第七話
「持田さんが警察に捕まった?!」
「ちょ、声が大きいよ相田さん!」
「あ、ごめんなさい。それで何があったんですか?」
「うん・・・警察の人が言うには、ストーカー被害で元恋人に通報されたみたい」
「えぇ?!だって持田さん妊娠中ですよね?結婚されたんじゃないんですか?」
「それが妊娠もしてないし恋人自体いなかったみたい。ストーカーの被害者ってのも元恋人で、昨日その彼の会社の受付で彼に会わせて欲しいとか、彼との子がお腹の中にいるとか、会えないならここで死ぬって大騒ぎして通報されたみたいなんだけど、彼曰く別れたのが3年前でそれ以来ずっと会ってないから子供がいるなんてありえないって。彼女、退職してから毎日彼の会社に行ってお弁当届けたり、帰りをずっと待って尾行していたらしいんだ」
「妄言ですか、なんか信じられない。あの持田さんが・・・でもなんで店長が身元引受人に?」
「いや僕もびっくりしたよ!昨日たまたま休みだったんだけど知らない番号から電話が掛ってきて出てみたら警察で、彼女両親は福岡にいて友達には絶対このことを知られたくなかったみたいで元職場の上司ってことで後腐れない僕が思いついたんだろうね」
「なるほど・・・しかし店長も大変でしたね」
「最近急に立て続けに色々なことが起きるんだよ。木宮くんも急に退職しちゃった、し・・・・う、痛、イタタタた」
「え?店長?!どうしたんですか?!大丈夫ですか?!店長!店長!!」
*
何故か私が働く職場では私以外の人間に必ず不幸なことが訪れる。
どんなに平和な職場でも私が勤め出すと途端に歯車が狂い出す。
新卒で入社した会社で私と関わった上司、同僚、後輩が次々と体調を崩したり、望んでいない店舗移動で地方に飛ばされたりと不運なことが起こる。
関わった人がいなくなるとまた新たな関わりができるが、ひとり、またひとりとどんどん周りの人が不幸になってその内に姿を見せなくなる。
だんだん怖くなって急いで転職をするが転職先でも同じことが起こった。
「私、疫病神なのかもしれない」
その当時付き合っていた今の旦那に打ち明けたら「僕が養うから君は働かなくて良い」と言ってくれた。
その時、もしかしてこの人にも不幸が訪れるのではないかと怖かったがそれは杞憂だった。そのまま結婚し出産、何事もなく平穏で幸せな毎日を過ごした。
3人の子にも恵まれ子供たちは元気にすくすくと育っていった。
そのうち子供たちの習い事や学費を捻出するために、また働きに出ようと考え出した時には、その当時のことなどすっかり忘れてしまっていた。
そして仕事復帰をしてしばらくすると私が疫病神だったとゆうことをその当時の記憶と共にはっきりと思い出された。
私が家族経営の小さな美容室にパートで入社して3ヶ月が経つ頃、今まで元気だった会社の社長が原因不明の病に倒れ、そのまま亡くなり社長のお客さんで成り立っていた美容室は経営が困難になり畳まざるをえなくなった。
その時は偶然だろうと、自分に言い聞かせ次に選んだのが全国にチェーン展開しているカット専門店。歴史も長いしやたらに倒産しないだろう・・・。
そう思ったが、やはりしばらくするとドミノ倒しのように私の周りのスタッフがひとり、またひとりと消えていった。
でも私はもう転職はしない、ここで働き続けると決めた。
私はもう若くない。
人間は図太くなっていくもの。
幸いここはチェーン店、人がいなくなれば補充され、また新しい人を採用する。きっとここならしばらく働くことができる。
私と関わる人には申し訳ないが、私のために犠牲になってもらうほかない。




