描きたされる絵 ④
それってもしかして、
死んだ生徒が残した絵が、日に日に加筆されていく。死んだ生徒が毎晩絵に加筆している。
みたいな感じの怪談やっけ?
「違うと思うで。」
「なんでよ!」
「この絵が加筆されたんって、多分最近になってからやで。」
どうせ暇な美術部員がお昼休みに落書き程度に書いたんやろ。
羨ましい才能やわ。
「もう、直ぐに現実を突きつけてくるやん!
このリアリストめ!」
「ありがとう。」
私は素直に礼を言った。
「褒めてないねん!!」
「この絵が良い方向に向かってるのは確かやし、ええんちゃう?」
「まだ、足りん!!
この絵にはインパクトが足りん!!」
何を突然言いだすんや!
ユキに絵の何が分かるねん!
この評価Fめ!!
「で、美術の劣等生さんは何を追加したいと?」
「劣等生言うなー!!
この絵にドーンっと象でも書いたらインパクト大、注目度抜群の完璧な絵になるんちゃうか!」
劣等生がなんか言い出したで。
そら、インパクトは出るけど代償がでか過ぎるやろ!!
一発屋芸人みたいに最初は面白いけどあとからつまらん絵画になるやろ!
「この絵を汚すな、森へ帰れ。」
「森って何!?
ウチ、先住民じゃないねんけど!?」
もはや、原始人並みの知能と語彙力としか持ち合わせてない癖に口を開くな。
「そんな事よりこの絵って誰が描いたんやろ?」
「キャンバスの裏みたらサインとか書いてるかも!」
ユキは、キャンバスを持ち上げ絵をひっくり返した。
「Mikeって書いてる!!」
なんでやねん!
どこの英語の教科書やねん!
My name is Mike. か!!
私も裏面のサインをみた。
文字が薄れているが、おそらく Matsuki と書かれている。
「これ、まつきやで。」
「え?あ、ほんまや!
じゃあ、まつきさんが描いた絵なんやな!」
まつきという名前に聞き覚えがある。
誰やったっけ?
「そうやね。
まつきって名前に聞き覚えがあるんやけどユキ知ってる?」
「んー、分からん!」
「まぁ、そうやろなぁ。」
誰やったか思い出されへんけど嫌な感じがする。
ゾワゾワと背中が寒くなるような。
「あ、やばっ!
今日全然絵描いてへんかった!」
「ほんまや、早よ描きな。」
「うん!
でも何描こうかな、、、。」
「じゃあ、私を描くのはどう?」
思いつきでそう言ったが後悔した。
「ええやん!
描く描く!!」
そう言って、ユキはノリノリで私を描き始めた。
自分で言い出した事やし、責任取らな、、、。
〜30分後〜
「でけたー!!」
つ、疲れた!
モデルってジッとしとかなあかんから、めっちゃしんどい!!
身体をほぐすために肩を回すと、ボキボキ音が鳴った。
もう一生モデルなんかせん!!
そう思いながらユキが描いた絵をみた。
「これ、私?」
「そうやで!
どうかな?」
正直に言って下手は下手やったけど、私の特徴を良く捉えていた。
「ユキにしては良く描けてると思うで。」
「ユキにしてはってなんなんよー!!
もう、黒髪ロングやからシャッとかかなあかんし目も大っきいから苦労したわぁ!」
他にもっと苦労する所あるやろ!
制服のシワとか腕の関節とか!
人形みたいに腕真っ直ぐやし、制服に至ってはそれ制服なん?
でも、良く描けてるわ。
ありがとう、そう思ったけどユキには伝えなかった。
「そうなんやね。
これで大丈夫やろ。
提出しに行けば?」
「そうやな!!
行ってくるわ!!」
そう言って、ユキは職員室に駆け出していった。