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ぎゃくさつ! ~JKのどきどき紛争傭兵ライフ~  作者: ルト
第五章 ラストミッション
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彼女たちの誓い(2)

 PMCブラスト社、スフェール支社。

 連合軍駐屯基地のキャンプ・ポロロッカには、アメリカはマクファーソン・スクエアもかくやという立派な社屋ビルが建てられていた。

 その一室、床も壁も真新しいブリーフィングルームに沙希たちは集められている。


 沙希たちユニット・エコーの面々だけではない。恐ろしく鍛え抜かれた背の高い男性も無数にいた。

 ジョシュアが選定したという特殊作戦チームだろう。

 人混みの中、整列してブリーフィングの開始を待っている沙希たち四人の前に、ふらりと老紳士が現れた。


「元気にしていたか、ロザリー」

「ブレンデン!」


 声を上げたロザリーが急に前髪をなでつける。唇を尖らせて斜め下に視線を逃がした。


「な、なんの用だよ」

「緊張していないか顔を見に来たのさ。その様子なら大丈夫そうだ」


 ブレンデンはロザリーだけでなく、ロザリーを見守る三人の少女に相好を崩す。沙希はキメ顔でサムズアップを返した。


「今回の作戦は対応力の高いFHが要になる。プレッシャーをかけるわけじゃないが、しっかりな」


 ブレンデンに頼られて笑みをこぼすロザリーは、表情を引き締めて顔をあげた。力強く頷く。

 彼女の肩に優しく手を乗せて、ブレンデンは渋く微笑む。


「必ず成功させよう」


 それじゃあな、と彼は手を離して背を向けた。

 大きくも決然と意志の固い背中。

 多くを語らずとも、決死の覚悟がみなぎっている。


”普通の兵士なら、命を代えても作戦を成功させようって言うんだろうけど”と沙希は言った。

 まさに体現するかのような兵士の背中だ。


「――ブレンデン!」


 ロザリーは声を走らせた。

 何物にも止められないような意志と鍛錬に支えられたブレンデンの背中は。

 当たり前のように動きを止めて、振り返る。


「なんだ?」


 面食らって、ロザリーは口をすぼめてうつむく。すぐに顔をあげた。


「こ。この作戦が終わったらでいいから……その、飯に行こう。『あの時』のお礼も、ちゃんとできていないしさ」


 ブレンデンは髭をくゆらせて口元を緩ませる。

 ゆるやかに、深くうなずいた。


「楽しみだ」


 そして立ち去っていく。人ごみに紛れて消えてしまった。


 ロザリーは詰めていた息を吐いた。

 喧騒に揉まれ、緊張さえも引き潮のように押し流される。

 呆然と天井を見上げた。自分がブレンデンを食事に誘ったことなど夢か幻であるかのように。


「ロザリーっ!」


 叫んだ沙希が、ぼうっとするロザリーの肩をしこたま強くブッ叩いた。

 なんでそんなこと言っちゃうの死亡フラグじゃんと言いかけた沙希の口を、アメリアが塞いで羽交い絞め。アメリアは沙希の代わりに笑いかける。


「よかったわねロザリー! 告白のチャンスじゃない!」

「うん、うん。よかったよかった」


 ジゼルまで察して尻馬に乗る。

 ブレンデンの前でだけロザリーの様子がおかしいのは一目瞭然だ。

 ロザリーは顔を真っ赤にしてぶんむくれる。


「ばっ、ちげぇえし! ただ作戦終わった打ち上げと前に世話になった礼をするだけだしっ!!」


 下手すぎるごまかしを、二人はにやにやと見守った。

 ロザリーは渋面をにじませて強引に話を逸らしにかかる。


「あたしのことより、お前らはどうなんだ。家族と話は済ませたのか?」

「私は済ませたわ。ジョシュアに通話の許可もらってね」


 露骨な話題転換にも乗ってアメリアは温かく笑う。


「パパもママも、なにも言わず頑張ってって言ってくれたわ」


 続いてジゼルが小包を得意げに掲げる。


「あたしもおじいちゃんと話して、これも受け取った」

「なにそれ?」


 沙希は尋ねるまでもなく、ジゼルはラッピングされた小包を開く。

 レザー質で加工された高級そうな箱に収められていたのは、アンティークの拳銃だった。木製グリップのリボルバー。使い古されていながらも、丁寧に手入れされている。


「おじいちゃんの使ってた拳銃なんだって。審査抜けるのが大変だったんだけど、無理言って間に合わせてもらったの。こんなの送ったら迷惑だよね」


 言葉とは裏腹に、慈しむようにグリップの曲線を撫でるジゼル。

 二人の茶目っ気と愛の深さを感じられるやり取りだが、それはそれとして、沙希は率直に苦笑する。


「ジゼルのおじいちゃんって、ホントにスーパージジィだよね……」


 決死の作戦に出る孫娘に愛銃をプレゼントできるご隠居が、果たしてどれほどいるだろう。

 ロザリーは沙希に目を向ける。


「沙希は何かないのか?」

「私も話したよー友達と久しぶりにね。みんな変わってなかったよ」


 気軽に手を広げて返した沙希の軽さと裏腹に、アメリアもジゼルもちょっと気まずそうな顔になる。沙希も沙希で気まずい顔になった。

 沙希には話す家族がいない。沙希自身がその手に掛けたから。

 ふいに沙希に声がかけられた。


「お、いたいた。JK! 探したぞ」

「ライザさん! 私に会いに来てくれたの!」

「はぁ? 馬鹿言え、そんな暇じゃねーよ!」


 タバコを噛む癖のある赤毛の女性は、抱き着いた沙希の頭をうっとうしそうに押さえ込む。

 片手で引き剥がされて、沙希はライザを見上げた。


「じゃ、なにしに来たんですか?」

「お前のだろ。持っとけ」


 そっけなく突き出された黒い布ケース。重たいケースのチャックを開けて中を覗き込む。

 黒光りする銃口と目が合って沙希は身をのけ反らせた。


「これAKじゃん」


 街中で襲ってきたテロリストを殺して奪ったものだ。


「自分で持っとけ。コックピットにラックあるだろ」


 コックピットシートの脇に収納がある。もともと護身用にARやPDWを収めておく場所だ。

 個人武器を貸与されていない沙希たちだが、あるなら持っていた方が望ましい。


「ほー。ありがとう!」

「気にすんな。もともとあたしのもんじゃねぇし」


 礼を言う沙希にライザが笑って返した。

 ざわめきが引いていく。見ればジョシュアがブリーフィングルーム正面の壇上に立ったところだ。

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本作は金椎響様「さよなら栄光の讃歌」をもとに、本人の許可を得てスピンオフとして描いた作品です。

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