第10話 廃墟の奥層への第一歩
―― 学校の朝、探索部室 ――
朝の探索部室は、いつもより少し活気づいていた。
高橋先生が大きな地図をテーブルに広げ、4人を前にしてニヤリと笑った。
「よし、みんな! 廃墟ダンジョンの奥層――Dランクエリアだ。ここまで来たら、完全攻略を目指そう!
今まで以上に連携を磨いて、ボスまで一気に抜くぞ!」
花が目を輝かせて拳を握った。
「やったー! みんなで奥層クリアだね! 凛さん、準備OK?」
凛が静かに頷き、解析の眼を少し光らせた。
「…はい。弱点解析は任せてください」
剛が盾を肩に担いで胸を叩いた。
「兄貴! 俺が前衛張るから、絶対に守ってみせるぜ!」
俺はみんなの顔を見て、自然と笑みがこぼれた。
「うん、今日もみんなで頑張ろう。奥層、絶対にクリアする!」
先生が地図を指差しながらアドバイスをくれた。
「奥層は敵の種類が増える。スライムは強化型、ゴブリンもアーチャーが混じるぞ。
油断するなよ!」
4人で装備を確認し、気合いを入れて部室を出た。
―― 放課後、廃墟ダンジョン入口 ――
放課後、いつもの廃墟ゲートをくぐった。
今までは1~2階層で止まっていたが、今日は階段をさらに下りて奥層へ。
空気が重く、壁に青い苔が生え、薄暗い照明が不気味に揺れている。
「兄貴、ここから本格的だな!」
剛が盾を構えて先頭に立つ。
花が軽やかステップで周囲を警戒し、凛が解析の眼を起動させた。
「前方に敵反応。強化スライム3体+ゴブリンアーチャー2体です」
俺は深く息を吸って指揮の鼓動を発動。
「剛、正面で引きつけて! 花は右から回り込んで流星剣! 凛、弱点共有を! 俺は援護と全体指示!」
戦闘開始。
強化スライムが酸性の体液を飛ばしてくる。
剛が鉄壁の盾で受け止め、突進の咆哮で敵を引きつけた。
「うおおお! 来いよ!」
花が素早く横に回り込み、流星剣を連続で放つ。
青い軌跡がスライムを切り裂く。
凛の声が冷静に響いた。
「スライムの弱点は核部分。ゴブリンアーチャーは頭部です」
俺は石を拾って投げ、回避しながら指示を飛ばす。
「花、ゴブリンアーチャーを優先! 剛、耐えて! 凛、癒しの光を剛に!」
息が上がる。汗が額を伝う。腕が重くなる。
でも、努力の結晶が体の中で全力回転した。
「まだ……いける……!」
長時間動き続け、集中力を保ち続ける。
4人の連携が、初めての奥層で完璧にハマった。
スライムとゴブリンが次々と倒れていく。
【経験値獲得】
【レベルが10に上昇しました】
戦闘終了後、みんなで息を整えた。
花が笑顔で言った。
「すごい! 奥層なのにこんなにスムーズ!」
剛がガッツポーズ。
「兄貴の指揮が神だぜ!」
凛が小さく微笑んだ。
「…みんなの動きが、完璧でした」
―― 廃墟ダンジョン奥層中盤、午後 ――
さらに奥へ進むと、突然凛の足が止まった。
彼女の目が虚ろになり、手が震え始めた。
「…あ……」
過去の記憶がよみがえり、胸が締めつけられる。
大切な人をダンジョンで失った、あの日の光景。
ゴブリンの矢が凛に向かって飛んできた。
「凛さん!」
俺は即座に体を滑り込ませて彼女を庇った。
矢がかすり、肩に軽い傷が走る。
花が叫んだ。
「凛さん、大丈夫!?」
剛が盾を構えて前に出る。
「俺が守る! みんな、凛ちゃんを!」
凛が震える声で呟いた。
「…ごめん、私のせいで……」
俺は傷を押さえながら、優しく言った。
「大丈夫だよ。みんなでいるんだから、一人で抱えなくていい」
凛の目から涙が一筋落ちた。
「…ありがとう」
その日の探索はそこで切り上げた。
出口に向かう道中、凛が小さく呟いた。
「みんなと一緒なら……もう少し、頑張れそう」
―― 夜、自宅リビング ――
家に帰り、部屋でステータス画面を開いた。
【努力の結晶 Lv2.1】
・パーティー共有効果:微増(1.25倍)
俺は拳を握った。
「奥層をクリアして、みんなを強くしたい」
弟のゆうたがドアを叩いて入ってきた。
「兄ちゃん、今日もダンジョン行ったの? 凛おねえちゃんも一緒?」
俺は笑って頷いた。
「ああ。みんなで最強パーティー目指してるよ」
ゆうたの「兄ちゃんかっこいい!」という言葉が、俺の背中を押した。
奥層の奥は、まだ見ぬ試練が待っている。
でも、この4人なら、絶対に乗り越えられる。




