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青き馬、凱旋門賞を見る

京都大賞典、毎日王冠が終わり夜になった。

『凱旋門賞…いよいよだな。』

ボルトは凱旋門賞を見ていた。凱旋門賞は世界最高峰とも言えるレースだ。日本からはドバイシーマクラシックで世界レコードを出したドラグーンレイトが出走している。

『レイトの野郎…中山で俺に勝ったんだから凱旋門賞で勝てよ…』

マジソンも日本の代表馬ドラグーンレイトを応援していた。その理由は去年の有馬記念でドラグーンレイトが勝ったからだ。有馬記念は皐月賞と同じ舞台…中山競馬場で行われる。そして菊花賞や春の天皇賞は京都競馬場だ。これらの共通点は全て右回りというものだ。

その為マジソンは京都競馬場ほどではないが中山競馬場も得意な地形だ。しかしドラグーンレイトは有馬記念でその先をいった。

ではドラグーンレイトも右回りが得意かと言われればそうではない。むしろ逆で東京競馬場のような左回りが得意だ。事実レコードを出しているのは左回りの舞台のみだ。

しかし凱旋門賞の舞台であるロンシャン競馬場の特徴は右回りだ。それで不安要素があるかと聞かれたらあるだろうが…右回りの舞台でもマジソンよりも上なのだ。マジソンが行くよりも優れた結果になる可能性が高い。


『だがあいつは3番人気だ…それに日本調教馬は勝てないっていうジンクスがあるからな。』

「ん?俺達は勝ったぞ?」

『武田のおっさんと糞爺は運が良かったんだろ?』

「まあな…その次の年にグリーンと同じニジンスキー産駒のラムタラっていうバケモンと戦って二敗しているからなキングジョージと凱旋門…どっちも負けて風間さんがごねまくってマッチレースをしてようやく勝てたくらいだしな。その敗北のおかげで売却額が下がって小さいところの牧場は大歓喜だったのはよく覚えているよ。」

『まあその後悲鳴になるんだよな。』

「そうだ。ラムタラ自身が精神力で走っていた上にスタミナ重視の欧州の競馬場で走った馬だ。日本の高速競馬場に必要なスピードなんかもあるはずもなく…ほとんどのラムタラ産駒が走らずに終わった。」

『サドラーズウェルズ系のオペやサムソンもラムタラ程じゃないにしても種牡馬成績はあまり良いとはいえねぇよな。もしかしたらノーザンダンサーの直系の子孫って大体がスタミナタイプになるんだろうな』

テイエムオペラオーやメイションサムソンは皐月賞と秋の天皇賞を勝っているにも関わらずその産駒達は快速スピードではなく鈍足ステイヤーの傾向が強い。特にテイエムオペラオー産駒は障害レース(障害レースは2600以上のレースが中心)で活躍する傾向がある。

「サドラーズウェルズ系はモンジューもカルシオを輩出しているし失敗じゃないんだがな…どうもスタミナ傾向が強いし、マオウも相性が良かっただけとしか思えない。」

ディープインパクト産駒はマイラー・中距離のスピードタイプの馬が多い。特に桜花賞を4年連続でディープインパクト産駒が勝ったのは印象深い。

『モンジューのスタミナにディープの末脚か…確かに相性がよかったのかもな。』

「何にせよ、このレースは日本馬の快挙にもなり得るし、二年連続無敗での欧州三冠馬(英ダービー、KGⅥ&QES、凱旋門賞を旧4歳(3歳)で制した馬)の登場、あるいは大番狂わせにもなり得る。21世紀史上最高の凱旋門賞になるかもな。」


【さあいよいよスタートです。日本のドラグーンレイトか、世界のアブソルートか、地元のスターヘヴンか…凱旋門賞スタート!】

「やらかした!!」

武田が大声を出し頭を抱えた。

【なんとドラグーンレイトが出遅れました。逃げ馬としては致命的です!】

その理由はドラグーンレイトが出遅れたからだ。逃げ馬が出遅れたらすでに負けたと言って良いくらい不利になる。特にドラグーンレイトのような超スピードで逃げる馬には致命的だ。

【ドラグーンレイトに変わってハナに立ったのはなんとアブソルートだ!これは意外だ!】

『あいつが逃げた…?!』

「いや不思議でもなんでもない。エルコンドルパサーは先行馬だが凱旋門賞を逃げの形を取った。結果はモンジューに差されたがそれでも優勝馬は二頭いたと言わしめるほど健闘できた…アブソルートの父カーソンユートピアも自在性の効く脚を持っていたから尚更平気だろう…」

『アブソルートの脚質は自在先行って訳か…だけどそれでハイペースだったら意味はなくなるぜ。スピードを維持するリセットやドラグーンレイトは別だろうがな。』

アブソルートはリセットやドラグーンレイトとは違う。出遅れで二番手になってしまったドラグーンレイトの作戦はいつものような逃げ切りの戦法を諦め、アブソルートを煽って体力を削り、差す戦法に切り替えた。これならばスピードを維持できるドラグーンレイトの方に軍配が上がる。だがこれで他の馬が勝ってしまったら間違いなくドラグーンレイト陣営はブーイングされるだろう。そう、92年の菊花賞のように…


92年菊花賞、ミホノブルボンの三冠…それも無敗の三冠がかかったレースだった。だかミホノブルボンは敗れた。ブルボンが敗れた原因は幾つかある。その中でも一番の原因と考えられているのがキョウエイボーガンという馬の存在だ。キョウエイボーガンはブルボンと同じ逃げ馬で、菊花賞でも何がこようとも逃げると宣言をし、宣言通り…逃げた。それもハイペースというおまけつきで。その結果ブルボンは別の馬に敗れてしまい、キョウエイボーガン陣営はしばらくの間ブーイングされた。


閑話休題。

ドラグーンレイトもこの作戦を実行した以上、勝つしかない。でなければキョウエイボーガンのように批判される。そう気を引き締め騎手、織田は鞭を振るう。

【さあ、直線に入りアブソルート、ドラグーンレイト、スターヘヴンの三頭が抜けた!】

『いけぇーっ!!』

【残り200m!日本が誇る龍馬か!英国の完全無欠の王か!それとも地元の愛か!】

「…っ!」

【アブソルート!!アブソルート先頭!他二頭を突き放し5馬身、6馬身、7馬身と突き放しゴールイン!二着は頭差でドラグーンレイト!三着はスターヘヴン!以下大きく離れキングダムブレイクと続きます…】

「また…か。」

武田はその事実にショックを隠しきれなかった。勝負の世界でたらればの発言はタブーとされているがそれでも武田の頭の中では考えられずにはいられなかった。

『レイトもよく頑張った方だよ。あの凱旋門賞を二着だ。日本馬としてはオルフェ以来の二年連続の連帯だ。ウィンアップとアブソルート…どっちも歴史的な馬だ。それに善戦しただけでも向こうの奴らにも記憶を残していると思うぜ。』

『確かにね〜…でもあれだけ差をつけられたら流石に記憶に残らないんじゃない?』

『その時はマジソン、お前がJCで勝てばいいさ。』

かくして凱旋門賞はアブソルートの歴史的勝利に終わった。だがこの後、三着に終わったスターヘヴン陣営はとんでもないことを発言した。


【スターヘヴンは日本のGⅠ、天皇賞秋に出走させる。】

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