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第21話

「やめてください。私の名前はティアです。」

 

 ルーカスとセレスって言うのはティアの父と母の事だろうか?

 まぁ、忘れ形見と言っていたしそれ以外には考えられないが…

 

「ふぅん、どうやら持ちなおしたみたいだな。」

「おかげさまで」

 

 やはりこの人もティアの事を心配していたのだろう

 この人も良い人なんだろうな…

 

「そう言えば、ダグラスの姿が見えんぞ?」

「馬車で待っています。どうやら馬車がダメな様だったので休憩させています。」

「いくら儂の元とは言え護衛も無しでは危険だろう?自分の立場が分からないようでもあるまいし」

 

 護衛ならここに居るんですけどね?

 まぁ、今まではダグラスが来ていたのだから仕方のない話ではある。

 

「護衛ならここにいますよ。」

「その小僧がか?」

 

 我慢だ…特に意味はないんだ。

 それにこれくらいのおっさんからすれば小僧と言われても仕方がない…

 そうやって自分を落ち着かせる。

 

「むしろ過剰な戦力なのでここまで通されたことに驚きです。」

「ほぅ…随分とその小僧を買っているようだな?しかし、その言葉…侮辱ととられてもおかしくはないぞ?」

 

 一触即発の状況…周囲に居る兵士たちが鞘に手を当てるのが分かる…

 これが殺気というものか…

 やっぱりこうなるのか

 迷っている暇はない…ステラの力を借りよう

 

(不安、悲しみ、恐怖…人を切る上で躊躇いを引き起こすありとあらゆる感情を…)

(いくわよ…)

 

 その声からは心なしか悲しみを感じた…

 しかし、無理もないかもしれない今から俺がする事はステラを利用し自分の心を殺すようなものなのだから

 ステラからすればあまり心地の良いものでは無いだろう…

 だけど俺は弱いから…ゴメン…

 

「どうやらそんじょそこらの子供とは違うようだな…」

 

 そう言って腰の鞘から剣を抜こうとするのを見たティアがそれに待ったを掛ける

 

「戯れはやめてください。これ以上、私の大切な仲間を虐めるようであれば私も加わりますよ。」

「まぁ、待てよ。そうなったら遊びじゃすまなくなる。」

 

 そう言って剣から手を離す。

 合わせるように周りの兵士も剣から手を離すのを見た時に身体からステラからの供給が止まるのが分かる。

 どうやら俺の意を汲んでくれたようだ。

 

「悪いな小僧。試させてもらった。」

 

 おいおい、完全にあれは殺す気だったぞ?

 しかし、この言葉から嘘だったとは考えにくい…

 

「思っている通り本気で俺はお前たちを殺す気だった。そうじゃないと本当のお前が分かりそうに無かったからな」

 

 そうだったのか…

 まぁ、本気じゃなければステラに頼んだりはしなかっただろうが

 

「だが、お前が見えない。そして俺が本気で殺気を向けた時、完全に分からなくなった。気味が悪いくらいにな?」

 

 心外だな…俺はそんなに気味が悪いか?

 しかも、見えないって…どういうことだろうか?

 

「だから、直接聞く。お前はあの瞬間、何をした?」

「心構えの問題です。特に何もしていません。」

 

 悪魔との契約なんて言えねぇ~

 絶対斬りかかられるよそんなこと言っちゃえば…

 ここは嘘つくしか無いじゃん、心構えってのも無いわけじゃないし…

 感情が抜け落ちたのを心構えと呼ぶかは怪しいが…

 

「……話す気は無いか…まぁいいティアが決めた事だ。それに色々お前が噛んでいるみたいだしな?」

「どういうことでしょうか?」

 

 噛んでいる?なんのことだ?

 

「教えてやる。ティアは今では想像できない程に心をやられてた。それに俺の元に街に来て一日目に来るなんて一回も無かった。帰る知らせと来たという知らせを同時にしてくる程にな?」

「つまり?」

「何か大切な用事があるからそれを邪魔されたくない…とかな?」

 

 まぁ、色々と邪魔をされたくない事があるのは確かだしな…

 ガルムの競売とかティアの仕事とか…

 他にも心をやられてたのを持ちなおしたのはティア自身の力だし…

 俺と何の関係が…

 

「それ以上、余計な事をユウに吹き込むのは許しませんよ?」

「おいおい、怖い顔すんなって大切なユウに怖がられるぞ?」

「ユウ…少し外の馬車で待っていてもらえますか?」

 

 有無を言わさない声音でそう言うティア…

 まぁ、従わない理由も無いし大人しく馬車に戻るか

 

「分かりました。」

 

 一応は他の貴族の前なので敬語を使い

 その後、馬車のある場所にまで戻った。

 

 

 

 

 

 

 

「ティア、随分とあの小僧に入れ込んでいるみたいだな?」

 

 ユウの部屋のいなくなった部屋の中ではまだ話を続けられていた。

 そこには、先ほどのような緊迫した雰囲気はなく、言うなれば気心の知れた者同士の会話と言う感じの雰囲気だった。

 

「掛け替えのない仲間である事は間違いないです。」

「ほぅ、つい最近出会った者に対する呼び方では無いな」

 

 ティアは既にユウの事を色々と手紙で知らせている

 あの戦いの事も含めて。

 

普通(・・)であればです。ユウは特別です。」

「まぁ、分からなくもない。奴は…なんというか大きな、そして中身の見えない器を感じた。」

 

 この男にしては珍しくなんとも曖昧な事を言う

 今までははっきりとした表現をしていてこんな曖昧な表現をする事は無かった。

 

「曖昧ですね。」

「手厳しいな、だが認めよう。俺はアイツが怖い」

 

 怖い…ですか。

 また違った意見が聞けそうですね。

 

「どうしてですか?」

「知性がある生き物には良くも悪くも欲望があるはずだ。少なくとも俺が見てきた奴らは全てそれに当てはまる。支配したい、出世したい、金が欲しいとかな?お前なら復讐か」

 

 この男は人を見極めるのがうまい。

 ここの兵士たちがそれを裏付ける証拠だ。

 現に私の欲望である復讐すらもこの男は把握している。

 

「だけどそれがアイツからは感じられない…そしてアイツは俺が殺気を向けた時、とんでもない魔力を放ちだしやがった。しかも欲望だけでなくあの時、アイツの目からは感情が消えた。どんな殺人鬼でも殺しの時には感情が宿るもんだ。それこそプロの殺し屋でもほとんど宿る。」

 

 確かにあの時、私が感じた魔力は凄まじい物だった。

 そうあの時、私が止めたのはこの男がユウに殺される(・・・・)と感じたから…

 しかし、感情については気付かなかったと言うより死角で見えなかった。

 

「底の見えない実力に中身の見えない器…安定した生活と家庭を持った俺は随分と臆病になったようだ。」

「前のあなたならむしろ喜んで剣を交えたでしょうに、成長したのですね。」

 

 勇敢なとして名を馳せていたというこの男は後先考えない事で有名だった。

 しかし、家族がそれを変えたようだ。

 それは成長と呼ばずしてなんと言おうか?

 

「お前に言われたかねぇよ、いい加減お前も復讐に執着するのはやめたらどうだ?」

「その答えは分かっているでしょう?」

 

 この話をしたのは一回ではない。

 何度も聞かれ何度も答えた。

 私はシンフィールド家を無茶苦茶にし父と母の死を穢した者を許さない

 全ての者と言わずまでもベルナンド家だけは許さない

 

「だが復讐なんて忘れてユウって小僧と幸せにやって行った方がルーカスとセレスもきっと喜ぶぞ?」

「な、なんでそこでユウを出すんですか!?」

 

 そ、そんな突然何を言っているのですか!?この男は!

 ユウとし、しあわせにだなんて…

 

「大方、急いでここに来たのもデートの予定が入ったからとかそんな感じだろ」

「あれはデートじゃありません!」

「ふぅん?じゃあ、あれって何だ?」

「!?」

 

 失言だった。

 ユウの事になると冷静を欠いてしまう…

 この癖は直さないと。

 

「がはは!氷の戦女神(ワルキューレ)も色恋沙汰では形無しか?」

「なんですかその二つ名は!氷なんて使いませんよ!もう帰ります!待たせているので!」

 

 そう言って足早に部屋を出ようとした。

 こういう時は早急に去るに限ります。

 しかし、それは止められる。

 

「ちょっと待て、最後に一つだけ警告する事がある。」

 

 さっきとは打って変わり真剣な声音で止めてくる

 仕方なくその場で止まり声に耳を傾ける。

 

「聖教会がお前の所に目をつけてる。気をつけな」

 

 なんで聖教会が?

 もしかして、あの神父…

 ユウについて報告したのか?

 まぁいい、それはじっくり屋敷に戻ってから調べるとしましょう…

 

「警告助かります。では」

 

 その言葉を残しその場を去った。

 

「………あそこまで変わっているとはな」

 

 ティアが去った部屋の中でそう独り呟く

 頭に浮かんでいたのはユウと言う少年だった。

 

「さて、お前が周りに与えるのは希望か?それとも絶望か?」

 

 

 

 

 

 

 

 馬車でダグラスの面倒をサラさんと見ているとティアが馬車に戻ってくるのが見える。

 どうやら、話は穏便に済んだようだ。

 

「おい、ダグラスのおっさん。ティアが帰ってきたぞ!」

「お、おい…少し待ってくれ…まだ馬車はダメだ!」

 

 残念ながら休憩は終わりだ。

 今からはまた馬車での移動が始まる。

 しかしまだ渋っているダグラスを見かねたサラさんが追い打ちを掛けていく

 

「まさか、ティア様を歩かせるつもりですか?」

「い、いや…そういう訳じゃねぇって、そうだ!俺は徒歩で行くから…」

 

 流石に往生際が悪いダグラス。

 自分の立場を分かっていないのか?

 なんで部隊を仕切っている奴が一人徒歩なんだよ。

 

「却下です。この程度慣れてください。」

「そんな殺生な…」

 

 そんな絶望的な声がダグラスから漏れる

 まぁ、この程度なら仕返ししても問題ないよな?

 

「全く、グリゴレウスにも困ったものです。」

 

 そう言いながら溜息を吐くティア

 どうやらあの領主の名前はグリゴレウスと言うらしい

 長いな…

 

「お嬢!コイツらが…」

 

 どうやらまだ諦めていなかったダグラスがティアに最後の抵抗をしようとしている。

 しかし、それは失敗に終わる。

 

「出発です。早急に屋敷に戻りましょう。」

 

 聞き届けられる事すらなかった故に

 そのままティアも馬車に乗り込み、馬車はこの街の別荘へと走り出す。

 ちなみにダグラスは他の兵士たちに無理やり馬車の中に放り込まれていた。

 

「ユウ、あの男の言っていた事は気にしないでください。決してユウを嫌いだとかそう言う意味は無いのです。」

 

 あぁ、別にそこまで気にしては無かったし

「見えない…分からない…気味が悪い…」

 もう、何度も何度も何度も聞いた事だ…慣れたよ…

 

「大丈夫だよ?気にしてないから」

 

 そう普通にきわめて平静に答えた。

 しかし、ティアは俺の顔を見ると見るに堪えない物を見たかの様に驚き、そして言葉を詰まらせた。

 

「っ!?…………そうですか…」

 

 どうしたのだろうか?

 そう思いながら俺は外を眺めた。

5日おきに更新予定

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