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これからも2

今回も読んで頂けると嬉しいです!

 その頃、変城庁の敷地内にある庭では、補佐官の大森常吉が唇を噛み締めていた。暴動が鎮圧されたという知らせを聞いたからだ。



 常吉は、変城王――春羽を尊敬していた。だから、春羽を後継に選ばなかった紅蘭の事も、春羽を出し抜いた望月秀行の事も、恨んでいた。

 今回暴動が起きて地獄が滅茶苦茶になれば、その責任を取って秀行は辞任。上手くいけば、極楽の秩序を守れなかったとして紅蘭も極楽の最高責任者の座を追われる事になる。


 そういう効果を狙い、白虎や他の受刑者を(そそのか)して暴動を起こさせたのだが、大した被害はないまま暴動は鎮圧された。怪我をした獄卒達も、回復に向かっているようだ。



 枯山水の見える薄暗い庭で常吉が佇んでいると、不意に後ろから声を掛けられた。


「こんな所にいたのかい、常吉」


 振り返ると、そこには笑みを浮かべる変城王がいた。


「変城王。今は執務室で仕事をしているはずでは?」

「なに、お前さんに話があってな」

「話?」


 変城王は常吉の隣に立つと、庭に視線を向けたまま言葉を発した。


「今回の暴動、黒幕はお前さんだろう? 常吉」


 常吉は、目を見開いた後、平静を装って言った。


「……何故私がそんな事をするのです? 身に覚えがございません」

「ハハッ、演技が下手だねえ。……閻魔庁にある浄玻璃鏡、つい最近まで壊れていたそうだ」

「はあ……」


 何故浄玻璃鏡の話になるのだろう。


「今まで応急処置をしていたようなんだが、先程、ようやく修理に使える部品が閻魔庁に届いたそうだ。それで、エンジニアが修理してみたら、何とびっくり。浄玻璃鏡の映像を捏造した形跡があると言うじゃないか」


 変城王は、大げさに手を広げてみせた後、話を続けた。


「エンジニアが修理をして、正しい画像を映せるようにしたところ、あら不思議。菖蒲が亡者の部屋に封筒を差し込んでいると思われていた件の映像、本当に映っていたのは菖蒲じゃあなくて、お前さんだったというわけさ」


 常吉は、苦虫を嚙み潰したような表情になった。確かに、封筒を差し込んだのも、浄玻璃鏡の映像を偽造したのも常吉だ。

 地獄の秩序を乱して閻魔の責任が問われる事態に追い込みたかったし、有能な菖蒲も邪魔だったから。

 ついでに言うなら、閻魔が不正をしているとかいう噂を地獄に広めたのも常吉だ。


「……常吉、お前さん、何故そんな事をした?」


 変城王の言葉を聞いた常吉は、バッと変城王の方に向き直り、懸命に弁解した。


「変城王は、賢く、武術にも長けており、人としての器も大きい! あなたこそが閻魔になるべきだったのです! あなたが変城王などという形骸化した地位にいるのは我慢ならなかった! 望月秀行や紅蘭様を許せなかった!!」


 次の瞬間、変城王は常吉の着物の襟を掴み、柔道の一本背負いのようにして常吉の身体を地面に叩きつけた。

 苦痛に顔を歪める常吉を、変城王は冷たい瞳で見下ろす。


「勘違いするんじゃあねえ。変城王が形骸化した地位だと? 変城庁はなあ、閻魔庁の審理が適切だったか判断する重要な機関の一つだ。俺は、誇りを持ってるぜ? それになあ」


 変城王は、雲しか見えない空を見上げて言った。


「……俺は、あいつに、秀行になら、閻魔を任せてみてもいいと思ったのよ。とんでもないお人よしの、あいつにならなあ」

今回の変城王のシーン、個人的に結構気に入っています。

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