Act.9-523 ペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸臨時班派遣再始動〜赤の女帝は蠱惑に笑い、初代皇帝は矢を番え、水神の姫巫女は冒涜的に祈りを捧げる〜 scene.3
<三人称全知視点>
「魂魄の霸気《黒百合の眷属》! 《血動加速》!!」
冒涜的に絡み合う双樹が獣の如く猛り狂う。
不浄なる双樹の無数に伸びた蔦とも触手とも呼べない無数の腕が鞭の如く振り回される中、ソフィスは吸血姫化して血液を操る能力を利用することで体内の血管を走る血液を加速させ、爆発的な瞬発力を得る《血動加速》を発動――更に「俊身」と会得したばかりの刹那の神闘気を組み合わせて一気に加速したソフィスは宙空から一振りの剣を時空魔法で取り出して構える。
『吸血神姫の黒紅剣』と名付けられ、神話級に至った真紅と漆黒に彩られた剣に武装の神闘気と覇王の霸気、更には神聖属性の魔力まで付与して圓式基礎剣術を放った。
まるで熱したナイフでバターを切るように、呆気なくソフィスに迫っていた触手が切り裂かれて美しい断面を晒す。
『繧ー繝ォ繧・繧ゥ繧ゥ繧ヲ!! 繝、繝ュ繧ヲ繝悶ャ繧ウ繝ュ繧キ繧ソ繝ォ!!!!』
大凡意味が理解できない言葉とも咆哮とも取れる雄叫びと共に不浄なる双樹が再び触手を振り回す。
触手は全て怪力の神闘気、鉄壁の神闘気、武装の神闘気、求道の霸気、覇王の霸気によって強化されており、明らかに威力も耐久力も速度も桁違いな攻撃へと変貌を遂げていた。
「――ッ! 流石にソフィス嬢一人に任せておく訳にはいかないな! 邪魔にならない程度に近づいて戦力を削るぞ! カラック!!」
「無茶を言いますね、殿下。……でも、ここまで来たのに流石に何もせず観戦なんていう訳にはいきませんね。……邪神相手にどこまで通用するかは分かりませんが、とことん抗ってやりましょうかッ!!」
リオンナハトは武装闘気と覇王の霸気を、カラックは武装闘気を、それぞれ剣に乗せると触手が届くか届かないかのギリギリの場所まで近づき暴れ回る触手に斬撃を浴びせていく。
リオンナハトらしからぬ消極的な攻撃だが、触手攻撃を一撃でも浴びればリオンナハト達の命が危ういためこの場において最適な解答と言えるだろう。
リオンナハトとカラックの攻撃はほとんど不浄なる双樹にダメージを与えていない。一切強化がされていない状態の触手であれば二人の剣でも切り裂くことはできたかもしれないが、今の触手は闘気や霸気に守られて異常なほど強化されているため刃が通らないのである。
だが、二人の攻撃が全く通用していない訳ではない。武装闘気と覇王の霸気を纏った斬撃は不浄なる双樹の触手を覆う闘気や霸気を少しずつだが確実に削り取っている。
一方、ソフィスはというと邪神の化身に相応しい圧倒的な戦闘力を手に入れた触手相手にも互角以上の戦いを繰り広げていた。
流石に一撃で触手を破壊するほどには至らないものの二撃、三撃と加えて触手を破壊しており、リオンナハトやカラックと比べても明らかに不浄なる双樹に致命的なダメージを与えている。
『繧ー繝ォ繧・繧ゥ繧ゥ繧ヲ!! 繝、繝ュ繧ヲ繝悶ャ繧ウ繝ュ繧キ繧ソ繝ォ!!!!』
一方、不浄なる双樹も負けていない。更に攻撃速度を加速させ、高い密度の攻撃をソフィスに浴びせかける。
見気の未来視と対応できる身体能力と闘気や霸気がなければソフィスもここまで不浄なる双樹と渡り合うことはできなかったかもしれない。
「――陰陽陣!! カオスマター・エピゴーネン!!」
剣による戦闘を続けながらソフィスは金色に輝く光の炎と漆黒に燃える闇の炎をそれぞれ半円状に展開し、聖属性と闇属性を象徴する半円の魔法陣を形成してみせた。
魔法陣に聖属性と闇属性の魔力をストックしておくことができる大魔法の準備を整えたソフィスが満を持して放つのは暗黒物質を噴き上げる「ダークマター・エピゴーネン」と明煌物質を噴き上げる「ホーリーマター・エピゴーネン」を無理矢理融合することで混沌物質と呼ぶべきものを生成――勢いよく噴き上がらせる「カオスマター」と呼ぶべき魔法だ。
エピゴーネン――模倣と名付けられているものの完全に新たな概念の創造であり、その威力は「ダークマター・エピゴーネン」と「ホーリーマター・エピゴーネン」をそのまま浴びせるよりも遥かに高まっている。
混沌物質は神闘気と霸気でガチガチに守られている不浄なる双樹の守りを霸気無しで突き破り、不浄なる双樹にかなりの損傷を与える。
だが、それでも不浄なる双樹は動きを止めず、無数の触手を伸ばしてソフィスに一斉攻撃を仕掛けた。
「虚空属性、消滅属性付与――神聖属性による刀身の形成……」
今のソフィスの攻撃方法では触手全てを一撃で打ち砕くことはできない。
二撃、三撃と一つの触手に時間を掛けていれば触手に貫かれて命を落としてしまうことを察していたソフィスは奥の手である二つの指輪を嵌めた。
虚空属性と消滅属性――侍系四次元職の征夷侍大将軍の奥義の「虚空ヨリ降リ注グ真ナル神意ノ劒」と剣士系四次元職の剣帝の奥義の「万象無ニ還ス靈劔」から抽出した二つの属性を剣に乗せることで刀身を巨大化――触れた瞬間にあらゆるものを消滅させる巨大な大剣へと『吸血神姫の黒紅剣』を変化させた。
「万象切断の吸血大剣!!」
怪力の神闘気、鉄壁の神闘気、武装の神闘気を全身に纏わせ、刀身に求道の霸気を収束させて耐久力を上昇させ、更にその上から覇王の霸気を纏わせたソフィスは少女の身体に不釣り合いな膂力で剣を横薙ぎする。
巨大な剣は触手の闘気と霸気を容易く貫き、不浄なる双樹を真っ二つに両断した。
◆
プリムヴェールとマグノーリエが対峙したのは美しくエキゾチックな美貌を持つ黒髪の女性だった。中華の礼装のような衣装を身に纏い、黒扇でほんの少し顔を隠しつつ嫣然と微笑を浮かべるその姿は同性であっても思わず惚れてしまいそうに美しい。
だが、極めて練度の高い見気を持つプリムヴェールとマグノーリエはその本質を見抜いていた。
全長二メートル、体重は三百キロを超えそうなほどの巨大な肉の塊――それ以外に形容し難い、辛うじて女性だと思われる化け物が目の前にいた。
腕は触手となっており、畝畝と不気味な動きをしている。先端に無数の牙が生えた管状の口が五つ生え、鼻は象の如き特徴的なものである。
仮初の姿が嘘のようにその容貌は醜悪で、直視するだけでも正気度がゴリゴリと削れていきそうな見た目をしている。どんなに容姿に自信がなくても、少なくとも彼女よりはマシと安堵を覚えそうな見た目だ。
背には巨大化した黒扇が浮いており、左右に三つずつ漆黒の鎌が浮遊していた。
『――妾の本質、見抜いたようじゃな!』
「――ッ! 高い見気を持っているのか!? マグノーリエ様……ッ!? マグノーリエさん、裏の見気の拒読心を、いや、見気封殺を使うべきです!!」
「そうね……明らかにこれまで戦ってきた『這い寄る混沌の蛇』とは格が違う。私達も本気を出して挑まないといけないわ!」
圧倒的な覇王の霸気を利用して己の心を隠す、否、相手の見気を封殺する見気封殺。
相手の心を読み解く見気に長けた肥満なる女にとっては厄介極まりない相手だ。
「その鎌は魂を刈り取りしもの! 地獄よりの大鎌!!」
膨大な覇王の霸気と死の象徴であるドス黒い魔力が込められた大鎌が円を描くように空中を滑り、プリムヴェールとマグノーリエに殺到する……が。
「晩鐘の断光壁」
マグノーリエは冷静に光の分布を強制的に偏らせることで光が存在する座標を自身の前に設定し、いかなるものも消滅させる壁を生成した。
マグノーリエは光の壁に覇王の霸気を纏わせることで大鎌に込められた覇王の霸気の相殺し、光の壁で肥満なる女の鎌を全て消滅させる。
それと同時に物理攻撃上昇、物理防御上昇、魔法攻撃上昇、魔法防御上昇、状態異常無効化、自己治癒促進能力、月属性魔法威力上昇の効果がある魂魄の霸気《月虹》を発動し、膨大な武装闘気と覇王の霸気と共に細剣に月の魔力を纏わせて準備を整えていたプリムヴェールが円を描き、この中心に細剣の切先を突き刺した。
「ムーンライト・ラピッド・ファン・デ・ヴー!!」
肥満なる女は鉄壁の神闘気と武装の神闘気、更には求道の霸気まで発動して徹底的に身を固めるが、プリムヴェールの刀身に込められた覇王の霸気が肥満なる女の防御を上回る。
肥満なる女の身体の八割以上が消し飛ばされ、僅かに残った肉塊が地面に落下し、虚しい音を立てた。
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それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
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