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第三十六話 手抜き臭いけど一応オチたし関係ない……よね?





最終話! みんな有り難う!

―前回以後の話―


 ルジワン・バサイの死によりフェリキタス島事件は終結し、グラーフの手引きにより繁と香織は地球へと戻っていった。

 以下は、それ以後のカタル・ティゾル各地での動きである。


 一時的に再結成されるも事件終結と同時に再度解散されたツジラジ陣営の各メンバーは、その後もそれぞれの生活を満喫している。ニコラは不死身の肉体でのセルフ人体実験を極め、桃李と羽辰はサイエンスライターや教員など活動の幅を広め、リューラとバシロもまた生体災害応戦士としてだけでなくタレントやグラビアモデル等様々な分野での活躍を続けている。日を追うごとに様々な才能を開花させ続ける春樹は軽い魔術までも習得するに至り、璃桜は夫や子供達と共に幸せな日々を過ごしながら同年代の友人達と共にスポーツや芸術でアマチュア界隈に名を残し、ケラスは飲食店の経営だけに飽き足らず料理研究家としても活動を開始しつつある。


 蝿帝ことサウス・ケントの真相が明らかになったエレモスでは、邪悪の道に走るも改心し世界の為我が身を犠牲にした英雄とでも言うべき男に敬意と感謝を表すべく盛大な葬儀が行われた。また、彼が蝿帝となってしまった原因を作った者達は『間接的に大勢の人々を死に至らしめた』として法の元に裁かれたのだが、驚くべきことにはその多くが自らの罪を深く悔いる余り、進んで死刑に処される事を望んだという(実際死刑に処された者はその半数程度であったという)。


 今回の事件の舞台となったフェリキタス島は、その後ラビーレマ政府や幾つかの慈善団体等を中心とする有志の集団による復興が進み、徐々にではあるが全盛期の姿を取り戻しつつある。島の中央には事件の全容を物語る資料館が建造されており、その中央には事件により命を落とした者達の慰霊碑が立ち並ぶ。骨肉樹による侵食から生き残ったあの幼い姉弟はその後ヤムタに移り住み十日町家の養子となったが、やがては島に戻り、事件の全容を後世に語り継いでいきたいと話している(今も定住には至っていないが定期的に里帰りはするらしい)。


―虚無の中―


「……っく、はぁ……」


 あれからもう何日が過ぎただろう。ある時突然目覚めた私は、何所までも虚無ばかりが広がる淀んだ空気の中を、あてもなく彷徨い続けていた。ここが何所かとか、何故死んだはずの私がこんな所に居るのかとか、そんな疑問など最早どうでもよくなっていた。ただひたすら、抜け出したいという一念から必死に歩き続けていた。


「ふ……ぅ……」


 一体何時になればこのわけのわからない空間から抜け出せるのだろうか。いや、そもそもここから抜け出すことなどできるのか。抜け出した所でそこがここより住み良い環境なのか。頭の中で様々な考えがループしては、ヘドロのように溶けて脳の血管に詰まるような感覚に襲われる。いっそ死ねれば楽なのだろうが、疲れ果てた私には自らの舌を噛み切る力さえ残っていないし、歩みを止めようにも動作が体に染みついてしまっているせいか止まるに止まれないでいた。


「……――くそ……――」


 辛うじて維持されていた私の意識が途切れたのは、最後に言葉を発してから凡そ五歩程度歩いた頃の事であった。


「(……これで漸く、死ねる……)」


―一室―


「――……?」


 ふと、目が覚めた。最初に飛び込んできたのは、蛍光灯のものと思しき白く眩しい光。続いて、それを反射する白い天井だった。病室か何かだろうかと仮説を立て、徐々に私自身を取り巻く状況を把握していく。

 右手首から延びるのは、透明な液体の通う管。全体を見るに点滴なのだと分かる。

 身体の下には清潔なマット、上には清潔なシーツ。ならば、私は今ベッドに寝かされているのだろう。

 つまりここは――


「……病室、か」

「気が付きましたか?」

「っ?」

 声がする。この病室の管理者だろうか。目を遣れば、線の細い美人がいた。身なりや所作は女性的だが、確かに男性だろう。

「ええ、お蔭様で何とか……」

「そう、それは何よりですわ。でももう暫く安静にしていて下さいね?」

「あぁ、はい(何だろう。この男、何処かで見たような……)」

 程なくして私はその男に聞いてみた。ここは何処で、貴方は誰か。私は何がどうしてこうなったのか等――男は私の問い掛け全てへ丁寧に答えてくれた。

 曰く、彼の名は『アイル・ア・ガイアー』。それで思い出したが、彼は我が親友の息子にできた友の一人だったのだ。見覚えのある顔だと思ったらそういう事だったのか。

 続いて今私と彼がいるこの場所――否、より厳密にはこの"空間"と言うべきか――の名は『臨母界』というらしい。何でも志や力を余したまま死んだ者達に新たな人生を与える場所だそうだ(それとは別に霊界というのもあるらしい)。そしてそこに住まわすかどうかはこの世界の管理者が決めるらしく、本来ならば私もまた死人の中から臨母界へ引き上げられ、正規の手順で住民に加わる予定だったらしい。だが引き上げの際に幾つかのシステムへ不備が生じ、私は臨母界と霊界の隙間にある空間へ落ちてしまった。その空間は普段、ほぼ存在しないものとして扱われており、通常内外から何かが出入りすることも一切ないためにひたすらの無であるという。それを知らずに黙々と歩き続けていた私は、やがて行き倒れ救助隊に保護され今に至るというわけだ。

「では、少し用事がありますので失礼致しますわね。ご用がありましたら備え付けの通信機で御報せ下さいませ。私か、私が無理な時は助手が代わりに参りますので」

「はい。解りました」

 かくして彼は病室を去り、私はそこで暫く眠り続けた。その後も特にトラブルらしいトラブルはなく、やがて十分に体調の回復した私はこの臨母界を管理する八議長の筆頭、マイノスと面会する。


 そしてここで私は、思わぬ相手との再開を果たすのだが――それはまた、別の話。

それじゃみんな、またなッ!


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