最終話
前回の事があるので、少し気まずいのだけど、彼女の家に行く。
彼女は特に何も言わずに部屋に通してくれた。向かい合うように座ると彼女が言った。
「何でこの前受け取らなかったのですか?」
あ、やっぱり気にしていたのか。
「なんとなく?」
「イオリはずるい」
「え?」
「ずるいんです。今まで平気だったのが平気じゃなくなる」
「うん」
「勘違いしそうになる。私と同じ気持ちなんじゃないかとか」
「……」
「この空間、時間を壊したくない、でも寂しいんです。イオリは何で私をさんを付けて呼ぶの? 名前で読んでよ!」
彼女の本音を聞いたのは初めてかもしれない。俺がビックリして答えに詰まっていると彼女が言う。
「今のは忘れて下さい。取り乱しました」
「良いの本当に忘れて?」
「……ダメです」
俺は気持ちを隠すのをやめた。
「かずね。好きだから」
彼女が笑顔になって言う。
「はい。私もイオリの事好きです」
俺はおもむろに立ち上がると、本棚から読みかけの本を取り出し彼女の後ろに背中合わせで座る。彼女の体温を感じる。
ノートへ字を書く音と、本をめくる音だけが響いていた。
<完>
おまけ! 『その後の二人?』
並んで歩いていると急に立ち止まってかずねが言う。
「イオリ腕組んで歩きたいです」
「無理」
「工藤さんはしたのに?」
「え! 何で知ってるの?」
「あ、やっぱり、あれは工藤さんか……」
こわ! なんか呟いてるし……俺はかずねの手をとり繋ぐ。
「アレは無理矢理だったから。これでかんべん!」
かずねは笑顔で言った。
「しょうがないですね」
俺たちは手を繋ぎ歩き出した。