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憧れを振り抜いて②

更新遅れました!!

また明日からお願いします!

「___っ!」


『勇者』を裂いた斧、それを、振るった右腕が、カッと熱くなった。


「ぐぅっ」

「セレウコス!!」

パールの叫び声と同時に回復魔法の光が腕を包む。

が、それ以上に強い光が俺の腕から放たれ始める。

なんだ、、これっ!


「隙だらけね。貴方たち」

ドカーンッ、地面が揺れる。


ああ、くそ、


イネスが爆発魔法で、俺に襲いかかろうと転移してきた『勇者』達を倒した。


カッコつけたの、台無しじゃねぇか。


「弱ってる奴にすぐ飛びかかる。さっき、幻影を見せたときと同じ。考える頭もないのね。」


イネスがそう言って鼻をならす。


「セレウコス!大丈夫ですか!光ってるところを見せて___っ」


「パール!!

って、おい!!2人もかっ……!」


俺に駆け寄る途中でパールがうずくまった。しかし、周りを見ると、イネスも、ササンも、苦しそうに体を震わせている。


そして、俺の右腕と同じように、3人の体の1部がそれぞれ強く輝きだしていた。


パールは胸元

イネスは額

ササンは背中が

それぞれ光を放っている。


「くそっ」

左腕で顔を隠す。

眩しさで目が焼き切れそうだ。

いったい、何が起こっているんだよ!!


「勇者の紋章は相応しい精神と結びつく。」


は、?

この声は……エクレ、か?


「もし、仮に、勇者の紋章に相応しくない者の手に紋章が渡ったとしたら、紋章は定着せず、

きっかけさえあればより相応しい者の元へ簡単に宿り先を変えるだろう。」


そっと腕をずらす。

光はいつの間にか収まっていた。

そして、俺の右腕には……


「勇者の紋章、センスないな〜!お前たちなんかを選ぶだなんて。」


勇(・)者(・)の(・)、紋(・)章(・)


エクレは笑って続ける。


「他に倒し損ねいないの?僕、もう一個くらい勇者の紋章ほしいなぁ。」


「まて、エクレ!」


「なに?君たちは、不(・)相(・)応(・)なのに、元々選(・)ば(・)れ(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)のに!

可哀想な、適合ゼロな『勇者』たちから、殺して紋章を奪い取ったんでしょう?

それなら、僕だっていいだろう!」


「っちがう!さっきの勇者の紋章が私達を選んだという言葉!それがどういうことか説明するんだ!」


引き止めるササンのほうをエクレは面倒くさそうに振り返る。


「はぁ〜?だから持ってるんだろう?そ(・)れ(・)!

そ(・)の(・)紋(・)章(・)は、この遺跡の人工「勇者」たちから、不相応にも得たものだろう?

宿り先を失った紋章に君たちが選ばれたからそれを得たんだろう?」


「ま、詳しくは、そこの遺跡を見てみたらどうだい?

紋章の研究がどっさりだったし。」


シュンッ、エクレは転移して消えた。


右腕を見る。そこにあるのは、確かに勇者の紋章。

上からなぞり、握りしめる。

選ばれた、不相応にも、勇者の紋章に?

宿り先を失ったから、俺が殺して、

『勇者』をころして

『勇者』が、しんだから___


腕を掴む力が、どんどん、強く、なって……



ギチリ、音が鳴るほど右腕を強く握りしめている俺を見て、ユーリが眉を下げる。


「その、勇者たちは、魔王によって勇者の紋章を植え付けられた、人工人間だったんだよね。」


「ああ」


「でも、美しい金と青の色彩を持っていた。


……だからセレウコスは勇者がすっかりトラウマになってしまった訳だ。」


はっきりと口にするユーリから目を逸らす。


「ああ、そうだよ。

……多分、ササンにもバレてる。

俺、正直、仲間達の勇者の転移にも、過剰にビビってた自覚があるんだ。


だからってのも、あるんだろうな。今回の旅にユーリがいるのは」


途中から勇者の紋章を得た俺達は、まだ、勇者の転移を連続して使えない。だから、移動するとき、転移を使っても実際そこまで時間短縮にはならない。

だが、転移をできるもの同士で旅をしたら、何かと転移を使うことになりやすいだろう。

しかし、そこに転移をできない人が、ユーリがいるだけで、少し変わる。

俺が無理に勇者の転移を使わなくていいように。


それと、俺にとって、最高の勇者であるユーリと話して、少しでも勇者に対する感情を整理できるように。


そのために、サ(・)サ(・)ン(・)は(・)今(・)回(・)の(・)旅(・)に(・)ユ(・)ー(・)リ(・)を(・)遣(・)わ(・)せ(・)た(・)の(・)だ(・)。


「俺にとっても、それは助かることだったよ。

ひとりじゃもう、どうしようもねぇ。

こんなに長く頭の整理がつかなくなったのは初めてなんだ。

家族が殺されたときだって、強くなるんだって、前を向けたっつーのに。

今は、さぁ

だから、俺も、どうにか誰かに相談した方がいいのかと思ってはいたんだ。」


ふぅ、と息を吐き出し、ユーリの方を見る。


「まあ、俺のためだけじゃねぇかもしれないけどな。ユーリが遣わされたの。

最近のササンは、今まで以上に考えてる。

俺にはもう、ちっとも分からん。」


「あはは!確かに近頃の王子は凄まじくキレキレだ。」


まあ、でも、セレウコスの推理だって、100点満点ってところだよ。


笑いながらユーリは話す。


「王子に言われたよ。できるなら、セレウコスの話を聞いてやってくれって。



だからまあ、これで俺のお役目は終わりかな!」


クルリ、こちらを見ていたユーリが星空の方を向き直る。そして、そのままゴロリと丘の芝生に寝転んだ。


「……はあ!?

ほんとに、話聞くだけのやつがあるかよ……」


ユーリが何も言わないので、仕方なく、俺も同じように寝転んだ。


キラリ、星が輝く。

ヒュー、と風が吹く。

ユーリはそれを静かに見つめていた。


「だからこれは、お役目じゃなく。

君の友人として言うけど。」


ぽつり、ぽつりとユーリは言葉を続ける。


「らしくないよ。セレウコス。


勇者エクレに言いたいことは全部自由に言えばいい。

謝ってきたのに許せなかった?

どうしてそれを正直に言わなかったの?

『わかった。だけど、ごめん。俺はまだ許せない』くらいセレウコスは普通に言ってただろ?


勇者の転移にビビってた?それが周りにバレてた?

バレるも何も、君はいつも怖いものは怖いと素直に言ってたじゃないか。どうして、勇者に関してだけ口を噤んでしまうんだい?」


「勇者の紋章が、重すぎる?

なら、その重さに耐えられるように努力すべきだろ!

セレウコスは、今までそうしてきたじゃないか!?


君に、それが、不相応か、相応かはこれから決まるんだ。

決して過去によって決定するものじゃない。

今、行動しなければ何も始まらない!


君は!」


「何も抱え込まず!

何も考えず!

ただ、一心に


その斧を!力を!振るっていけばいいんだよ!」


ユーリは、どんどん、声を荒らげていって、最後にはもう、ほとんど叫ぶようにそういったあと、


「君の良さって、そこだっただろう……」


そう、絞り出すように言った。


「ユーリ、」



「あー失敗したぁ!

せっかく、落ち着いて話せるように、我が癒しスポットまで来たって言うのに!」


へらり、と笑ったユーリがこっちを向く。


「ごめんね、怒鳴っちゃった。


君は、魔王討伐の旅で色々苦労して、僕に想像もできないほどたくさん苦しんだだろうに、

上から目線で、こんなこといって。」


いや、と俺は首を振る。


「ありがとう。ユーリ。

まさか、相談した相手に、『悩むな!』みたいな返答を返されるとは衝撃だけど」


ピシリ、ユーリが気まずそうに固まる。


「でも、そ(・)れ(・)が(・)あ(・)っ(・)て(・)る(・)。」


体中に湧き上がる力のままに立ち上がり言う。


「はは、そーだよ。そーだよな、

俺、難しいこと考えるの下手くそだから!」


「……そうだよ!セレウコスはデリカシーないアホなんだから!!」


「おい!」


ぱっと、ユーリも立ち上がり、そう言ってイネスの寝るテントの方へ、丘を駆け下りていく。


「はは、まてよ!」


「やーだー!」



テントに近づくと、傍らに人影があるのがわかった。


「……さっさと寝なさい!!!」


「「イネス!」」


怒鳴られたのに、二人で目を合わせて笑って、高ぶった気分のまま話しかける。


「はは、心配して起きてたのか?

ちゃんとユーリと話して解決したから安心していいぜ!」



「__っ、誰がアンタの心配なんかするですってぇ?

ふざけてないで、さっさと寝なさい!」


イネスが杖を振り上げた。

ユーリが、あーあ、という顔をする。


やべ___




ピヨッ、ピヨッ、鳥が鳴いている。

前回この武器庫に来たときは、気がつかなかったな。


「仲間に睡眠魔法とか使うなよ~」


「あら、後遺症もない、完璧安全な魔法なのに。

眠れないほど体力が有り余っちゃってたアンタに親切でかけてあげたのよ」


そう返しながら、イネスがアーカードから受け取った、『情報を保護するための籠』や、その他たくさんの小物を鞄から取り出す。


「さ、これから私は、武器庫の扉に一度魂を吸収させて、リアの魂を探すわ。」


「はい!僕たちは中でイネスの体を守って、君が魂を回収しきるまで待ちまーす!」


「そう、あと、この私が持ってきた物を何一つ無くさない・壊さない・触らないように全力を尽くして。

アーカードがリアの魂に関係が深いものがあった方が繋がりから魂を見つけやすいと言うからもってきた私とリアの___


すごく、大切な宝物たちだから。」


イネスはそこまで言うと一呼吸して


「お願い」

と頭下げた。


「は!もちろん完璧にやり遂げてやるよ!


この俺の腕を振るってな!」


ぽん、と俺は右腕を叩く。


「はは、お決まりの言葉!

かっこよく言ったところ悪いけど、狭い武器庫の通路で君の腕を振るう機会はない方がいいかな!」


「そうね、斧は自粛しなさい。」


「おい、なんだよ〜」


ニヤリと笑うユーリとイネスに、俺は眉を寄せて文句を言ったのだった。

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