27.人間界進出!
枯れ木なのに紫の葉が付き、あたりは霧のせいでよく見えない。
所々にある底なしの沼が歩行者の足の自由を奪う。
その上、コウモリの魔物も生息し、並程度の雑魚は一度入れば二度と出られないであろう『奈落の樹海』。
先程からゴロゴロと人間の死体が見つかっている。
このような不気味な場所は僕は苦手である。
え?悪魔らしくない発言?
悪いのか!?
まぁいいだろう。
そしてこの『奈落の樹海』のどこかに、魔界と人間界境がある。
しかし生憎、木々で隠されているため、魔界と人間界の違いが明白になる空は見ることができない。
「このジメジメした森、あまり好きではないんですけどねー」
「そうか?ワイは中々落ち着く場所やと思うけどな」
「まぁ、ジャック・オー・ランタンだもんね」
「ジャック・オー・ランタンやない!パンプキンや!Pumpkin!!……あれ?」
プチィーニはこのような不気味な場所が好みらしいが、いささか同意しかねる。
まぁ樹海の土地は栄養が豊富で、湿気が多いため植物にとっては最高なコンディションかもしれないが、あれだ。
こーゆーとこって出るんだよね、アレが。
「あ、なんか漂ってる」
「ヒャぇぇぇぇ!?ウソウソウソ!怖い怖いやめて本当に!え!?…………あーー、なんだぁ…柳の木じゃないか……驚かせないでよ、ミカエル」
「「「………」」」
そう。
僕はホラーがどうしてもダメなのだ。
僕の苦手なもの3つに入るね。
え?他の?
アルコールとタバコの臭い。
この三つはどうしてもダメ。
「やんやオマン、オバケとかそういうもん、アカンの?」
「うん、そうなんだよね……」
少し青い顔の僕は苦笑いをしながら目が点になっているプチィーニの質問に答える。
「信じられない。自分が化け物みたいなのに」
「うんミカエル。さりげなくディスるのやめてくれないかな?」
それにしても、ゆっくりと旅をすることがここで裏目に出てしまった。
こんな森なんか焼きつくしたい。
そうも思ってしまっている僕である。
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「はぁ……やっと出られたよ……」
『奈落の森』を抜け、久々に見る太陽を眩しく感じる。
僕達は幻覚魔法と偽装魔法を駆使して、見た目を少しいじっている。
僕は目が赤から黒に、そして悪魔の翼を消している。
それ以外はあまり変わらない。
一年と少し前に見た、テハレ村の無能少年『ベン・テルメード』そのものだ。
だだし、黒いローブを羽織っているが。
ミューの目は髪と同じく薄紅色で、サキュバス の服でなく胸元が大きく開いた白いドレスを着ている。
ちなみに翼は収納済みだ。
その胸元の開きはいらないと言ってみたが、サキュバスとしてのプライドが許さなかったらしい。
悲しき性だな……
ミカエルは輪っかを不可視にして羽根を格納。
その上でチョーカーに鎖を付け、黒い修道服を少し粗末な服を変えてみた。
少し泥を付けさせてみれば、可憐な奴隷ちゃんに早変わり。
だが、称号に『幸せな奴隷』とあるため、僕に気軽に触れてもあまり謎だとは思わない。
プチィーニは姿を変えて魔女の帽子になっている。
ちなみに被っているのはミカエル。
僕がかぶろうとしたが、『男なんで嫌や!お嬢達がええんや』とか言ったから仕方なく怒りをこられてミカエルの頭に被せた。
しかし地味に派手で高価そうな帽子のため、奴隷のミカエルには少し合わなかったりする。
まあ、誤差の範囲だろう。
そして、馬車の『ゾンビホース』二体も姿を変えて清潔な白馬になり、骨荷台もなんとかアンティークな雰囲気の物に変えておいた。
「ここから一番近い街は『都市フィリップ』ですね。ユークリーデ王国で三番目に大きい街です。まずはそこに向かいましょう」
さすがミュー。
仕事だけは完璧だ。
さて、それでは行くかな。
絶望集め……じゃなくて、魔王軍第零部隊としての仕事を果たしに!
作者「さてさて今回露わになったベンの嫌いなもの三選、これが後々とんでもないことを引き起こすかも……」
ベン「いや、オバケとお酒と煙草で物語が覆されてもいい気はしないけどね……」
ミカエル「私は、ピーマンとナスとトマトが嫌い」
ミュー「基本何でも食べれますが、強いて言うならシュールストレミングでしょうか?」
作者「そんなもん匂いでまず無理だわ……」
プチィーニ「ワイは好き嫌いなんか無しや。偉いやろ」
作者「うん、カボチャだから食べられないだけでしょ。第一空気中の魔力を吸って動いてる設定だし」
プチィーニ「カボチャやない!!ジャック(ry」
ベン「そんなことより!次回は2/23更新だよ。ブックマーク、高評価、コメント、質問等お願いね」