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2 夢の中で…

よろしくお願いします。

 シャボン玉の様な、フワフワしたものがいくつも浮かんだ真っ暗な空間の中に私はいる。


 ここがどこかは、わからないけれど、何となく自分の心の中の様な気がする。


 そっとシャボン玉の一つに触ってみた。


 シャボン玉の中に、するりと入り込んだ。


 私は、誰かの夢の中に入ったみたいだ。


 いえ、違う。これは、私のだ……



 私の夢だとわかるけれど、この夢の人物は、シャライナじゃない誰かだ。


 シャライナじゃない私を、私がちょっと上から眺めている様に見える。


 あの人は私だ。


 見た事の無い四角い乗り物に乗り、すごい速さで移動しているみたい。外の景色が、あっという間に変わっていってる。座っている人もいるけれど、殆どの人が立っている。ぎゅうぎゅう詰めで苦しい。私は、降りる駅に早く着く事しか考えていない。


 全く違う世界の様だけど、なぜか分かる。


 本当に不思議。


 駅に到着したら、早い足取りで会社に向かう。


 柔らかそうなブラウスに、スカートが膝までしかないので驚いたが、周りの人ももっと短いスカートでお尻に沿った形だったり、ズボンの人もいる。誰も足首までのスカートを履いていないし、ドレスの人もいない。

 ここでは、これが普通なんだ。


 綺麗にお化粧をして、濃い茶色の髪の毛は、綺麗な髪留めで後ろにひとまとめにしていた。

 私は、仕事ができる侍女の様な雰囲気の人だ。


 私が、会社に到着した。そして、パソコンで作業をする。同じ会社の人達と話をしている。にこやかで、楽しそう。

 午前中に休む暇もなく仕事をして、お弁当を食べる。夕飯の残り物を詰めたものだ。そして、午後からもパソコンに向かって、仕事をしていたら、先輩に呼ばれた。

 何かトラブルが発生したみたいで、2人で出掛けた。相手先の仕事相手に、謝罪してる。あ、先輩が、私のせいにしてる。私は、ビックリしたけど、その場では相手の怒りを宥めるのが先と思って、我慢した。社外に出た途端、先輩に、はっきりと怒りを告げる。けれど、顔はにこやかなまま。心の中の怒りは顔には、出していない。


 「私、この案件に関わってませんよね?謝罪は、1人より2人の方がいいからって言われたから、ついて来たのに、私の責任って、どういう事ですか?」


 笑顔なのに、なぜか凄く怖い。先輩の顔が引き攣ってる。


 すごい、シャライナの私だったら、黙って我慢するだけなのに…


 「ごめん、可愛い女の子が失敗したのなら、あの会社の人は何にも言わないかと思って…正直に言ったら、付いてきてくれなかっただろ?」


 「当たり前です。関係の無い案件なのに、自分の責任にされる為に同行する人なんて、いないと思います。正直に、真摯に謝罪したら良かったじゃ無いですか?その方が、信頼されると思いますけど」

 

 私の言う事は、正しいと思うけど、あの先輩は肩をすくめただけだった。私は、ごめんの一言で誤魔化すな!自分の行動を反省してよね!と、怒りがさらに湧いたようだ。

 

 私は、もうこの先輩に言うだけ無駄だと思った。


 けれども、私は怒りが収まらなかった様で、会社に戻ってからも同僚やその他の女性社員に、今回の顛末を話してる。あ、みんなが先輩に呆れた目で見てる。


 私の上司が誰かに呼ばれて、違う部屋に行った。


 シャライナは一粒、涙をこぼした。


 違う私は、シャライナと違って、戦える人なんだ…

 私も、家族や使用人と戦ったら、今の私じゃ無かったのかな。


 そこで、シャボン玉がきえた。




 次のシャボン玉に手を伸ばしそうになった時に、また不甲斐ないシャライナに気付くのが怖かったけど、私は知らないといけない気がした。


 次のシャボン玉の中に入った。


 また、さっきと同じ女の人だけれど、今度の服装はリュックを背負い、服装だけは山ガールね、って思ってた。

 鮮やかな赤の、動くとシャカシャカ音がする薄手の上着に、ベージュのズボン、赤い編み上げのブーツを履いてリュックを背負っている。とても華やかで、楽しんでる雰囲気がわかる。


 滝と木が生い茂る山に着いた。


 私は、高揚していた。


 滝が力強く水を落とす姿に感動して、跳ね返る水が作っていた虹に、心をときめかせていた。

 木々の緑に目を奪われ、森の香りに酔いしれていた。


 こんなに自然に感動するんだと、知って驚いていた。


 誘ってくれた友達に感謝していたけれど、どうやらそこは山の入り口だったようで、実際に登り始めたらすぐに体力の限界が来て、もう山には登らない!ってぼやいてた。


 泣いてなかったけど、体の節々は悲鳴をあげてたよ。



 突然わかった。

 

 水が布に染み込むように。

 私の体に “ このシャボン玉の中の私は、前世の私なんだ ” って事が、心に染み込んできた。

 

 私が、勝手に思い浮かべて喋ってた事は、前世の私の世界の事なんだって気が付いた。

 

 私の心の中には、シャライナと前世の私が居てるんだって、わかった。

 

 そのせいで、両親達に邪険にされたんだってわかったけど、怒りなんて沸かない。

 

 それは、どちらも私だから。

 前世の私がいてるのが、シャライナなんだって。


 でも……


 私は、前世の私の心の自由さが、心の底から羨ましいと思った。


 

 私は、いろんな事を諦めて生きてきた。

 違うやり方があったかも知れないけど、わからなかった。


 あの盗賊から、生き延びられていたら、私はもう諦めないで生きていきたい。


 今回の私は、仕事のできる侍女の顔じゃ無かった。

 のびのびして、笑顔が可愛らしいお姉さんだった。


 シャライナには、兄と妹しかいなかったけど、あんなお姉さんがいて、私にいろんな事を教えてもらえたら、楽しかったんじゃないかな。


 決めた!


 あの人は、私の心のお姉さんって呼ぶ事にしよう!


 一緒に過ごす事は出来ないけど、あの人は私のお姉さん。


 家族がいたはずなのに、ひとりぼっちだった私に、姉が出来た。


 心に家族ができた瞬間だった。




 ーーーお姉さん、お買い物好きなんだね…山の麓のお社で、お友達とお守りを、たくさん買ってる…


 「ここのお守り、可愛いーー!可愛いのは、正義よねー」


 【 可 愛 い の は 正 義 】 

  

 はい、心に留めておきます。


 

読んで頂きまして、ありがとうございます。



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