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青き馬、唖然とする

【トーマ差し切った!!雷神トーマがここに参上!皐月賞3着の実績はフロックではなかった!】

NHKマイルCは弥生賞馬トーマが勝ち…


【二冠馬ガールズハートが1着でゴールイン!2着には桜花賞馬クシャナか…】

ヴィクトリアマイルは二冠牝馬ガールズハートが勝ち…


【先頭はベッドナイトルーム!桜花賞、オークスを制覇!これで残るは秋の秋華賞のみ!】

2歳女王ベッドナイトルームは牝馬二冠を制し…日本ダービー当日となった。


~馬房~

『向こうは雨か…こっちは北海道だから雨降らないのか?』

ボルトはそう呟きながらもTVを見ていた。ちなみにオークスの後、ミドルは入厩してしまいここにいない。

『ミドルがいないってのは寂しいもんだが仕方ねえか…奴も成長したってことだし。』


府中競馬場は最悪の馬場となり超重馬場のダービーとなった。

【1枠1番、1番人気、競走成績も全て1着の1尽くしのクリフジの再来…リセット!単勝オッズは1.0倍!ダントツの人気です!】


クリフジ…トキノミノルと並ぶ日本史上最強馬の候補に挙げられる馬である。

戦績は11戦11勝。勝ち鞍は日本ダービー、オークス、菊花賞である。

勝ち方がとにかく凄く連闘でしかも致命的な出遅れでダービーをレコードで制覇し、菊花賞は競馬史上唯一無二の大差勝利である。

リセットはクリフジと共通点が多い。その共通点とはまず大柄で牝馬でかつデビュー当時評価が低かったこと。次にデビューが3歳時であること…そしてもう一つがダービーの前走が大差をつけて勝利していることだ。

そのためリセットはクリフジの再来と呼ばれるのだ。


『まあそうだろうな…皐月賞での大差勝ちに加えて牝馬が無敗の牡馬二冠に挑むっていうんだ…競馬ファンでなくとも馬券は買うよな。俺でも買う。ただ気になるのは最内枠ということだな…』

ボルトは気づいていないがダービーで単勝1.0倍はディープインパクトですら成し遂げていない快挙であり支持率は80%オーバーでなければならない…つまりそれだけリセットが評価されているのだ。

ちなみに何故ボルトが最内枠を気にしたのかというと大雨の中で最内枠は泥のような状態になり、不利になるからだ。それでもなお観客が気にしないのは皮肉にもリセットの血統にあった。リセットの血統は芝無勝、ダートを数勝しかしていない父に母に至っては未出走馬。こんな血統で芝のGⅠレースで勝てと望むのは普通無理だ。だが前走勝ってしまった。しかも今回のレースは芝というよりももはやダートに近いレースであり、勝てる要素はより膨らんだ。父親はダート馬である以上泥や砂のような足を取られるようなところは得意だからだ。


【3枠6番、皐月賞2着馬トロピカルターボ!実力は2歳の時に証明済み!2歳王者の貫禄を取り戻せるか?現在2番人気…単勝オッズはなんと26倍です!これは異常です!】

『2番人気で単勝オッズが26倍だと!?見間違い…な訳ねえか…2.0倍だったらそれこそおかしい…それだけリセットの人気が異常だってことだな。』

【8枠15番、ゴールデンウィーク。前走の青葉賞の勝ちっぷりは父スペシャルウィークを彷彿させるものでした。今日もその末脚を発揮するか?現在3番人気、単勝オッズは27倍です。】

『スペシャルウィーク…間違いなくダービーや天皇賞連覇に加えJCも買勝っている名馬なんだが糞爺やサイレンスに負けたエルコンよりも弱いとされているからな…出来ることなら父を超えてもらいたいもんだ。』

ボルトの言う通り、スペシャルウィークは名馬である…しかし4歳時のJCではグリーンに負けてしまい、それどころか毎日王冠でサイレンススズカに3馬身をつけられて負けたエルコンドルパサーにも先着を許してしまったので…


アイグリーンスキー≧サイレンススズカ>エルコンドルパサー>スペシャルウィーク


と言う評価になってしまっているのだ。もちろん全ての人がこれに納得している訳ではないが一般的にはそう言われている。


【さあ各馬ゲートインが終わりました…第87回日本ダービースタート!やはり飛び出したのはリセット!リセットが先頭、ゴールデンウィークは現在8~9番手あたりについて様子を伺っています。そしてトロピカルターボは14番手…】

リセットが先頭に立つと2番手にいきなり10馬身近い差をつけ…走り続けた。

『雨でもお構いなしだな…リセットは。』

それを見てボルトは呆れた顔をした。

【1000mを通過してペースは56秒9…速すぎる!これでリセットは大丈夫なんでしょうか?!】

『雨の中で56秒だと!?いくら何でも速すぎる!!』

雨の日はタイムが出しにくい…それにも関わらずリセットは1000m56秒というふざけたペースで走っているのだ…これがどういうことかわかるだろうか?好タイムが出る晴れの日のダービーですら57秒で超ハイペースといっていいほどだ。それをタイムが出にくい雨の中で56秒を出したら…決まっている。超々ハイペースだということだ。

【リセットは飛ばしに飛ばして既に20馬身程リードを取りました。ゴールデンウィークとトロピカルターボがグイグイと上がり4、5番手あたりで直線に入りました!リセットだ!リセット先頭!2番手にはゴールデンウィークとトロピカルターボ!しかしこの差は絶望的だ!残り200mで二頭が13馬身まで縮めたがリセットだ!リセットが11馬身差をつけて先頭でゴールイン!4戦4勝!2着はトロピカルターボかゴールデンウィークか…】

『…いくら何でも無茶苦茶だぜ。雨の中で2分22秒9なんて化け物かよ。』

ボルトがそう呟くのは無理なかった。クリフジもそうだがリセットだけがゲームの世界から飛び出してきたような馬だと錯覚してしまったのだ。

『あのトロピカルターボもゴールデンウィークも時代が違えば間違いなくレジェンド級の馬になっていただろうな…』

掲示板を見ると2着と3着はハナ差だが3着と4着の差が9馬身もあったのだ。リセットという馬がいなければ…というよりも生まれた世代が違えば間違いなくボルトの言う通りになっていただろう。


~翌週~

そして武田厩舎に一頭の馬が入厩した。

『よっ!マジソン、それにミドル…』

その一頭の馬とはボルトチェンジことボルトだ。

『ボルト!ボルトじゃねえか!?久しぶりだなおい!』

マジソンが歓迎し、ボルトに挨拶をする。

『お久ぶりね。ボルト。』

ミドルは軽く会釈をして挨拶をする。

「うんうん…仲が良くて結構。仲が悪いと問題あるしな。」

『…そう言えば武田先生、今日は安田記念だろ?見なくていいのか?』

「録画してあるから大丈夫だ。…まあ俺としては来週の英ダービーが気になってしょうがないんだが…」

『アブソルートね。』

「そうだ。アブソルートは英2000ギニーを勝って未だ無敗だ…少しでも弱点を探さなきゃ勝てないしな。」

そう言って武田はマジソンの頭を軽く触った。

『…そうだな。日本の古馬代表として3歳馬達をJCでボコボコにしなきゃダメだしな。』

マジソンは気力が入り、鼻息を荒くする。

『マジソン…リセット対策はあんのか?リセットはお前とは違って圧倒的な能力でねじ伏せる馬だ…緩急ペースじゃどうしようもないぞ…』

その通り…リセットはサイレンススズカやトキノミノル同様にスピードでねじ伏せるタイプだ。スタミナで粘るマジソンからしてみれば最悪の相性だ。

「その心配はない。」

武田は何か考えがあるのか自信満々に答えた。

『おっさん…ということはリセット対策はあるのか?』

ボルトがそう言って武田を見つめる。

「JCでドラグーンレイトが出走予定だ。ドラグーンレイトとリセットが争っているところで…大外から一気に差す!そのためには圧倒的な瞬発力が必要だ。」

要するに武田はリセットとレイトの熾烈な先行を争ってペースを上げてさせて自滅した隙を見計らって差すという戦法だ。だがあまりにハイペースだと後ろが有利になってしまう。長距離ならいざ知らず、府中の2400mとなるとマジソンにとっては逃げ馬よりも差し馬の方が厄介だ。それ故に今以上の瞬発力が求められていた。

『ミドルと併せ馬か?』

ボルトはミドルの走りを一度みている。その走りはディープインパクトを思い出させる程だった…

「そうだ…ミドルの末脚はマオウを除けば同世代最速かもしれん。」

武田はリセットを調教してミドルの末脚を知っていた。

『しかしミドルはまだ幼いしハンデが必要じゃねえか?』

だがリセットと戦うにはあまりにもミドルは未熟過ぎる。老いたらわからないが今のリセットはミドルよりも遥かに強い。

「それなんだよ…あとはその調整が決まっていないんだよな。あまりハンデがあり過ぎるとミドルのためにもならないし、ハンデが少ないとマジソンにも悪い…」

武田は先ほどとは違い頭を抱えていた。

『武田先生ちょっといい?』

ミドルが声を出して武田を振り向かせた。

「ん?どうしたミドル?」

『スプリンター二頭のリレー方式なら仮想リセットにならない?』

かつて「全盛期のサイレンススズカを破るためにはどうするか?」という疑問が上がった。それには「短距離の馬を用意してペースを上げるしかないが間違いなくその馬が敗北するので実質的には無理。」と1人の騎手が答えた。つまり伝説の逃げ馬サイレンススズカと言えどもマイル以下なら普通のペースになってしまうということだ。リセットも同じように短距離馬二頭が相手なら互角以上の力がある。仮想リセットとしては間違いなく良いだろう。

「確かに…その手があったか!諏訪!ボルトに案内をしてやれ!」

武田は納得し、頷くと厩務員の諏訪にボルトを任せて何処かに言ってしまった。

「あ、わかりました!」

諏訪は武田とは逆にボルトに近づき、手綱を掴んだ。

「さあボルト、行くぞ。」

諏訪はそう言ってゆっくりと歩いてボルトに案内をし始めた。

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