表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/40

9 ギルドでの出来事

この話を読んで下さる皆様方に、お礼と感謝を捧げます。

本当に、ありがとうございます。

 生産ギルドに着いたのは、昼前だったせいか、人も疎らで、受付も空いていた。

 ウールスは、フルアと手を繋いだまま、顔見知りの受付の女性に声を掛けた。


 「弟子の登録を、お願いしたい」


 「あら、ウールスさん、お久しぶりです。お弟子さんを取られたんですね〜。可愛いお弟子さんですね〜。てっきり、ウールスさんのお子様かと思いましたよ〜」


 ウールスは、フルアの事を自分の子と言われ、少し慌てて「…急に、弟子を取る事になってしまって…見た目は少し小さいが、賢くしっかりしている弟子だから、助かっている」そう言いながら、フルアを見つめて、微笑んだ。


 その笑顔を見たギルドにいた者は、驚いた。

 ウールスは、体も大きく、不機嫌な顔をする事はないのだが、殆ど笑う事なく、淡々と物事をこなすところしか、見ない。誰かと冗談を言って、笑い合う姿も見る事はない。

 そんなウールスが、急に弟子と手を繋いでやってきて、笑顔を見せるとは!

 この姿を見ていない者は、誰も信じないと、誰もが思った。


 「フルア、この用紙に記入して、タグに登録したら、終わるからな。あぁ、そこの椅子に座って、落ち着いて書くといい」


 ウールスの甲斐甲斐しいその姿に、周りのものは、ウールスのお母さん的師匠ぶりを、皆に伝えるべく、2人をガン見していたのだが、2人は全く気付いていなかった。


 フルアが、記入しているところを、じっと見ているウールスに、受付の女性のマールが声を掛けた。


 「ウールスさん、今日は買取は、よろしいんですか?お弟子さんが記入している間に、すぐに受付けられますけど?」


 「買い取ってもらいたい品は、持って来ているが…受付している間に、何かあったらと思って、心配で…」


 「子供が心配なのは、親ならみんな同じですけど、構いすぎは逆効果ですよ〜。困っている時にだけ、さっと力になる!これが大切ですよ〜。私は、3人の子持ちですからね〜。子育ては、先輩ですよ〜。さぁ、ウールスさん、品物出してくださいね」

 マールに、キッパリと言われてしまい、ウールスは、反省した。


 「良い助言を、ありがとう。助かったよ。俺も、フルアが困った時に、すぐに手助け出来る様に、成長しなくちゃな」


 「私も、色んな人に教えてもらいながら、子育てしてきましたからね〜。みんな同じですよ〜。子どもは、ちゃんと親を見てますからね〜。ウールスさんなら、大丈夫ですよ〜」


 おっとりとしたマールの言葉が、ウールスの心に沁みていった。

 弟子を育てるという事は、自分を成長させる事なんだと、気を引き締めた。


 買取が終わり、フルアに声をかけようと思ったら、もうすでに横で買い取りを見つめていた。

 用紙を、マールに渡しながら「よろしくお願いします」と、頭を下げた。


 「は〜い。こちらこそ、よろしくお願いします〜。さぁ、次はフルアさんの登録ですね。このドッグタグに指を乗せてくださいね〜。登録します………はい、出来ました。品物を持ってこられたら、このドッグタグを見せてくださいね。これが無いと、買取出来ないので、気を付けてください。お金は、すぐに渡す事もできますし、ギルドに預けることも出来ます。ドッグタグの裏側に指を乗せたら、預け金が表示されます。これを、ギルドに提示してもらったら、いつでも引き出せますからね〜」


 「では、これからは、フルアもよろしく頼む」


 ウールスは、そう言って手を繋いで出ていった。


 2人を見送りながら、ギルドにいた人達で、「ウールスさんって強面で声を掛けづらい雰囲気だけど、今日は全然違ったね」

 「弟子って感じより、溺愛してるお母さん?」


 アペロールの街の父親は、粗野な男が多い。反対に母親は、優しく世話を焼く人が多いので、ウールスは、ここでも勝手に、母親認定をされてしまっていたが、この事をウールスにわざわざ教えようとする者は、ここには居なかったので、これから先もウールスが知る事は無い。

 生産ギルドの、細やかな秘密として、語り継がれた。



 

 冒険者ギルドも、人は疎らだった。

 すぐに、受付に行き、フルアの登録をしてもらった。


 ここもドッグタグに指を乗せて登録をするのだが、こちらのドッグタグは、乳白色で半透明だ。

 魔獣の骨でできているらしい。

 

 フルアは、一つのチェーンで纏めて首から掛けた。


 これで、フルアはスビリジーナ国の人間になった。

 もう、シャライナの自分とは、決別できたように思えて、とても嬉しく思えた。


 ウールスが、登録料を払うと、受付のお兄さんがフルアに声を掛けた。


 「成人前の子が登録してくれると、今だけ限定で、なんと!マジックバッグを進呈してるんだ。これを使って、沢山依頼を受けてね」

 そう言いながら、にこやかに皮革でできたマチの無いポシェットを、渡してくれた。


 フルアは、驚きながら「ありがとうございます。がんばります」そう答えた。


 ウールスも、驚いていた。


 「マジックバッグは、高価な品なのにどうしたんだ?登録料くらいのお金を払っても、買えないだろう」


 「あーーー、そう思うよね。そのマジックバッグ、そんなに入らないからね。ウッサーが2匹入るかどうかも怪しいからね。依頼品の返品なんだよね……こっちがちゃんと確認してなかったんだけど、その大きさで、荷馬車サイズのマジックバッグの作成依頼だったのに、5個中3個が不良品で、ギルドの買い戻し品なんだよ。その容量じゃ、大人には物足りないし、未成年が登録に来てくれたら、プレゼントしようって事になったんだよ。ま、未来への投資だよ。マジックバッグは、高価だけど便利だからね。それを使って、沢山稼いでもらおうって事だよ」


 「なるほどな…フルア、良かったな。それなら、薬草の依頼でも受けるか?ノアの森の中は、まだ無理だが、森の周辺にも薬草は生えてるから、ちょうど良いものがあれば、出せるからな」


 「ウールスさんも、依頼受けてくれると助かるんですけどね〜」


 「依頼書を見て考えるよ」


 2人は、壁に張ってある依頼書を見に行った。

 

 「この黄色の壁の方が、依頼の期間が決まっている方だ。紙に書いてある期間までに依頼を達成するとこの紙に書いてある料金が貰える。受ける時は、紙を剥がして、受付に持っていき、タグを見せて依頼を受ける。そして、あちらの緑の壁が、常時依頼している物が張ってある。こちらは、紙を剥がさなくて良いんだ。紙に書いてある品を受付に持っていくだけでいい。どちらも、依頼を達成すると、ランクが上がるし、達成できなかったら、ランクは上がらない。何度も達成出来ないと、ランクが下がる時もあるから、注意が必要だ。ランクによって、受けることが出来る依頼があるから、沢山お金を稼ぎたかったら、早くランクを上げるのが、近道って事になる」


 ウールスの説明を、真剣な面持ちでフルアは聞いていた。


 「私に摘めそうな、薬草はありますか?」

 

 「そうだな…フリューラ草あたりか…帰ったら、一緒に行ってみよう」


 「はい、ありがとうございます。私、がんばります」


 「師匠も、何か依頼を受けるんですか?」


 「そうだな…フルアにマジックバッグを贈ってくれたしな。これを受けるか…」


 そう言って、ノアの森の希少薬草の依頼書を取り、受付に持っていった。


 フルアは、ウールスの弟子として、気を引き締めて頑張ろうと誓っていた。




 ちなみにーーーーー冒険者ギルドの受付の男は、フルアに出来損ないのマジックバッグを渡したお陰で、ウールスに依頼を受けてもらえたので、ギルド内で【エビで鯛を釣る男】として、株が上がったようだ。


 ウッサーは、30センチほどの大きさの生き物で、長い耳が特徴の生き物だ。毛皮も人気だが、肉はクリームシチューに入れると、絶品らしい。

 

最後まで読んでくださって、ありがとうございます。

感謝しかありません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ