第22話:水曜の怪談
この物語はフィクションですが、
登場する人物・団体・名称等は、
実在のものが意識されています。
本作品は特撮作品及びその関係者を批判するものでなく
全ての特撮作品へのリスペクトを持って執筆しています。
この場を借りて情熱をもって素晴らしい特撮作品を
作られたすべての方々へ謝辞申し上げます。
「なぁff0000! わしらでも特撮を作ろうぜ!」
暇を持て余した神々である彼等が、
そういう遊びに手を伸ばすのはある意味
必然とも言える流れだった。
「そうですね。私も彼等の技を真似してみたいです」
「俺も0000ffと同じだ。
魔王様と同じ制限で、映像作品を作る。
考えただけでわくわくする」
その思いは確かにノアにもある。
しかし、ひとつだけ懸念材料があった。
「確かに特撮映像は作ってみたい。
でも、ストーリーは?
ヒーローや怪獣、怪人のデザインはどうするの?」
神々には創作の概念がなかった。
もしも何かをデザインしようと思えば、
それはすべてAIに任せるだけでいい。
だから、ストーリーを作るためには
『ヒーローが活躍する台本を書いて』と
AIに指示するだけで良く、デザインもまた
『正義のヒーローをデザインして』と
一言呟くだけですべてが終わる神の言葉だった。
しかし今、彼等はそれを否定している。
「私達はもう自力での創作を忘れてしまった。
そして、彼等の時代にAIはなかった。
なら、私達はどうやって創作をすればいいの?」
特撮はただの「技術」に過ぎない。
その技はラーニングできるし、
新しい技を作り出そうという意思にも共感できた。
だが、そこまでだ。
今の彼等には過去作の焼き直ししかできない。
特撮好きの「オタク」が過去作をリスペクトし、
独自のエッセンスを加えるだけ。
そんな「ごっこ遊びのごっこ遊び」でも
良いと言えば良いのかもしれない。
それでもノアは悩んでいる。
本当にそれでいいのかと。
それもこれも彼女がこの4人の中で
一番魔王に共感しているからに他ならない。
特撮を楽しむために神の力を捨てる。
しかし、特撮を作るためには
もうとうの昔に捨ててしまった力が必要。
この難題に対する回答が……
「私にいい考えがあります」
「0000ff?」
幼馴染であり親友でもあるシグから出る。
「好きな特撮技師の思考パターンを、
ラーニングしましょう」
「お! その手があったか!
ならわしはあのB級特撮の……」
「俺はあの怪人デザイナーだな。
あの技が使えればお前達のサポートもできる。
それ以上に俺はあの方の殺陣の技術が……」
こうして3人の方向性が纏まりかける一方で。
「…………」
ノアはまだ、悩んでいた。
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
リンネは既に魔王軍の正体を知っている。
彼らは超科学を持つ未来人だ。
曰く、魔王軍には四天王がいるらしく、
リンネは既にそのうち2人から自己紹介を受けている。
1人目が三日月のミケ。
先の大会の決勝で戦った男性であり、
書道が得意で殺陣もこなす金髪イケメンだ。
2人目が蒼い旋風シグ。
優しげな口調だが怪獣を語ると日が暮れてしまいそうな
かなりの濃さがうかがえる青髪の褐色美少女だ。
リンネはこの2人に対して、
年齢も性別もすべて違うものの
明らかに自分の知る憧れの特撮技師の面影が
土台背景に見え隠れしていた。
しかしその正体は未来人。と、いうことは。
(転生者? いや、違うな。
熱心なファン? それにしては面影が強すぎる。
だとしたらおそらく……
記憶と技をダウンロードのような形で取り込んでいる)
それがリンネの仮説である。
となると、おそらく四天王残り2人も
有名な特撮技師の技を受け継いだ人。
名のある人物ならばこそ、
その人の作品にはその人の『色』が出てしまう。
という前提から考えれば。
『梅魔神様ー! 梅魔神様ぁぁぁぁああああ!』
「……冗談じゃないよ、おい」
オーロラビジョンに流れる魔王軍の映像に
くすりと笑いつつ小声でレジェンドの持ちネタを
呟いてしまうリンネ。見るからにチープな
B級特撮めいた映像といい、
こんな絵を撮るバカ(とても良い意味で)は
もはや1人しか思い当たらない。
(ここまでの四天王の3人に並ぶ4人目……
一体、誰なんだろう。
そして四天王がいるということはきっと、
その先にチャンピオン、彼らの言う魔王がいる。
特撮で魔王と言えばもうあの人しか思い浮かばない。
でも……本当に?)
世界を恐怖で支配しようと企んだ魔王軍。
その究極目的が邪悪なものではないとはいえ、
人と超越してしまった存在ならでは驕りを
既にリンネも実感してしまっている。
魔王軍の目的は不明。
だが、どうにか止めねばまずいような、
漠然とした思いだけはある。
しかし、だとしても。そうだとしても。
(この人たちの作る特撮を、もっと見たい)
そう思ってしまう程度には、
リンネは特撮オタクなのだった。
ふっ、と笑って今回の映像の終わりのテロップから
目を落としかけた、その時。
『聞こえてるかぁ!? 勇者リンネぇ!
それと、勇者を信じる人間共!』
映像の中から名指しされ、ハッと目をあげる。
にやにやと笑っていたのはいつもの特撮幹部とは違う、
子供のような体格にコテコテの特殊メイクの少年だ。
あれはただの役者なのか、それとも、
まだ見ぬ四天王のうちの2人なのだろうか。
『てめぇが作った学校だがよぉ、
忘れてねぇか? 学校と言えば……怪談だろぉ!』
「はっ!?!?」
し、しまったぁ! それを!
それを忘れていたぁ!
特撮といえばメインジャンルはSF!
しかし、それに続くジャンルといえば、ホラー!
そして学校といえば怪談!
そんな怪談を映像で作られてしまったら……
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「入学希望者が、減っちゃうよ!!
おのれ魔王軍! ゆ゛る゛せ゛ん゛っ!!」
いつものように拳を握りつつ
『許せん』に濁点全開で叫ぶリンネなのだが。
「……いえ、その、学長。
大変申し上げにくいのですが……」
目をそらしつつ申し訳なさそうに言葉を濁す教授陣。
そんな彼らを代弁するように、
ため息をついたイサムが挙手して。
「入学希望者はな、減って欲しいねん」
ミスカ大学はリンネの強い希望により
入学試験なしで入学希望者すべてを受け入れ、
衣食住を完全保証するという究極的な
セーフティネットのような役割を担っている。
必然的に学生の数は雪だるま式に増えていき、
増えた学生を収納するための教室と寮の建設は
今日も止まることもなく続いている。
生徒数は現段階で既に8000人を越えており、
もはや普通に学園都市である。
貴族達の後援に加えギルドと提携しての特許管理で
学園都市状態の施設を広げていく毎日ではあるのだが
それでもやはり入学希望者は殺到する。
入学した者は皆、
新たな特許を生み出す技術を開発するか、
支援してくれている貴族の元で働く
優秀な労働者に生まれ変わる金の卵。
結果的には投資は100%以上で帰って来る。
が、それはそれとして数が多すぎる。
ライダー大戦やプリキュアオールスターズが
少ないと思えてしまうほどの生徒数だ。
特に教授陣の少なさが問題で、
実際入学希望者へ大声でこそ言えないが
減って欲しいというのが一同の本音だった。
ということで。
「別にええやろ」
と、真顔で告げるイサムに対し。
「別にいっか!」
と、魔王軍の妨害工作を
むしろありがたく頂戴するリンネであった。
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こうして魔王軍による恐ろしいネガティブキャンペーン
学校の怪談計画が実行に移させる。
後日オーロラビジョンで公開された特撮、
学校の怪談に市民は恐怖のどん底に突き落とされる!
『うわぁぁああ!』
人体模型に変わって、吸血鬼が走る!
(吸血鬼だぁ……
西洋風世界で学校の怪談で出る妖怪って
なんだろうなぁってちょっと楽しみだったけど、
吸血鬼かぁ……)
『うわぁぁぁぁああああ!!』
二宮金次郎に変わって、狼男が走る!
(あ、狼男も出るのかぁ……
まぁ二宮金次郎とか出ても困るしなぁ……
しかし吸血鬼に狼男と来たら
次はフランケンシュタインなんだけど、
そのネタ多分私にしかわかんないよぉ……?)
『うわぁぁぁぁぁぁああああああ!!』
テケテケに変わって、謎のおじさんも走る!
「誰ぇぇぇぇええええ!?」
「何言っとんのやセンねぇ!
どうみてもアリストテレスや!
教室に飾ってあるアリストテレスの絵やで!」
「アテネの学堂!?
ていうかなんでアリストテレスが通じるの!?
もしかしてアリストテレスは人名じゃなくて
万学の祖概念扱いで自動翻訳されてるの!?
ガバすぎないかなこの翻訳機能!?
アリストテレスの提灯くらいのガバ!」
「なんで今ウニの話したんや!?」
「うわぁぁぁぁああああ!!
通じてるぅぅぅぅうううう!?」
とまぁご覧の有様であり、
恐怖に震えるのは子供まで。そもそも……
(B級感がすごくて変な笑いの方が先に出てくる……!
明らかに撮らせる人選間違ってるでしょ……!
折角大学名にミスカってつけたんだから、
ミケさんに宇宙的恐怖をモチーフにした
怪人のデザインからやらせてよ……!
すっっっごく、見たいのに!)
と、すっかり魔王軍と心の奥底では馴れ合い
毎回の魔法放送を楽しみにするリンネだった。
が、しかし。
こうして茶番めいたやり取りの裏で。
「ユミ、どうしたの?」
「あぁ、いやね。私今週、鳩当番なんだけど。
南洋調査に行ったゼミとの鳩連絡が
なんか途絶えちゃってるみたいで……」
「そうなの? それ確か、
ナオの友達も行ってるやつでしょ?
心配だなぁ……」
既に本当の恐怖映像の撮影は。
「ところでチサ、サノシ先生の具合どうなの?」
「うーん、なんかおかしくなっちゃってるんだよね。
放って置くと自傷はじめちゃうから、
仕方なく拘束衣を着させて入院させてるんだけど、
こないだチエと見舞いに行った時にも、
ずっと何かに怯えるように叫んでたんだ」
もう、始まっていたのだった。
『助けてくれぇぇええ!!
やつらが! やつらが来る!!』
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気に入った方は前作もよろしく。
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