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青き馬、取材を受ける

~風間牧場~

「なるほど…梅宮さん。それでうちのボルトを見に来たってわけですか?」

牧場長がそういって女性記者の梅宮に尋ねる。

「ええ…柴又騎手がベネチアライトの主戦騎手の座を捨てようとするまでの気迫…それだけボルトチェンジが期待されていることでしょう?」

梅宮は牧場長にそう言って騎手のボルトの評判を話す…

「う~ん…ただボルトを撮る時は注意してくださいよ。結構イタズラ好きですから。」

牧場長はカメラに注意するように言っておいた…普通カメラは慣れていない動物に向けると怯えたりするのだがボルトは元々人間なのでその辺は平気だったが知っているだけにイタズラもする…

「わかりました。カメラは気をつけます。」

「何はともあれ、行きましょう…」

そう言って牧場長は梅宮を案内した。


一方ボルトは坂路を何度も何度も繰り返し駆け上がっていた。歴戦の古馬達がボルトに粘ろうとするが…無駄だった。

『これじゃ練習にもなりゃしねぇ…』

良い加減そう思うボルトだったが…

『いかんいかん…またサボり魔が出てしまったな。』

ビデオで見たマオウの走りやグリーンに負けた思いを思い出してとにかく走り続けた。


「…もしかして今めちゃくちゃなスピードで走っているのがボルトですか?」

「ええ…あいつは生まれた頃から走るのが好きでしかも身体の鍛え方を理解しているのか考えながら走っているんですよ…」

「自分の身体を鍛えるって具体的にはどんな鍛え方なんですか?」

「見ての通りあんな風に走ったりするのは当然…時には馬房で柔軟性を高めるためにストレッチを行ったりしていますよ。」

「…本当に馬なんですか?」

「あいつは現代の馬なんかじゃない…未来からやってきた馬ですよ。あと20年遅く産まれてもGⅠを勝てるほどの実力はあります。」


競走馬は後の時代になるほど強くなっていく…例えば伝説の二冠馬トキノミノルが全盛期の頃の現役馬として現れても今年の皐月賞馬であるリセットどころかマグレで勝った弥生賞馬トーマにも及ばない。

ただしそれはタイムのみを標準としてみるとそうなるので必ずしも勝つとは限らないがそれでもトキノミノル世代よりも今の3歳世代の方が全体的に上である。それだけ時間というものは競走馬を進化させるものだ。


では何故トキノミノルが日本史上最強馬の候補に選ばれるかと言われると、成績やレコードがとんでもない記録だからだ。10戦10勝、史上初となる無敗での皐月賞、ダービーの二冠。そして同世代がとんでもなくハイレベルだということ…これらの要素が重なってトキノミノルは最強馬だと言われる。偏差値97以上のイツセイ、ミツハタらの集団の中に偏差値120オーバーのトキノミノルという馬がいた…それだけのことだ。偏差値でいうなら間違いなくトキノミノルはダントツでトップだろう。


話を戻そう…牧場長はトキノミノルですら勝てない時代の変化にボルトは勝てるといったのだ。それがどういう意味か理解できるだろうか?


「なるほど…牧場関係者も期待が高いってことですか。」

梅宮は軽く口にしているがボルトに牧場長はかなり期待している。

「ええ…ただね。暴走癖が強くてそれがレースになって悪い方向に繋がる可能性もあります。」

ボルトにとっては特訓だが側からみれば暴走癖だと思われていた…

「暴走癖って…確かにそうですけどレースにつなげればプラスになりません?」

呆れながらもそう言ってボルトを褒める。

「だから武田先生はヤネに橘さんを任せたと思いますよ。橘さんは折り合いつきやすいですし…」

折り合いは得意でないと勝てる競馬も勝てなくなる…逆に言えば折り合いがつけば勝ちやすくなるという事なので橘を始めとしたトップジョッキーにとっては折り合いは必要な技術でもある。

「なるほど…ではボルトのアップの写真を撮りたいので呼んで貰えないでしょうか?」

「いいですよ…ただし先ほども注意しましたがイタズラ好きなんで注意してくださいね。」

そう言って牧場長はボルトを呼んだ。


『あん?あれは牧場長と…お客さんか?』

ボルトは呼ばれたことに気づいてそちらに向くと梅宮を客だと思った。


「これがボルトチェンジですか…やはりアイグリーンスキー産駒というだけあって馬格が大きいですね。」

「この時点でボルトは確か580kgくらいありますよ。」

「そんな馬格で坂路をものともしないなんて…パワーは桁違いでしょうね。」

「ええ…ボルトのパワーは当歳から異常と言えるほど強いものでした。三人がかりでも逆に引っ張られましたから…」

そしてボルトは色々あったが取材を受け終わると…

「それじゃ写真を一枚撮ります。」

梅宮がそう言ってさりげなく無音シャッターでボルトの写真を撮った。

『そういう手もあったか…まあどちらにせよ、今回はしなかったのに…もったいね~…』

ボルトは取材を受けている間に友好度が上がり、からかうことは止めようとしていた。

『まあ自業自得か…いやこの場合は狼と少年か?…どっちでもいいか。』

ボルトは馬房に戻っていった。


『よっ、ミドル…』

ボルトはそう言ってミドルに挨拶するとミドルが少し興奮していた。

『ボルト、そういえば聞いた!?イギリスで物凄い馬が現れたって噂!!』

ミドルは興奮しながらボルトに尋ねた。

『イギリスって…来年JCの舞台とかで俺達が直接戦うと決まった訳じゃないんだし、気が早いと思うぜ…』

しかし、ボルトは知っていた。欧州ではそういう馬に限って早めに引退してしまい、戦えなくなるということを…

『たまたまここに来た武田先生から聞いたんだけどローテーションの中に今年の凱旋門賞やJCも含まれているんだって!』


凱旋門賞…それは数々の日本調教馬が挑んだがそれを優勝したのはアイグリーンスキーただ一頭のみで、また凱旋門賞勝ち鞍の馬がJCを勝った例はグリーンとマオウの母カルシオのみである。それだけ凱旋門賞とJCを勝つのは難しいのだ。


『あのおっさんいつ来たんだ?…まあいい。凱旋門賞やJCを出るとなればそいつはマジソンやレイト達日本勢と戦うことになるのか…』

ドラグーンレイトはドバイの芝で勝ったことから関係者は海外適正ありと踏まえ、キングジョージ、凱旋門賞の2レースを含んだローテーションを組んでおり…

一方マジソンティーケイは古馬中長距離の路線を歩み、これから宝塚記念、天皇賞秋、JC、有馬記念のローテーションを組んでいる。

どちらにしても日本勢には強敵が二頭いることには変わりないのでどちらかはその馬が負けるだろうとボルトは推測した。

『名前はアブソルートだって!確か去年無敗のまま引退したウィンアップの全弟らしいよ!』

それを聞いてボルトは少し見る目を変えた。

『アブソルート…英語で絶対って意味か…血統も良いし、リセットとは真逆でよほど期待されているみたいだな。』

ボルトはそう言って今度の三冠レースの一つ…日本ダービーのトライアルレースの一つ、青葉賞の結果を確認した。スペシャルウィーク産駒の栗毛馬、ゴールデンウィークが優勝し、ダービーの有力候補となっていた。

『まさにゴールデンウィークだな…来週からは。』

ボルトはこれから起こることに期待して面白そうに新聞を眺めた。

次の更新は今日の18時に行います。また5話投稿します。

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