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 もしかしたら、あたしが目覚めたときのあいつの言葉は、自分の体力をあたしに分け与えたため臥せってしまう自分を見せたくないために言ったのかもしれない。あんなことを言われたあたしがとる行動は、生まれてから一緒にいるあいつが分からないわけがないのだから。

 違うとしても、あいつはあたしに嘘をついたわけであって。

 その嘘があいつにとってなんのメリットもないことは明白で。


 あいつの名前を叫んだせいで咳き込んでしまう。咳き込むのはあたしの部屋から走ってきたからかもしれない。あたしの部屋におじいちゃんを置いてきてしまったけれど、今のあたしにはおじいちゃんの心配なんてしてられなかった。


「居るんでしょ、ちとせ!入るよ!!」


 ちとせが優しさを奥に隠してしまった頃から、ちとせの部屋に入っていいのはちとせが鈴を鳴らしたときだけ。だけどそんなもの関係ない。


 あたしは襖に手をかけた。


「……なんだ、うじ虫」


 いつものように片膝を立てて座っているちとせを見て、なんだか目が熱くなった。


「なんであんた……嘘ついたのさ」

「嘘?」

「誤魔化さないで!侵入者、あんたがけしかけたんじゃないじゃない!!」


 ちとせはふむ、と顎に手を当てて、あたしを下から眺めた。


「儂は一言も侵入者を貴様にけしかけた、なんて言っておらんぞ」

「なっ!」

「貴様が勝手に米粒よりも小さい脳で思い込んだだけであろう」

「……!」


 そうだ……そういえばちとせは一言も言っていない……!


 あたしは顔に血液が逆流するのを感じた。


 恥ずかしい……。自分で勝手に怒ったり切なくなったりして……。


 へなりとちとせの部屋に座り込んだあたしは、恥ずかしさのあまり顔があげられなくなった。うわあ、本当にあたしは……。


 悶絶していて気付かなかった。あたしの座り込んでいるところまで、ちとせが歩み寄っていたことに。


「その汚い顔をあげろ、クズ」


 ちとせの白い指があたしの顎を支え、むりやり上を向かされた。あたしと向かい合うのは、狐のお面。だけど、面の小さな穴の奥に、宝石のような赤い石が見えた。

 ……ちとせも、あたしと同じ、赤い瞳なんだ……。


 ぼんやりとそんなことを思っていると、ちとせの瞳が優しさを帯びていることに気付いた。

 お面の奥は、こんなにもちとせの優しさがあふれている。


「儂は貴様がいないと生きていけん。侵入者などわざわざ貴様にあてがうものか」

「……ごめんなさい……」

「貴様をいびるのは儂だけだ。他の何人たりとも貴様をいびる役目はやらん」

「……」


 不意にいわれたその言葉に、不本意ながらも先ほどの恥ずかしさなんて比ではないくらいに、頬が熱くなるのを感じた。思わずのけ反ってしまったけれど、その分をちとせが身を乗り出すことで距離を詰めてくる。



「貴様は儂のものであって、儂は貴様のものでもあるのだ」


 ―――その言葉に、脳がついていかない。

 あたしのそんな姿をみたちとせは、あたしの顎から指を離し、今度はあたしの髪の一束を握ってため息をついた。


「貴様が言ったのだ。儂とずっと一緒にいたい、と」

「……?」


 たしかに小さいころそんなことをいったかもしれない。だけど……?


「貴様の側にずっといて欲しい、そう願っての『ちとせ』なのだろう?」

「あ……」

「貴様が儂に名前をつけたそのときから、儂はその名の通り、貴様の側にいてやることにしたのだ。文字通り、ずっと、な」


 髪にくちづけしたちとせは、ふっとひとつ笑ってからあたしのところからいつもの定位置へと戻っていった。


 その様子をぼんやりと見つめていたあたしは、最後の最後までやつに翻弄されることとなる。





「眠くなった。その小汚い膝をよこせ。喜べ、儂の枕としてやろう。―――早くこんか、せつな」



 ああ、もう……。これだから神様なんて……。





「大好き」






「何か言ったかうじ虫」

「そのうじ虫ってのやめてよ」

「儂に口答えするのか。貴様の分際で」

「あーもうわかったよ早くねてよ!」









これで完結です。

あんまりせつなを苛めれませんでした……。心残りです。

神様もドSってよりなんか……ただ素直になれないだけの面倒くさいやつになってしまいました(笑)

神様視点も書きたいなぁ。まだ説明しきれてないところもありますし……。

とりあえず!ここまで読んでくださってありがとうございました!!

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