3 盗賊の独白
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馬車に、強弓で矢を打ち込み、馬車の速度を緩めた。
後一息で、あの馬車は止まる。
この手腕で、俺はこの界隈で、他のやつやより抜きん出て稼いでる。そのうち、国中で俺は有名になるかもな。
そう考えると、口の端が緩むがまだ早い。本当に笑うのは、お宝を手にしてからだ。
お宝を手にする為には、手段は選ばねぇ。
歯向かう奴は、死んでもらうまでだ。
いつでも、俺はそうやってきた。
あの噂を聞いたのは、お宝を手にした夜に行った、いつもの酒場だった。
『なんでも、タンジェル領ですごい鉱石が採掘されたらしいぜ。それを隣のファルナス皇国に献上されるんだが、盗まれない為に、わざとボロボロの馬車で護衛を付けずに向かうらしい。盗賊の裏をかくって、当主が息巻いてるってよ』
確かにタンジェル領は、鉱石の採掘が主な産業だが、献上にそんな事するか?
信じられねぇ気持ちが湧いたが、もしそれが本当で、誰かに取られるってのは癪に触る。
俺は、張り込むことにした。
ファルナス皇国に向かう道は一本だけだ。ノアの森を掠めるように続く細い道。馬車の行き違いがどうにか出来るかどうかの幅しかねぇ。ファルナス皇国は、余所もんを嫌う国らしく、入るもんを規制してやがるし、国が近くなる程、衛兵の数も増える。あの国の近くで襲うのは、得策じゃねえのは、常識だ。
ならばノアの森に近い道で、襲う。
そう計画を立てて、待ち伏せる事にした。
はっきりした日にちは、分からねえが、近いうちに通るだろうと、タカを括って待ち伏せる事にした。
とは言っても、待つのも一苦労だ。
ノアの森の中は、魔物や魔獣が蠢く恐ろしい森だ。あんなところに入ったら、生きては出られねぇ。だが、不思議な事に、魔獣は森から出て来ねぇから、森にさえ入らなければ、怖くはねぇんだ。あそこには、貴重な薬草も生えてるらしくて、あの森を抱えてるスビリジーナ国の奴は、魔道具を揃えて取りに入るらしい。魔道具は、貴重でおいそれと、手に入れられるもんじゃねぇ。大体、俺はちまちまと草を取る仕事なんて無理だ。俺は、ガツンと弓で獲物(最近は、馬車だが)を取る方が、性に合う。こう言うのを、適材適所って言うんだよな。
そんな事を考えながら、道に連なる山の麓で獲物を待った。
獲物は、2日後にやってきた。
最近では見ないような、ボロっぷりの馬車がノロノロやってきた。
馬車はボロだが、馬はいい馬だ。あれは、傷つけずにいただいてやるからなぁ。俺の馬は、最近弱ってたから、ちょうど良いな。お宝も、馬もいただきだ。
ニヤリと笑って、俺は弓を引いた。
車輪に当てて、馬車を止めるつもりだったが、違う場所から馬の蹄の音が聞こえて、焦って馬車に刺さってしまった。
くそ!くそ!あれは、俺の獲物だ!
俺は、大声で叫びながら、2本目を射る。
車輪には当たらなかったが、うまく引っ掛かり、馬車を止める事ができた。
剣を振り回しながら、他の奴らを威嚇し、馬車を開けた。
そこには、聞いてたようなお宝は無かった。
あったのは、大きな光る繭のような、卵の様な代物だけだ。
あんな大きな繭や卵なんて見た事なんてない。
金色に光ってる。
あれは……噂に聞く魔獣の卵なんじゃ無いのか?
大きな魔獣は、卵もデカイって聞くし。
あんなのを奪っても、餌と間違われて、バリバリ食べられるのがオチだ。
「魔獣だーーーー!」
俺は、叫んで逃げた!
命あっての物種だ。魔獣に勝てるような、腕なんかねぇ。
逃げるが勝ちだと、おいぼれ馬に飛び乗って一目散に逃げた。
俺の声を聞いて、他の奴らも我先にと、駆け出した。
馬に乗ってる奴は馬で。
そうじゃ無い奴は走って逃げた。
俺は馬車を襲うのは、辞めた。
金輪際しねぇ。
貴族の奴等の考えることは、俺たち庶民とは違うんだろう。
魔獣の卵を贈るなんて、考えられねぇな。
懲りたぜ。
俺は、大人しく山で、動物の狩りをする生活をする事にした。
もう、馬車は……狩れねぇ………
盗賊にはもう……戻れねぇ。
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