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元宰相の異世界物語(仮題)  作者: 徳兵衛
第1章
49/65

第36話

???「楽隠居など許さない。貴様、皇族だろう?」

???「やめろぉぉぉぉ!」


 

2/5  誤字修正しました。

2/11  微修正しました。内容に変更はありません。

 息子の成長を物理的に実感し、痛いやら切ないやらで落ち込んでいたパーヴェルだったが、二週間ほど経過した現在もマーシャと共に帝都に留まっていた。


 そもそも帝都を訪れたのは始めこそ息子の様子を見るためだったのだが、途中から帝都近辺に住む旧知の友人達を訪ねて回る予定をマーシャが捻じり込んだためである。


 もっとも、サムソノフ夫妻は二人とも長命種であるために、会いに行ける顔見知りは同じく長命な種族の者達に限られるが。


 しかし、久方ぶりに古い友人たちを訪ねる旅は、夫妻の期待を裏切り開始早々に過酷な現実を突き付けたのだった。



「また、逝ってしまったな。」



 宿屋『鉄槌亭』の食堂の片隅で、マーシャと蜂蜜酒の入ったマグを見つめながらパーヴェルが零す。



「何度繰り返しても慣れないわ...」


「あぁ。」



 盛大に鼻をすすり、赤くなった目元をぬぐいながらマーシャが答え、パーヴェルは沈痛な面持ちで深く頷く。


 再会を前にしてまた二人、探検団を知る者が逝っていた。



 帝都への出発前から手紙の返事が無かった事を思い出したマーシャが、パーヴェルと共に送り先の友人宅を訪ねると、工房と家を兼ねたその建物は静まり返っていた。二人の知る限りその家はドワーフの老夫婦が息子夫婦と住んでいた筈だったが全く人の気配が無い。最後にマーシャが送った手紙がドアの小窓に差し込まれたまま雪に濡れており、夫妻の脳裏に最悪の予想がよぎる。


 藁にもすがる思いで偶然通りがかった老婦人に問うと、予感は的中し冬の初め頃、丁度夫妻が旅支度をしていた頃に流行りの病で一家全滅したと言われ、思わずパーヴェルは天を仰ぎ、マーシャは泣き崩れた。


 息子の腕前に一喜一憂するどこにでもいるドワーフ一家を、病は非情にも息子夫婦諸共冥府へと連れ去ってしまっていたのである。



「寂しいものだ。」



 友人たちに次々と先立たれ、残された者たちも一人また一人と減ってゆく。幾度となく死線を潜り抜けてたサムソノフ夫妻にとって命に強弱も貴賤も無かったが、それだけに突き付けられる現実は心を蝕むものだった。

 以前から、長命種が短命種との関わりを厭うのはどれほど深い絆を結んでも遺されてしまうからではないかという話をパーヴェルは他の長命種から聞いていた。

 たまたま今回の離別は寿命云々が問題ではなかったが、それでも見知った誰かが逝く度に長命種と短命種という命の壁を何故神が創ったのか、何故ここまで理不尽なのか。夫妻は天に問わずにはいられなかった。



 ドワーフの一家が埋葬された集合墓地に向かい、土産に持参した酒を墓前に供えて静かに戦友との記憶に思いを馳せたのが今日の昼。

 その後、近くの墓石に知った名前が刻まれていることに気づいて愕然とし、他にもないかと探し回る午後を過ごして宿に戻ったのがつい半刻前。


 だが、二人は宿に戻っても墓地で受けた追い打ちから立ち直ることが出来ず、酒場を葬式の様な空気にしてしまい宿屋の主人に苦言を呈されたりと、今日だけで惨憺たる時間を過ごしていたのである。



「飲もう。飲めば少しは気が晴れるかもしれん。」



 子供が独り立ちをした今、サムソノフ夫妻が大酒を躊躇う理由は無かった。







「そこのおお二方、相席してもよろしいですかな?」



 荒んだ酒杯を進める夫妻に老いた狼種の男性が声を掛けたのは、酒場の客が酒精に屈して少しずつ静けさが戻り始めた夜更けの事だった。



「あー、これは失礼。どうぞ。」



 髪も尻尾も真っ白い老人はパーヴェル答えを聞いて破顔すると、左足を引きずりながらテーブルに歩み寄る。今更ながらではあるが、テーブルの周りには小ぶりの酒樽や瓶がいくつも転がって足場が悪い事に気づき、パーヴェルがばつが悪そうに頭を掻く。

 せめてもの気遣いで椅子を引くと、老人は笑みを浮かべて左足を庇いながらゆっくりと腰を下ろし、周囲に転がる戦果を見遣った。



「いやはや、御強いですなぁ。」


「お恥ずかしい限りで。」



 トロンとした表情を浮かべ不躾な視線で老人を見遣るマーシャをパーヴェルがテーブルの下で足で小突く。



「随分と荒んどるご様子。良ければ話を聞かせて貰えますかな?」



 確実に自分よりも若い老人に促され、パーヴェルはすっかり出来上がった妻を御しつつ語り始めた。








「ドミトリー、話ってなんだ?」



 時間は半日ほど遡り、セルゲイがここ最近の午前の日課である人材確保ヘッドハントから帰ってくると、静かに部屋で書き物をしていたドミトリーが改まった様子で話しかけて来た。



「少し気になることがあるんです。今、空いてますよね。」



 外套の留め具に手を掛けたセルゲイだったが、口ぶりから何となく察してその手を止めた。



「そうだな...良いぞ。」



 ヴァシリーは宰相府に呼び出されて席を外している。部屋には使用人の女性とドミトリーとセルゲイの3人しか居ない。



「ここで話すのもアレなので...外に出ましょうか。」



 ドミトリーは使用人の女性をちらりと見てそう言うと立ち上がり、外套を羽織って部屋を出た。



 まだ昼前にも拘らず、すでに日は高く上り、強烈に照らし出された木々や建物の軒先からは途切れることなく雪解け水が滴り続ける。

 周囲一帯が水音に包まれて濃厚な土の匂いが広がる中、ドミトリーとセルゲイは軍司令部の中庭を歩いていた。



「大分雪も溶けて来たな。歩きやすくなって良い事だ。」


「...。」



 ザクザクとザラメ状になった雪を踏みしめてセルゲイが言うが、ドミトリーは無言のまま先を歩く。



「...。」


「わざわざ外に連れ出して...そろそろ話を聞かせてくれないか?」



 セルゲイは足を止めて、先を歩くドミトリーに声を掛けた。



「先輩は銃兵隊を使って何をする気ですか。なぜそれに自分を加えたのですか。」

 


 振り返りながら答えたドミトリーの目はいつもの穏やかさは影を潜め、冷徹な光を湛えていた。



「自分は政治に興味が無く、軍人になる気も無いと以前から公言していました。今もまだこの仕事が不本意なのは変わりません。そちらの事情を説明してもらえませんか?」



 いつになく固い口調で問われたセルゲイは、普段とまるで異なる友人に一瞬言葉を詰まらせる。だが、諦めたのか深い溜息を吐き出して語り始めた。



「...お前がオーク達の里を再建させたのが切っ掛けだ。」



 それは以前ランナルの父、エドヴァルドから聞かされた帝都内での不穏な噂話だった。


 法術大学が授業の一環でオークの里の復興を行った事がここに繋がるのかと、ドミトリーは天を仰ぐ。行動自体に悔いはないが、それが何故現在の状況に繋がるのか。何となく予想がつくが、それでも確認しなければと自分を奮い立たせてドミトリーはセルゲイに問う。



「オーク達を助けた事で”お貴族様”のお目にかなってしまったと?」


「そうだ。付け加えると軍の将軍達もお前に興味を示した。」



 ドミトリーは自分が知らない間にお偉方の目に留まっていた事を知って顔をしかめた。ドミトリーは己のした事に反省はあっても後悔は無い。やらなければ今も引きずっていたはずである。


 だが、迂闊に人助けも出来ない現実が酷く窮屈に感じた。



「お前たちが実習を終えた後しばらくして、3日で里を再建したという話が宮廷内で広まった。」



 オーク達の里は皇室の直轄領に存在し、復興の担当責任はその所有者である皇帝にある。だが、戦争から130年も経っていながら放置していた事実が宮廷に広まり、実務を担当していた宰相府が貴族たちの槍玉に挙げられたのである。



「まぁ、それくらいなら今に始まった事じゃないんだが、今回はオルロフ公が動いてな...」



 言うまでもなくウラジミールの父親の方である。


 現皇帝のまたいとこに当たり、それまで隠然たる影響力を保持しながらも直接的な動きを見せてこなかった公爵だが、今回の騒ぎに対し”帝国の未来を担う若者たちが達成した偉業は賞賛に値する”と表明。加えて、”再建を主導したのは自身の息子と知勇兼備する竜種の少年である”という情報を宮廷に与えたのである。


 オルロフ公からの情報により、程なくして竜種の少年がかつて軍で勇名をはせたサムソノフ家の者であることが発覚。宮廷雀(木っ端)同士のいつものいがみ合いに、サムソノフの名前に関心を示した軍が聞き耳を立て始める。



「それで興味を持った将軍の1人が勝手にオークの里の視察をして...何というか感動してさ。その話を聞いた内務尚書や宰相府の面々も騒ぎ始めて...」



 いくら法術士の大量投入とオーク達の尽力があったことを加味しても、分厚い壁に守られた大型浴場付きの一大拠点を三日で整えたのである。広大な帝国の国境を守る軍が強い興味を示さないはずが無かった。

 また、オーク達の里の詳細な情報を受け取った宰相府では、平民出身でありながらその非凡な手腕に期待する官僚が、ドミトリーの確保を主張し始めたのである。


 宰相府はドミトリーが持つ能力を欲し、軍は法術士の更なる確保という名目で予算の増額を要求し、内務省はいつもの如く両者の妨害に回った事で三者の論争となり、それを貴族たちが煽ったことで宮廷内は俄かに活気づいたのだった。



「言っておくが、オルロフ公はさっき言った以上の言及はしなかったんだが、言葉だけが独り歩きしてさ...」



 しかし、年が明けて各地の流民の間にオーク達の里が再建され、無償で家が与えられたという噂が広まると、事態は一変する。

 今まで燻っていた流民たちの不満が高まった事で、帝都を中心に東部にかけての治安が急速に悪化。内務省は不穏分子の取り締まりに忙殺され、軍も各地で頻発する騒乱の鎮圧要請に駆け回る事となり、政治ごっこにうつつを抜かす余裕が失われたのである。

 自領がキナ臭くなったことで今まではしゃいでいた貴族たちも泡を食って領地へと帰って行き、宮廷は現在まで奇妙な静けさに包まれている。

 

 なお、ここまでの騒動で皇室には一切の動きは無く、宰相を代理人にしてただ傍観しているだけだった。



「先輩、自分で言ってて恥ずかしくないですか?皇族なんですよね?」


「そうだ...そんな目で見ないでくれ。頼む。」



 後輩から容赦ない蔑みの目線を向けられ、セルゲイは恥ずかしさのあまり泣きそうになっていた。


 招聘された時点で何となく宮廷内の取引があったことを察したドミトリーだったが、これほど下らない理由である事は流石に予想外だった。今まで育んできた愛国心が砂山の如く崩れ落ち、謎の爽快感が心に広がりはじめる。


 目の前で恥辱に顔を赤らめながら説明を続けるセルゲイが、ドミトリーの目には哀れにも滑稽にも映る。



「それでだ、うるさいのが居なくなった隙を突いてシェルバコフの爺さんが軍と協定を結んだんだ。」



 何とか貴族からの攻撃を凌いだ帝国宰相シェルバコフは、貴族たちの動きが止まった隙を突いて軍と取引をした。予算の増額に加えて既に編成計画が頓挫していた銃兵隊を引き取り、軍のこれ以上の騒動への加担を封じたのである。

 

 内務省はこの動きに反発を見せるものの、各地の貴族領が”活気づいた”事でそちらの方に注力せざるを得ず、最終的にはドミトリーの身柄も宰相府が抑えたのだった。


 それでもドミトリーからして見れば、どの勢力も当人の意思など無関係のパワーゲームに興じていたに過ぎない。



「なるほど。宰相閣下を始めとして、皆さんが尽力した結果と言う訳ですか。」



 説明に理解を示したドミトリーを見てセルゲイは胸をなでおろしたが、次の一言でその不満は解消されるどころか激化していることを悟る。



「...本人の意思を丸ごと無視して、よくもまぁ好き勝手やってくれたものですね。これがこの国の政治ですか?」



 こらえた激情に押し出されるように魔力が滲み出し、ドミトリーの背後から陽炎が立ち上る。


 穏やかで攻撃的な笑顔という矛盾した表情を浮かべる後輩を前に、セルゲイの額に汗が浮かぶ。



「俺だってお前があの世界を嫌っているのは知ってるさ。だが、宮廷で一度名が出てしまった以上、ボンクラ共に好き勝手にされてもおかしくなかった。せめて俺がどうにか出来る所に置こうと考えたんだよ。」


「...は?」



...どうにかできるなら、今のお前は一体何だ?


 敢えて今まで触れてこなかった疑問が、ここに来て急にドミトリーの脳裏で不穏な色を帯び始める。一体何故、何を目指して動いているのか。


...俺を何に巻き込んだ!


 目の前の後輩の様子が変化した事に気づかず、セルゲイが続ける。



「それに、今のお前は宰相府から出向した軍属だから兵役免除になる。俺たちの手伝いを済ませてくれたら自由にしても構わない。」

 

...俺たち?こそこそと徒党を組んで何をしている?


 一頻り説明を終えてドミトリーが滲ませる負の感情が収まるどころか激化したのを感じ取り、ようやくセルゲイは自身が下手を打った事に気づいた。

 どう考えても今の説明では今まで公言してきた自分の立ち位置を否定するものである。おまけに廃嫡された元皇太子が陰で何かを企んでいるなど不穏どころの話ではない。



「あ、ドミトリー、誤解の無い様に言うとだな...」



 廃嫡された筈の王族が、未だに宮廷で政治的な動きに関与しているという事実。一際政治に対して厳しい目線を持つこの後輩が、そんな不穏な活動を見逃すはずが無かった。



「いえ、結構ですよ...”今は”そういう事にしましょう。それにしてもまた聞かねばならない事が増えましたね。...風邪をひく前に戻りますよ。」



 ドミトリーにはセルゲイに悪意があるようには見えず、彼の取った行動も己を慮ったものである事は理解できた。

 だが、ドミトリーはセルゲイがこれ以上曖昧な振舞いをする事を見過ごすことが出来なかったし、それに伴う現在の自分の立ち位置がどのようなものであるのか、速やかに確認する必要があった。



「教えて貰いますよ。どうにかできる立場だなんて聞いてませんでしたからね。...何考えてるのかすべて吐いてもらいます。」



 今までうまく回避し続けて来たセルゲイだったが、今回は避けきれずその尻尾を踏んでしまったのである。



「あぁ...わかった。」



 もはや、どうあがいてもセルゲイは逃げられなかった。








 宰相府で打ち合わせを済ませたヴァシリーが司令部に戻ると、セルゲイ付きの使用人たちが狼狽えた様子で出迎え、そうこうしている間にその足元に平伏して許しを請い始めた。



「皇太子殿下!!どうか、どうか我らをお許しください!」


「お前たち、一体どうしたというのだ!」



 グラーゾフが声を荒げて叱責するも、完全に動揺した使用人たちを静めるには至らずに玄関は騒々しさに包まれた。



「サムソノフ様が!セルゲイ殿下と...あぁ!」


「あぁって何!? ドミトリーと兄さんがどうかしたの?」


「ええい!何があったかハッキリ言わんか!」

 


 激しく動揺し、使用人たちは要領を得ない断片的な説明を繰り返す。業を煮やしてグラーゾフが怒鳴りつけるが、使用人たちの混乱は一向に収まる気配を見せなかった。

 やむなく使用人たちの相手をグラーゾフに任せ、ヴァシリーは外套も脱がずにそのまま編成委員会の部屋へと急いだ。



 短い付き合いではあるが、兄もドミトリーも関係は良好である事はヴァシリーもよく理解している。


 ドミトリーの仕事に対する姿勢は謹厳そのものであり、軽薄さが拭えないセルゲイとは対照的ではあったが、両者が交わす言葉は押しなべて高度なものであり、セルゲイから見ればお互い認め合っている間柄以外の何物でもなかった。


 いずれ自分もその会話に加われるだろうかと思っていた矢先のこの騒ぎである。



「あの二人に限って喧嘩なんて考えられないけど...」



 運の悪い事に、皇太子として皆から傅かれて育ったヴァシリーは、喧嘩が起きる条件をよく理解していなかった。


 そして、どうにも事態を把握できないまま駆け付けたヴァシリーが部屋に入ると、部屋の一番奥の椅子に座っていたセルゲイが叫んだ。



「ヴァーシャ!逃げろ!」


「え...はぁ?」

 


 いつになく激しい兄の声にヴァシリーは一瞬動揺して動きを止め、部屋の支配者はその隙を逃さなかった。



「逃げろとは人聞きの悪い。」



 開け放ったドアの陰からドミトリーの声が響き、静かにドアが閉じられた。口調こそ穏やかだったが、いつもの穏やかさは何処へやら、その表情は非常に険しいものだった。



「えっと...一体どうしたの?」


「どうしても腑に落ちない点や納得できない点がありまして。今まで、先輩に事情をお伺いしていたんですよ。」


「あぁ...なぜ来たんだ...」



 戸惑うヴァシリーにドミトリーが完結極まりない説明をすると、セルゲイがガックリと首を垂れた。



「殿下にもお聞きしなければならない事が有ります。先輩の隣に掛けて頂けますか。」

 









 ドミトリーにしてみれば、そもそも考えた末に決めていた自分の進路を勝手に変えられただけでも業腹である。それに加えて、自分”達”の善意による努力を知らない間に闘争の種にされ、国政の悪戯な混乱に繋げられてしまったというやるせなさも重なる。

 そしてこれがトドメとなったが、善意の元に己を望まぬ世界に引き込んだ人物は、姑息にも責任の所在の曖昧な肩書を提げ、全てを押し付けた弟の陰で無責任に動き回っていたという事実を目の当たりして、ドミトリーは我慢の限界に達したのでだった。


 もはや逆鱗がそこら中に散らばっているようなものである。卒業前にあらかじめパーヴェルをローストしていなければ、今頃ドミトリーは大逆罪で裁かれていただろう。


 確かにセルゲイに関しては同情の気持ちが無かったと言えば嘘になる。広い視野と判断力を持つ彼が廃嫡されたという事実だけで、甘い顔をしてしまうには十分過ぎる理由だったからである。


 だが、どこぞの副将軍の様なご隠居かと思いきや、しっかりと陰で動いていたのである。それも帝国の実務を掌る宰相府で。


 だからこそドミトリーは不敬を承知でセルゲイを徹底的に問い詰めた。


 万が一の場合、自分だけでなく家族や友人も連座させられる可能性がある以上、彼の行動を見逃す事が出来なかった。不敬ならば自分が死ねば何とかなるかもしれないが、大逆では一族揃って死を賜る事は容易に想像がつく。自分の交友の結果で家族に類が及ぶくらいならというドミトリーの投げ遣りさによって、セルゲイは経験したことの無い追及を受ける羽目になったのである。


 結果的にドミトリーの危惧は杞憂で終わり、セルゲイは絞られ損に終わったのだが、その追及の激しさは部屋の外に控えていた使用人たちが震え上がる程のものであった。


 合流したヴァシリーの証言を聞き、ようやくドミトリーはセルゲイへの追及を止めたのだった。


 




「なるほど。それで銃兵隊と。」


「うん。元々は兄さんの考えだったけど、話し合って僕もそうするべきだと考えたんだ。」


「...。」



 心の傷に塩を塗るような質問の雨に色々と疲れ果てたのか、セルゲイの反応は薄い。


 

「しかし、皇室が掌握できる兵力ならば軍があるでしょう。今更新たな戦力を整える理由は何なのですか?」



 どうにも腑に落ちず、ドミトリーはヴァシリーに問いかけた。



 本来、銃兵隊の編成の様な仕事は宰相府ではなく軍が行うべき事柄である。わざわざ膨大な国費を投じて素人が未知の武器を扱う部隊を編成する利点など何一つ無い。むしろ金の無駄である。


 現在の帝国政府の財政面は勿論、皇室と宰相府の政治力は臣下である貴族のいちゃもんに振り回される程度にまで低下している事は、ドミトリーも今までのセルゲイの説明で十分に理解していた。

 しかし、ただでさえ帝国には余裕がない事が明らかでありながら、なぜ見込みの薄い冒険をするのか。もうほとんど後が無い状況で見込みの薄い投機に走る理由が、ドミトリーには理解できなかった。


 その分析と判断のため、当事者である皇族に帝国の現状を白状させるという己の所業はさて置き、そんな帝国がさらなる金食い虫に手を出す暴挙に加担する気が起きなかった。


 

 ドミトリーが自分たちの説明に納得できていない様子が悔しかったのか、ヴァシリーがぼそりと告げた。



「皇室...いや、帝国の力を高める必要がある。銃兵隊はその第一歩なんだ。」



 二人の行動の核心となる言質を得て、ドミトリー座り直して耳を傾けた。



「このままだと帝国はバラバラになる。帝国と言う形で纏まっている今のうちに行動しないと、手遅れになってしまう。」


「...だから、宰相府が独自の戦力を?」


「貴族たちの力が強すぎて宰相府は身動きが取れていない。どうにかしてあいつらの力を削がないといけない。銃兵隊がいると言うだけでも、違いは大きいと思うんだ。」


「見せ札でも無いよりマシだという事ですか。」


...感情のままと言う訳では無い様だな。それなりに考えてはいるか。


「ですが、そうだとしても高い買い物になります。今の皇室、宰相府は維持し続けられるのですか?」


「苦しい状況になるのは覚悟の上だ。」


「覚悟をしても屈してしまうのが現実です。努力と根性だけで何かが出来るとでも?」



 ドミトリーの辛辣極まりない突っ込みに晒されながらも、ヴァシリーは臆することなく答え続ける。


 兄弟で密かに何度も話し合ったのだろうか。その啓蒙的な思想が何処から現れたのか大いに気になるところではあったが、ドミトリーは反論を並べて問い続けた。



「そもそも、跳ねっ返りをシバき倒すなら軍があるでしょう。」


「彼らも貴族だ。反乱鎮圧はどうしても及び腰になるし、彼ら自身も反乱を起こす。」



 ヴァシリーも自分でしっかりと考えた末の結論なのか、答えに一切の揺らぎが無い。



「ではお二人にお尋ねしますが、もし仮に貴族を完全に敵に回して、宰相府...皇室はこの国を維持できるのですか?」



 ヴァシリーは何か思い当たったのか、即答できずに言葉に詰まった。



「昔はともかく、今の貴族共は宮殿で噂話に花を咲かせてばかりの穀潰しだ。潰したところで所詮...」


...皇族から見ればそう映るのだろうが、止めるべきだな。


 当然と言わんばかりのセルゲイの答えに、ドミトリーは強い危惧を抱く。一部の穀潰しはともかく、知識階級の安易な弾圧は必ず社会に著しい混乱を引き起こす。


 弾圧の理由は民族や宗教など多々あるが、共通しているのは潰したところで何も改善せずに事態を劇的に悪化させる点にある。


 生前に他国と共同で途上国の支援にも携わった経験から言えば、知識を持つ階層の喪失が齎す破壊力は弾圧する側の想像を遥かに超える。効果はともかく、その副作用が。



「もし潰してしまえば、その後は宰相府と皇室が彼らの分の仕事と責任を負うことになります。出来るんですか?今のあなた方に。」


「...どういう意味だ。」



 流石に聞き捨てならなかったのか、セルゲイが噛みつく。



「今、帝国の各地をを治めているのは貴族です。仮に彼らを排除したとして、代わりに中央から官吏を送った場合どうなると思いますか?その地がどのような統治をしてきたのかも把握しないまま官吏を投げ込んで何が起きると思います?」


「...。」


「そもそも、この広大な帝国領を把握し切れるだけの官吏がいるんですか?宰相府に。」


 

 夢見る若者には現実を思い出させる者が必要である。若者の持つ地位と権限が高ければ高いほどに。



「それは...。」


「安心して任せられるような官吏、足りてるんですか?」



 本人にとって不愉快かつ不都合な現実は、無視すれば周囲の人々にとって不愉快かつ不都合な未来をもたらす場合がある。

 嫌でも向き合わなければ誰かにしわ寄せが向かう事になるのだ。背負うものが大きい皇族ならばなおさらに。



「流石に帝国全土を満たすには足りていない。だが...」


「努力と根性だけで何とかなるのは夢の中だけです。」



 ドミトリーはセルゲイの反論を容赦なく切り捨てた。


 本来、こういう政策を検討するならば指南役や補佐役がいて然るべきなのだが、何故かこの兄弟にはそういった人物がいない。いたかもしれないが今この瞬間に諫言する者がいないのだ。


...それでも現実を見失っている訳では無い。見込みはあるか?


 徹底的に情報を絞り取られた挙句密かな夢すら暴かれた兄弟に、ドミトリーは容赦なく追い打ちをかけた。



「お二人とも夢を抱くのは結構ですが、計画は頭を冷やしてもう一度検討し直して下さい。その見通しでは悪戯にこの国の寿命を縮めます。銃兵隊の編成以前の問題ですよ。」


「「...。」」


「相談にも乗りますし、今更逃げ出す気もありません。ですが、今の方針のもとに銃兵隊の編成をお手伝いする訳にはいきません。どうせ編成してしまえば使ってしまいますよ。途中で拙いと気づいても止められなくなります。確実に。」



 何故かやたらと説得力のある言葉の前に、二人の皇子は言葉も無く頷くだけである。


 友人が国家規模の自殺を図ろうとするのを、ドミトリーはみすみす見逃すつもりはない。巻き添えなど堪ったものではない。



「幸い、雪解けが終わるまでまだ時間があります。もっと練ってください。虱潰しに穴を埋めていけば、あなた方の計画は帝国の墓石ではなく礎になります。」



 そう言ってドミトリーはテーブルに放置され冷めきったチャイを一気に呷る。



「分かった...認めさせてやるから、首洗って待ってろよ...。」


「えぇ、楽しみにしていますよ。」



 声さえ震えていなければ勇ましく頼もしい限りなのだが、ドミトリーを前にした今のセルゲイにはそれが限界だった。









「...それにしても、これほどの資料をよくこれだけ集めましたね。」



 司令部に住み込み始めてからこの1週間、ドミトリーは与えられた資料にずっと目を通して現状を把握していたのだが、資料がおかしい事に気づいていた。


 どう考えても資料の範囲が広すぎるのである。


 編成委員会のテーブルに山積みになっていた資料には、軍の糧秣の消費量や階級ごとの給料から皇室直轄領の税収一覧や帝都での犯罪件数の資料、果ては政府関連の汚職に関係した者たちの名簿なども含まれていた。


 銃兵隊の編成とはまるで関係の無い資料が一体何故ここにあるのか、兄弟から話を聞くまでドミトリーは理解できずに戸惑ったものである。


 始めは資料側のミスかと思っていたが、目を通して調べれば調べる程に銃兵隊にうつつを抜かしていられる状態ではない事を突き付けられたのである。


 資料が示唆する集権化の頓挫とそれに伴う貴族勢力の度を越した伸長。荒廃の一途をたどる西部からの難民で東部も連鎖的に悪化の兆候を見せ始めるも、それらの状況に帝国が打った手は現地”貴族”への経済支援。悪手どころの話ではない。その資料を目にした晩、あまりの酷さに鱗が荒れた。


 当の宰相府も宰相府で末端の汚職に手を焼き、人件費から見ても仕事の対費用効率は看過しえない水準にある事は明白。

 国内情勢の資料では蔓延する汚職と悪化する治安は経済活動も停滞させ、状況に無頓着な貴族と貧困化が進む平民の間に深刻な対立が醸成されつつあることが窺えた。


 両大陸戦役が発端ではあるが、どう考えても現在の帝国政府の苦境の原因は事後処理に失敗した事による自爆であった。



「それは褒めているのか?」


「えぇ。でも管理が雑だったので落第点です。」



 半日かけてこってり絞られたセルゲイが力なく机に伸びながら愚痴る。ドミトリーが真面目であることは知っていたが、まさかここまで容赦のない真面目さであると見抜けずにセルゲイは自らの人物眼の甘さを痛感していた。


 つい先ほどまでのおっかない顔は何処へやら、ドミトリーはケロリといつもの態度へと戻り、部屋には穏やかな空気が戻っていた。



からいいなぁ。」


「まぁまぁ、ドミトリーの言う事ももっともだよ。確かに甘かったとしか言いようがないし。」



 そう言ってヴァシリーが宰相府関連の資料を紐で閉じながら苦笑いを浮かべる。



「万が一この資料が他国に流れていれば、再び両大陸戦役に繋がるかもしれませんからね。国家情報の管理に慎重すぎる事はありません。」



 ウィシュケで割ったチャイが、艶やかな香りを部屋に満たす。


 極めて幸運なことに、ドミトリーの諫言は二人の皇子の心に届いたらしい。勢いが強すぎて刺し傷だらけにはなったが、それでも皇子たちはドミトリーの言を受けて自分たちの考えていた計画に、改めて向き合い始めていた。


 それが実を結ぶかどうかは極めて怪しいままではあるが、いたずらに冒険をしてすべてが台無しになっていないだけマシであると言える。



「国家かぁ。ドミトリーは随分と独特な考え方をするよな。いや、言ってる事はわかるんだけど。」



 ヴァシリーがボソリと呟いた。


 この世界もそうだが、中世水準の君主国家は時折、貴種の貴種のための貴種による政治と表現できる強烈さを見せつける時がある。

 貴族も含めた文字通りの”王の物は王の物、臣下の物も王の物”が完成するのは絶対君主制の誕生を待たねばならないが、この世界に於いても貴種や力ある者によって、平民に対する略奪や強盗と表現できるような理不尽が平然と罷り通るのは変わらない。


 勿論、王も貴族社会のルールに従わねばならないため、その行動にはある程度の掣肘が為されるのだが、それでも行き過ぎて臣下や民衆の反乱に見舞われるのが常である。


 王とて決して楽な立場ではないのだ。


 だが、一平民であるドミトリーにとって、衝突を避けるための 解決法カンニングがあるならばそれを生かす手は無い。

 どうせこの世界の今の平民には、王取って代わる方法ひみつどうぐは己の身を亡ぼす過ぎた代物でしかないのだ。


 この国を殺してしまわぬようよく吟味し、気づかれないように世に出せれば御の字と言えるだろう。


...みんなが仲良く出来ればそれに越した事は無いんだがなぁ


 いつの時代もどんな世界も、それが出来れば苦労しない。いずれは争いになる事はドミトリーも覚悟はしていた。



「独特ですか。まぁ、否定はしませんけどね。」


「でも、その視点と言うか考え方は勉強になるよ。」



 ヴァシリーはそう言いながら暖炉の傍の椅子で勧誘に対する返答の手紙に目を通す。


 叱ってくれる人材に乏しかったはずだが、なかなかどうして素直に育ったとドミトリーはこの若き皇太子を評価していた。


...彼らの師はどのような人物なのだろう。会ってみたいものだ。


 物心ついてしばらくしたら急に老獪さを見せ始めるという可愛げの欠片も無い自分に比べれば、この素直さのなんと素晴らしい事か。


 そう考えれば自分の奇特さに呆れが止まらなくなる。恐れも知らず、臆することもない。おまけに面の皮の厚さと開き直った太々(ふてぶて)しさは老い先短い政治家のそれなのだ。


...我ながら、何と生意気なガキだ。


 辛うじて表情には出さずに済んだが、色々と眩い兄弟を前にドミトリーは自己嫌悪を覚えずにはいられない。



「まぁ、あくまでも参考という程度で受け止めてください。」


「参考かぁ。それだけ練っておいて勿体無いよ。」



 生前の最後がアレだったため、ドミトリーの自己評価は高くない。だが、色々とどうしようもない祖国を若いなりに何とかしようと考えて来た兄弟にとって、ドミトリーの存在はある種の福音に近いものだった。


 良薬とするには苦すぎる代物ではあるものの、それに耐えられる我慢強ささえ持っていれば、兄弟はこの竜種が自分たちが目指す所への道筋を示す地図と成り得ることに気づいたからである。


 セルゲイもヴァシリーもそれを理解していればこそ、話し合いの後に太々(ふてぶて)しさを増したこの友人を放逐する事は無かったし、ドミトリーも彼らの判断をしっかりと感じ取ったからこそ、見限って袂を分かつという選択肢を選ばなかった。


 結果的に良い方に転んだが、危ない賭けであったことは言うまでも無い。



「そう言ってもらえると言った甲斐があるというもの。バッサバッサ斬っていきますよ。」



 そう言ってドミトリーは相変わらず伸びたままのセルゲイを見遣る。



「...つらいなぁ。」



 視線を受けたセルゲイは半分ほどに中身の減ったウィシュケの酒瓶を煽った。



 自覚は無かったが、話し合いの最中の会議室は険呑極まりない空気に満たされており、使用人たちが部屋の外でいつ呼び出されるかと戦々恐々としていた事をつい先ほどドミトリーは知った。


 皆が話し合いが終わってほっと胸を撫で下ろしたとチャイを持ってきたグラーゾフに聞かされ、ドミトリーは何と返してよいのか言葉に詰まったのである。


 ここぞとばかりに二人の皇子がドミトリーを冷やかしたが、当のドミトリーはどこ吹く風だったが。



「それだって、これから変えていけばいいんです。酒瓶と乳繰り合っても何も進みませんよ?」



 そんないつも通りの穏やかな会議室だが、一つだけ大きな変化があった。 



「そうそう、先輩も身の振り方を早く決めた方が良いですね。後回しにすると絶対に後悔しますから。」


「何だよ!そういう怖い言い方するなよ!」



 ガバリと身を起こしてセルゲイが叫ぶと、ヴァシリーがこらえきれずに噴き出した。


 

「確かに、兄さんにはもっと頑張ってもらわないと不公平だね。」


「あ!ヴァーシャもそういう事言う!大体俺は...」


「これだけ陰で動いていながら楽隠居なんて、そんな美味い話は無いと思いませんか?」

 


 自覚があったのか、それとも薄々そうなる覚悟をしていたのか。発言を遮られたセルゲイは柄にもなく渋面を浮かべ、恨めしそうにドミトリーを睨むだけである。



「廃嫡されても家族でしょう。助け合ってみんな”が”幸せになるように足掻くのみですよ。」


「...その”みんな”には俺は含まれるのか?」



 ドミトリーから目を逸らして酒瓶を見るセルゲイだが、その表情は虚ろであった。



「仲間はずれが嫌ならさっさとその厭らしい立場を捨てる事です。めくるめく激務に満たされた世界が待っていますよ。」


「おぉ!流石だよドミトリー!確かに、兄さんもこっちに来てもらわないと困るもんなぁ。」



 弟の裏切りに声も無く萎れるセルゲイを、ドミトリーは穏やかな表情で眺めながらカップを口元へと運んだ。ウィシュケの酒気が優しく鼻孔をくすぐる。


...幸せを分け合うなら不幸せだって分け合わないと不公平だよなぁ



「あー...失敗したぁ...」



 今頃になって猛烈な後悔に沈むセルゲイだったがもはや手遅れである。油断を突かれて逆襲を食らった上に退路まで塞がれた彼にもはや逃げ道は無い。ドミトリーが逃げる事を許さない。



「さらば、俺の黄金の日々...」



 身から出た何とやら。一度美味い思いをすれば、更に求めてしまうのが人の性である。欲をかいたセルゲイは楽隠居から引きずり出され、己の油断を悔いるばかりであった。


 この日を境に、銃兵隊編成委員会から楽隠居を決め込むものはいなくなった。




 雪解けの完了と共に、崖っぷちに追い詰められた帝国の最後の足掻きが始まる。











おまけ



竜種(北方系古竜種)


 帝国北部の土着の種族。人口は北方系のみで約2万ほど。膂力と魔力に恵まれ、戦士としても法術士としても図抜けた素養を持つが、老若男女問わず熱い議論にはつい拳を添えてしまうという大変困った性分を持つ。いわゆる脳筋。うっかり拳を交わすと友達認定される。


 何かと理由を付けては拳を交わすが、見境なく拳を振るう訳でもない。加えて、頭の回転自体は速いという始末の負えなさを兼ね備えた扱いの面倒な種族。


 その能力故に何かと苦労を強いられてきた歴史を持ち、現在も積極的に人間社会と関わりを持つ事は稀。歴史的経緯から竜種同士の団結は固い。


 平均身長は男が170から190。女性も平均で160以上の大柄で、一般的な人間の6から8倍の寿命を持ち、獣系亜人種としては極めて珍しい長命種。


 瞳孔は縦に細長く、頭部には太い一対の角。耳は長く鋭く後方に伸びる。尻尾は身長の2/3程度の長さで断面はおむすび形。先端に向けて緩やかに細くなる。尻尾の上部には3センチほどの黒い棘の列が並び、稀に末端に髪と同じ毛色の房を持つ。尻尾全体が濃緑色の鱗で覆われ、加齢に伴い色の濃さを増して特に高齢の個体は黒くなる。

 なお、精神状態や体調によって鱗が逆立つため、健康管理の目安にもなる。鱗と角は高い魔力を持つため、術式の触媒になる。


 鱗があるのは尻尾とその付け根の周辺だけで、胴体の他の部分や手足には鱗は無い。




 五感は狼種に劣る程度の鼻とエルフに及ばない程度の耳。夜目が利く以外は一般的な人間と大差はない。

 基本的に肉を好むが雑食。特に甘いものと酒を好むが辛いモノは他の獣系亜人種同様に致命的に不得手。クシャミと涙が止まらない上に無理に食べれば腹を下す。意図的に食卓に供すると宣戦布告と同義。


 獣系亜人種では唯一発情期が無く子供が非常に授かりにくい事で有名。

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