第11話 トラウマの影と、4人の守り合い
―― 学校の朝、教室 ――
朝の教室はいつも通り賑やかだったが、俺の視線は自然と窓際の席に座る凛に向かっていた。
昨日、奥層でトラウマがフラッシュバックして動けなくなった凛。
彼女は今日も静かに本を読んでいるように見えたが、肩が少し固く、目が時々遠くをさまよっている。
花が俺の隣に座って小声で言った。
「ケンタくん、凛さん……昨日から元気ないよね。
今日の放課後、みんなで支えようよ」
剛が後ろの席から身を乗り出して頷いた。
「そうだな! 俺が全力で守るから、凛ちゃん安心しろって伝えておくぜ!」
俺は小さく頷いた。
「うん。今日は絶対に凛さんを一人にさせない」
ホームルームのチャイムが鳴り、授業が始まった。
―― 昼休み、学校屋上 ――
昼休み、花が凛を誘って屋上に上がった。
二人でお弁当を広げ、花が明るく声を掛ける。
「凛さん、お弁当一緒に食べよ! 私のおかず、ちょっと多めに作ってきたんだ」
凛は少し驚いた顔をしたが、静かに座って弁当箱を開いた。
「…ありがとう、花さん」
花が優しく微笑んだ。
「凛さん、最近笑顔が増えたね。
でも、昨日みたいに無理しちゃダメだよ。
私たち、仲間なんだから」
凛は箸を止めて、少し目を伏せた。
「…昔、仲間を失ってから、一人でしかいられなくて。
みんなに迷惑をかけるのが怖い」
花が凛の手をそっと握った。
「迷惑なんかじゃないよ。
凛さんがいてくれるから、私たちも強くなれるんだ。
これからも、一緒にいようね」
凛の目が少し潤み、初めて小さな笑みが浮かんだ。
「…うん。ありがとう」
―― 放課後、廃墟ダンジョン奥層入口 ――
放課後、4人で再び廃墟ダンジョンの奥層へ向かった。
凛が少し緊張した顔で言った。
「…今日も、みんなを頼りにします」
俺は笑って頷いた。
「当たり前だよ。みんなで守り合うんだ」
奥層中盤に到着すると、すぐに敵の気配がした。
中ボス級のアーチャーゴブリンリーダー+大量のゴブリン群。
リーダーが弓を引き、矢の雨を降らせてくる。
「みんな、連携!」
俺が声を張った。
剛が鉄壁の盾を構えて前に出る。
「うおおお! 俺が全部受け止める!」
花が軽やかステップで横に回り込み、流星剣を連発。
凛が解析の眼を最大限に発動。
「リーダーの弱点は右肩の関節! ゴブリン群は足元を狙って!」
俺は指揮の鼓動を全力で展開し、みんなの動きを強化。
「花、リーダー優先! 剛、中央を耐えて! 凛、回復をタイミングよく!」
戦闘が激しくなる。
ゴブリンの矢が飛び交い、地面が揺れる。
凛が再びトラウマの影に襲われ、体が一瞬硬直した。
でも、彼女は歯を食いしばって耐えようとする。
「…みんなを、守らなきゃ……」
その瞬間、敵のリーダーが強力な矢を、凛に向かって飛んできた。
凛の硬直に気づいた俺の体が、無意識に動いた。
「凛さん!」
俺は全力で駆けつけ、体を盾にして凛を庇った。
矢が俺の肩を貫通し、激痛が走る。
HPが一気に減る。
花が叫んだ。
「ケンタくん!」
剛が突進の咆哮でリーダーを引きつけ、盾で矢を弾く。
「兄貴! 俺がカバーする!」
凛が震える手で癒しの光を俺に降らせた。
「…ケンタさん……ごめん……」
俺は痛みを堪えて笑った。
「大丈夫だ。みんながいるから、俺は平気だよ」
その言葉で凛の目が焦点を取り戻した。
彼女は深呼吸をして、解析の眼を再起動。
「…今度は、私が守る」
凛が影の守護を展開し、俺たち全員にバリアを張った。
花の剣がリーダーの右肩を切り裂き、剛の盾が最後の突進を決める。
俺は最後の力を振り絞って指揮の鼓動を最大に発動。
「みんな、今だ!」
リーダーが膝をつき、ゴブリン群が一掃された。
【経験値獲得】
【レベルが11に上昇しました】
戦闘終了。
―― 戦闘後、ダンジョン休憩エリア ――
休憩エリアのベンチに座った凛が、涙をこらえながら言った。
「…ありがとう。みんながいてくれて、本当によかった」
花が凛を抱きしめた。
「これからもずっと一緒に! 一人で抱えなくていいんだよ」
剛が照れくさそうに頭を掻いた。
「凛ちゃん、俺が絶対守るからな! これからはもっと前衛張ってやるぜ!」
俺は肩の傷を押さえながら、みんなに微笑んだ。
「俺も、みんなを守るために強くなる。
これからも、よろしく」
凛が初めてはっきりとした声で言った。
「…うん。私も、みんなと一緒に強くなる」
4人で手を重ね、固く握り合った。
トラウマの影は、まだ完全に消えていない。
でも、この4人なら、少しずつ乗り越えていける。
―― 夜、自宅リビング ――
家に帰り、母の恵子さんが心配そうに傷を消毒してくれた。
「健太、また危ないことして……」
俺は笑って言った。
「大丈夫だよ。お母さん。みんなで守り合ってるから」
弟のゆうたが飛びついてきた。
「兄ちゃん、今日もかっこよかったんだろ!? 凛おねえちゃん守ったんでしょ!」
俺はゆうたの頭を撫でながら、心の中で誓った。
(みんなを守るために、もっと努力する)
奥層のボスは、まだ待っている。
でも、俺たちはもう一人じゃない。




