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空に描く自由の軌跡 〜翼なき魔法使いの夢〜  作者: kchan
空を夢見る少年
33/88

第33話「説得」

「ラクス、お前、城へ来ないか?」

「いえ、結構です」


マルクウェルが真顔になり、こちらを見続ける。


「私は争い事を好みません。私の力はおそらく戦争に利用できるでしょう。しかし私は人殺しにはなりたくありません」


しばらくの沈黙が続く。



「フッ、戦争のためではない。富国だ。そもそもこの国は他国への侵攻を認めていない。攻めてくるやつがいるから反撃しているだけだ。この国や領にはまだまだ肥沃な大地があり、素材としては潜在価値が非常に高い。だがどうしても開拓者不足なのだ。開拓者は魔物とも戦う実力があるものでないと厳しい」


「僕に開拓者になれと?」

(魔法研究したいのでそんな時間はございませぬ)


「いや、お前が領の教育長官相談役になり学校を編成、教育改革を行う」

「へ?」



辺境伯の計画はこうだ。現在12歳~20歳までの士官学校があるが、この制度を改変。

5歳~、生活魔法学校として各町に設立。簡単な読み書き、魔力成長、生活魔法及びその応用。

11歳~、生活魔法学校卒業後、魔力の多い者、能力の高い者はを適正を見つつ領都にある学校に魔法科と兵士科を新設。

16歳~、領都の士官学校。士官学校では下士官を育てる教育がなされる。なお貴族や超有能な一般人は王都の士官学校に行くそうだ。卒業後は大尉からの役職で軍部に入る。



「士官学校は別だ。戦略や戦術、人を動かすことを教育する場だ。よってお前の持ち場は5~15歳までの人材教育だ。どうだ?」

「どうだ?と仰られても……」

「まぁ強要はせん。既に領都学校に2名、お前の生徒がいる。もしくはこの町にいる子でも良い」

「いや……さすがにそれは……」


「返事は明日の出立までだ。親と話せ。良い返事を期待している」

(ぐぬぬ……僕が断ったら、せっかく良い方向に回り始めたこの町の若い人材を奪い取る気だ…)


「あぁ、それからお前の立場を隠して学校に通っても良いぞ。相談役という形であれば、最初は忙しいだろうが教育長官とは週1回の教育方向性打ち合わせをするだけで良い。お前の学費と寮費は免除するぞ」

マルクウェルは振り返りながらそう言いつつ、扉に手をかけ出て行った。


(学校!?何それ、さいこー!行ってみたい!!)



僕は一人たたずみ、酔っぱらいの父親に「どうしよう、でも行きたい」とつぶやいた。

(母さんの説得が大変だな。あぁ、あとリリーか……)





翌朝、朝食時に家族に話した。

「みんな聞いて。父さんも母さんも、リリーもね」

「ん?」「なーにー?」「はいはい」


「実は昨日きた男の人は辺境伯様……バルクロイド辺境伯様なんだ」

「はぁ?何言ってんだ?」

「へんきょうはくってなーにー?」

「辺境伯様!?本当に!?」


「本当だよ、魔法でこの町をいろいろ変えてきたでしょう?それでこの町で何が起こったかを直接見に来たらしいんだ」

「私ったら失礼なことしたかしら?どうしましょう、何かしたかしら……」

(あまり覚えてないらしい。酒に飲まれてて良かったな)


「まぁ大丈夫みたいだよ、あちらからここの暮らしを見たいって来たし、身分も明かさず話したから不敬罪とかには処されないんだって」

「不敬罪ってお前……そんな偉い奴だったのか。えらく良い酒もくれる気前のいい奴だったんだが……あの酒高かったのかな、俺結構飲んじゃったぞ、おい」

「私も飲んじゃった……」

2人とも顔面蒼白である。



「それでね、辺境伯様が僕にこう言ったんだ。『領都の学校に通わないか?』って」

それを聞いた母さんは顔面蒼白から顔色が戻り、今度は若干赤くなってきた。ちょっと怒ってる。


「なに言ってるの!?領都の学校ってすごく遠いじゃない!あなたに何かあったらどうするの!?」

(それ言い始めたら僕は何も出来ませんぜ、お母さま)


「それに……そう!確か領都の学校は12歳からだったはずよ!あなたまだ9歳じゃない。9歳じゃどちらにしても行けないわ」

「そう。それがね、学校の編成があるんだって。5歳~10歳は町の学校を作るんだってさ。11歳以上が領都の学校に行く。」

「ほら!そうなっても11歳以上じゃない。まだ2年あるわ」


「でね、辺境伯様から『お前は能力が高いから領都学校に飛び級しろ』って言われたんだ」

「ダメ!絶対ダメ!そんなこと私は聞いてないわ」

「まぁ待てルーネ。ラクスお前はどうなんだ?お前の気持ちが一番大事だと思う」


ラクスは少しの間考えを巡らせていた。

「うん、僕はね、学校に行ってみたい」

「!!!」母さんは少し泣きそうになっている。


「そうか。だが母さんの心配する気持ちは分かるな?11歳以上が集まる場所に9歳のお前が行くんだ。小さい子の2年って言うのは大人の2年とは全然違う。体の大きさも違うし、どんな奴がいるかも分からん」

「うん」

「お前の気持ちは大事にしたい。ちょっと待ってろ。ルーネ、出かけるぞ」

「こんな朝からどこへ行くのよッ!」

母さんは若干キレ気味だが、押しが強くなった父さんには逆らわないようだ。



父さんと母さんは出かけて行った。おそらくだが辺境伯様のところだろう。

さて、次はリリーの説得が……(すでに泣いてるっ!!??)

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