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青き馬の主戦騎手

~風間牧場~

「それじゃ次の騎手」

あれから数分、騎手達はボルトに乗ったがボルトの感想はイマイチだった…

『ダメだ…しっくりこない。』

とにかく騎手がダメダメだった…ボルトはかつて実力を見せる為にすでに騎手を引退している調教師の武田を乗せたがその方がまだマシだった…


しかし武田は元名騎手として知られている上に、引退してからまだそんなに年月は立っていないためブランクも少ない。調教師としての能力はまだまだ未熟だが騎手としての能力ならトップジョッキーとほぼ変わらない為騎手達は運が悪かったとしか言いようがない…


『全くどいつもこいつも…おっさんのようにいい乗り方を知らねえのか?』

「全くどいつもこいつも…ボルトにとっていい乗り方を知らねえのか?」

二人(正確には一頭と一人)がそう言うとこの場にいた大半の騎手は武田を睨む…

「それじゃ武田先生…貴方は、ボルトチェンジに限らず全ての馬を満足させられる乗り方を知っているんですか!?」

下位リーディングの騎手の一人がキレると皆が揃って

「そうだそうだ!」

「グリーンの元騎手だからって調子のんな!」

などのヤジが飛ぶ…これらは皆下位か中の下のリーディングの騎手達の言葉だ。

「だったらこいつの声を聞いてみろ。俺はこいつの言いたかったことを代弁したにしか過ぎねえ…」

「な、何だと!?」

そう言って一人の騎手が武田に掴みかかるが…武田はロジユニヴァースの復活劇並みに鮮やかにその騎手を投げ飛ばした。

「わかんねえ奴らだな。馬の気持ちも理解しねえで馬の力を引き出せると思っているのか?」

「馬はペットじゃない!馬の気持ちなんぞわからずとも勝てる!」

「馬ってのは生き物だ…当然怯えもするし、緊張もする…その結果入れ込んだりして力が出せなくなる。騎手ってのはレース本番での不安要素を取り除くからいるんだ。てめえらはそんなことも理解できねえから上位リーディングにも入れねえんだろうが!!」

「う、うるさい!」


『見苦しいもんだな…』

ボルトがそう呟くと一人の騎手が口を開いた。

「見苦しいもんだな…」

全員がその言葉に反応する。上位リーディングの騎手は全員それに賛同して、それ以外の騎手は睨みつけ、武田とボルトは驚いた目で見る。

「この馬が見苦しいって言ったんだよ。俺も半分そう思っていたがまさかここまでシンクロするとは思わなかった。」

「橘…お前って奴はそこまで成長したのか?」

「ええ…お陰様で。」

ボルトのセリフをそっくりそのまま同じセリフで言ったのは橘銀治郎という騎手で上位リーディングにいる騎手だった。

「よし、橘。お前ボルトに乗れ。」

武田はそう言って橘をボルトに乗せた。


『おっ?今までの騎手とは違うな?』

ボルトは今までの騎手とは段違いに橘の乗り方がうまいことを実感した。

「なるべくお前に限らずとも馬の力を引き出すのが俺の仕事だからな。」

『あいつらが下手すぎただけか?』

「かもな…それじゃ1600m走るか!」

『了解!』

そして橘を乗せてボルトは走り出した。


「なあ、ボルト…マオウについてはどう思う?」

橘がいきなりそんなことを言い出した。

『魔王?フィクションの話か?』

「違う違う…わかりやすく言えば今話題のカルシオ18のことだ。《馬王》とベートーベン作曲の《魔王》をかけてマオウって名付けられたらしい…」

『なるほどな…しかもそんな名前だと珍名として人気を集められる。考えたな。』

「なんでも服部さんはカルシオの名前の由来となった世界一のピアニスト、カール・C・オールディーその人とともにカルシオ18の名前を考えてつけたらしい。」

『凄えなそりゃ…にしても疑問に思わないのか?』

「何が?」

『俺が歴戦の古馬並みのペースで走っていることについてだ。』

「ん?そうか?お前ならペースを自在に作れると思ってな。」

『いや…そこまで見抜くのはあんたが初めてだ。武田のおっさんもそこまでは見抜けなかった。』

「そりゃ光栄だ!」

そしてボルトは走り終え武田のところへ駆け寄った。


「感想は?」

『もう主戦騎手は橘で文句は言えないな。』

「ボルトの主戦騎手になれればぜひ乗らせて下さい!」

「決まったな…」


「「ちょっと待って下さい!」」

二人の上位リーディング騎手が口を挟んだ。

「ん?お前達はクラシックの本命の馬に騎乗する予定だろう?ボルトを乗せるにはちょっとな…」

「確かにベネチアライトに騎乗する予定ですが…マオウに勝つにはボルトの力が必要なんです!だから僕を主戦騎手にお願いします!」

この騎手はかつてマオウにボコボコにされたベネチアライトの騎手だった。マオウに勝つにはボルトしかいないと感じており、それに乗りたがるのは当然だった。


「僕は二歳女王ベッドナイトルームに騎乗しますが牝馬かマイル路線しかローテンションを組んでいませんのでどうか僕をボルトの主戦騎手にして下さい!」

二歳女王がクラシックあるいは古馬路線を勝つことは珍しくなくなってきている…ウオッカにしてもブエナビスタにしてもそうだ。この二頭は阪神JFを勝っている。二歳女王の騎乗権捨ててまでボルトに乗りたがるのはボルトが異常な強さを持つと確信していたからだ。


「橘お前は?」

「俺は今年引退するラストダンジョンを境目にクラシック路線の縁はなくなりますね。強い馬は短距離やマイル路線、そしてダート路線に偏っています。ですからボルトの主戦騎手になれたらクラシックはボルトを最優先に考えることができます。」

「そういうことだ。橘で決まりだ…」

「「…わかりました…」」

二人を初め、その他の騎手もその場を立ち去った。


「さて…カルシオ18ことマオウについてだが。どう思う?」

武田がボルトと橘にマオウについて聞いた。

「ラストダンジョンをめちゃくちゃにパワーアップしたような感じです。逃げて勝つしかありません。」

『マオウの対抗策が必要だな…』

「その通りだ…だが単純に逃げるだけじゃ勝てない。馬体を併せ、あの豪脚を封じるしかない…カルシオもディープも馬体を併せると弱くなるからな…」

『あの馬鹿げた末脚は封じたとしても俺よりも速いはずからそれをどうにかするかが鍵だな…』

その後、一頭と二人はマオウの対策法を夜まで考えた。

取り敢えず今日の投稿はおしまいです。明日また10話くらい投稿して明後日ハーメルンと同じ話数まで進みます。


次回更新は0時ではなく午前6時に5話程投稿します。

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