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40 これからもずっと

もう少し書こうと思っていた事もあったんですが、少々思う事がありまして、取り敢えず今回の話で、完結となります。


この話を読んでくださる全ての方に、感謝いたします。

最後に、後書きにお礼の言葉を書いていますので、よろしければそちらも読んでいただけましたら、嬉しいです。

 太陽の光が肌を突き刺すような毎日は鳴りを潜め、朝晩は涼しく過ごしやすくなってきた。

 若干夏バテ状態だったフルアも、最近は漸く元気を取り戻してきた。


 暑さに負けて、お休み状態だったペンダント作りも再開し、今日は久しぶりに、ミィロアさんの手芸店へ持って行く予定だ。定期的に持って行くはずが、暑さにやられて長い間お休みをしてしまった。


 いつもの様に、生産ギルドで薬草を卸し、ミィロアさんの手芸店に向かった。


 「フルアちゃん、久しぶりね。待ってたのよ。ペンダントの評判が良くて、人気なのよ。これを付けてたら、好きな人に告白されたっていう人もいて、最近じゃ幸運のペンダントって言われてるのよ」


 ミィロアさんの言葉を聞いて、嬉しくなった。

 自分が作った物で、喜んでくれる人がいるという事を知って、飛び跳ねたい位に嬉しい。


 「私も、喜んでくれる人がいてるって教えてもらって、すごく嬉しいです。作って良かった」


 「私も、フルアちゃんがそうやって喜んでくれるのを見て、嬉しい気持ちを分けてもらった気持ちよ。自分が作った物を、誰かが喜んでくれるって、格別の喜びよね。これは、手作りをして、誰かに使って貰った事がある人じゃないとわからない喜びね」そう言って、ミィロアが微笑んだ。


 「あら?今日は、お師匠さんは一緒じゃないの?珍しいわね」


 「私、森の猫を飼い始めたんです。今日も一緒に来たから、お店の中に入れるのは…って思って」


 「そういえば、そんな噂聞いたわね。子猫でも、強そうだって聞いたわよ」


 フルアは、驚いた。そんな噂が広まっているとは、思わなかった。


 「じゃあ、あんまり待たせたら悪いわね。まだ暑いし」


 フルアは、レース糸を幾つかと、革紐を購入してウールスとピシィの元へ戻った。


 「暑いのに、お待たせしてすみません」


 《そんなに待ってないよ》


 「ピシィのいう通りだ。大丈夫だ。前に出したのは、売れてたのか?」


 「はい、喜んで買ってくれてもらえたみたいで、すごく嬉しいです」


 「じゃあ、メディカさんの店に薬草を卸して帰ろう」


 


 メディカの店に入るのはウールスのみで、今度はフルアとピシィは外で待っていた。


 《フルアが外で待たなきゃいけないのって、僕のせいだよね。ごめんね》


 「ピシィが気にする事ないわ。ここは、屋根の下で影が有って暑くないし。それよりも、ピシィは疲れたでしょ?ごめんね」


 ピシィと話しているうちに、あっという間に時間が過ぎ、ウールスが店から出てきた。

 何となく、ウールスが気落ちしている様子だが、何も言わず帰途についた。


 うちに戻って荷物を片付けると、ウールスはカバンの中から、木で出来た筒の様な物を出してきた。


 「さっき、メディカさんの店で貰ったんだ。木の水入れだそうだ。フルアが作りたかったのは、こういう物だったんじゃないか?」


 フルアは、驚いた。

 ずっと頭の中にあったが、どうしてもピンと来なくて、うまく形にならなかった物が、ここにあった。


 「すごい。ーーー触って中を見て良いですか?」

 フルアがそう言うと、ウールスは黙って木の水入れを差し出した。


 それは、本体も蓋も木で作られていて、持ち上げるととても軽い。水を入れても、そんなに重いと感じないだろう。一番どう作って良いのかわからなかった、蓋を開けてみた。蓋部分は、本体の飲み口に当たる部分が、ぐるりと深い溝になっていて、飲み口が溝に嵌まる様になっている。そして、蓋の溝の内側には、輪ゴムが付けられていた。輪ゴムがパッキンの代わりなのだろう。そのお陰で斜めにしても、水がこぼれない。


 フルアは、こうやって作ったら良いのだと、感心した。

 

 「フルアも、ずっと考えていただろう。誰かに先に作られると、悔しいな」

 ウールスは、この事を考えていたのだろう。


 「そうですね。自分の勉強不足が悔しいです。今回の事で、前世の記憶だけじゃ足りないんだってわかりました。前世の私は大人でしたが…私、まだ8歳ですしね。これから、師匠に色々教えてもらって、知識を広げます。今回は、間に合いませんでしたけど」

 そう言って、さほど悔しくなさそうだった。


 ウールスは、フルアがずっと苦労をしていたせいなのか、落ち着いているから、8歳の子どもだった事をうっかり忘れていたなと、思った。まだまだ先は、長い。やりたい事をやったら良いのだ。急ぐ事はないのだ。


 「フルアがここにきた時は、雪が解け花が咲き始めた頃だった。今は、森の恵みがたくさん採れる頃になるな。もう、ずっとここで暮らしている様にも思える」


 「私もです。前の家では、私以外の家族が笑い合って、寂しかった。それに、誰も私自身を見てくれていないって悲しかった。修道院に行ったら、私自身を見て欲しいっていうのが願いだったんです。ここは、私の新しい家族がいます。師匠とピシィがいてくれる。笑い合えてる。私の初めの望みは、あっと言う間に叶いました。街にも知り合いがたくさん出来て、毎日が楽しいんです。それに、私の作った物を使って喜んでくれる人がいるっていう喜びも知りました。幸せって、こういう事を言うんですね。師匠、ありがとうございます。これからもよろしくお願いします」


 フルアは、そう言って頭を下げた。


「俺だって嬉しいぞ。ずっと1人で暮らして行くと思ってたしな。いろんな旨い物を食えて、楽しいと思ってるぞ。フルアのお陰だ」


 《僕だって、フルアの美味しい魔力を沢山食べられて、嬉しいよ。あ、ウールスのも、まぁまぁ美味しいけどね》


 ピシィの言葉に、2人は笑った。


 「師匠って、美味しい物大好きですよね。師匠の作るご飯も、とっても美味しいですし。あ、もうすぐプラムル酒飲めますね。私の想像通りなら、きっと美味しいので楽しみにしてください」


 「そうだな。楽しみだ」


 ウールスは、フルアの成長を見る楽しみは、何にも代え難いなと思えた。


 主はフルアを、甦った女神と言っていた。まさに、この家に幸せを運んでくれた女神だ。






 「師匠、今晩は何を食べますか?」


 そう言いながら、ご飯を作る毎日が、フルアにとっての幸せの形なのだと思えた。

 

 

 『ずっと、この幸せが続きますように』


 そうフルアは、小さく祈った。







 終わり



 

大まかなあらすじだけを考えて、書き始めたのが2月の終わり頃でした。

その時には、まさかこんなに人が読んでくれるなんて、思ってもいなかったので、読んでくださった皆様には感謝しかございません。本当に、ありがとうございました。


本来なら、自分の中で“これは伏線”と思っていた事も、きちんと回収して完結させるのが、筋なのだと思います。そこを書かずに完結してしまうのは、如何なものかと思ってはいるのですが、どうしても書けなくなってしまいました。

書く前に、しっかりとこの世界の事を考え、齟齬が無い様にするべきだったのだろうと思います。考えていなかった事を指摘され、気付いてしまうと気になってしまって、話がまとまらないなんて、私って、アホやなって思います。

見知らぬ私に、教えてくださった方には、勉強になったと感謝しています。もちろん、気付いていたけれど、スルーしてくださったという方にも、感謝しています。打たれ弱いので、助かりました。


何か、素晴らしい案が私に降りてきたら、またこの話を連載する事があるかも知れません。

違う話を書くかもしれません。

どちらにしても、良い勉強になりました。

褒めて伸ばしていただけると、一番嬉しいです。(図々しいですが)

また機会がありましたら、応援よろしくお願いいたします。


感謝を込めて。

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