に時間がかかりすぎるため1回使ったっきり、2度目はなかった。
「わかった、学校ができたらおべんきょうしてお兄ちゃんとおなじ学校にいく」
「うん、頑張れよ!領都の学校でまってるぞ」
「うん!がんばる!」
リリーをなんとか説得できた。
あとは……
1時間ほどすると、父さんと母さんが帰ってきた。母さんは元気がない。
「帰ったぞ。ラクス、「特別に」とのことだったが辺境伯様と話しができた。昨日の件も謝ったが気にしてないそうだ。それでだ、お前から聞いた話しは全部確認できた。間違いないそうだ。学費や寮費まで辺境伯様が負担してくれると約束してもらった。帰りに母さんとも話し合ったが、ラクス、お前は領都学校に行け」
以外にもすんなり話しが進んでいるが、父さんが母さんをかなり説得したような気がする。子どものことになるとそう簡単に折れない母さんだ。
「父さんはな、ラクスはこの町では納まらない人になれると思っている。小さい頃から自分でいろいろ考えて、村の子どもたちに教育して、村を町に発展させた。村長が計画したと言っても、やったのはお前だ。父さんから見ても母さんから見ても、他にこんな子はいないと思ってる。俺みたいに腕っぷしが強い人間は魔物討伐したり、畑仕事をするのが務めだ。だがラクス、お前は違う。人の上に立てる人間だ。もっと勉強して町や領の人たちを幸せにすることができるはずだ」
父さんの言葉が胸に染みわたり、涙が出そうになる。
母さんはしくしく泣き始め、リリーもつられて泣き顔になる。
「母さんはお前の成長を願っているが、小さい頃から魔力枯渇で何度も気絶したり、急に魔物と戦ったり、本当に心配している。そのことを忘れるな。たまには暇を見つけて帰ってくることを約束しろ」
「うぅ……」
僕はこんなに愛されていたのか、こんなに思ってもらっていたのかと思いがこみ上げ、涙が溢れだしとまらなくなった。父さんと母さんに抱き着いて、リリーもそこに入ってきて泣き、母さんは嗚咽をあげながら泣き、父さんはニッコリ笑っていた。




