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異世界を恐怖で支配する魔王の力は全部特撮なのにこの世界の人たちは私の言葉を信じてくれません! ~総天然色異世界~  作者: 猫長明
第1章:異世界を恐怖で支配する魔王の力は全部特撮なのにこの世界の人たちは私の言葉を信じてくれません!

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第11話:勇者の大勝利!!永久に輝けゴメスの目

この物語はフィクションですが、

登場する人物・団体・名称等は、

実在のものが意識されています。


本作品は特撮作品及びその関係者を批判するものでなく

全ての特撮作品へのリスペクトを持って執筆しています。

この場を借りて情熱をもって素晴らしい特撮作品を

作られたすべての方々へ謝辞申し上げます。

「はっはっはっ! あなたのおかげだ!

 まさかこんな方法で鉱山を再生するとは!

 本当にありがとうございます!

 セーデルルンド嬢!」

「……ふふっ」


挿絵(By みてみん)


 鉱山は、いつか必ず枯渇する。

 枯渇せずとも、長い掘削が続いた鉱山は

 地下深くからの土を運ぶため、

 鉱夫達の労働コストが、つまり、賃金が増加し

 収益が下がってしまう。

 水晶伯の鉱山は、既にその状態にあった。


 その鉱山を再生するため、

 リンネは水晶伯にある提案をした。


「ゴメス・ザ・ライド……?」

「はい。水晶伯さんの鉱山を改造し、

 魔王軍の嘘を暴くプロモーション施設……

 テーマパークに、作り変えます」


 魔王軍の恐怖は世界中の人々の関心の種だ。

 人々は魔王軍の映像に怯え、

 それを「嘘だ」と言ってくれる勇者の言葉を、

 安心を求めている。その思考バイアスが、

 リンネのショーの反応にも現れていた。


 もしも、そのショーを恒常化できれば。

 スタントの技量を研鑽したリンネでなくとも

 ショーを開催できる場所を作れたら。


「人が集まり、儲けを産みます。

 観光収入と屋台で無限に稼げば、

 もう水晶を掘る必要もない」


 トロッコを利用した特撮映像の視点。

 ビデオを使わない特撮の再現。


 簡単な演技を教えた元鉱夫の人達で

 運営されるアトラクションを楽しんだ人々が

 存在しない大怪獣の存在を見て

 魔王軍の恐怖を思い出してしまうのは

 前回の通りだった。


 しかし当然、これでは終わらない。


 何故なら大怪獣など、存在しないのだから。

 彼女の目的は、魔王軍の嘘を暴くことなのだから。




▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼




「大変なものを見ちまった!

 やっぱり魔王軍も大怪獣も本物なんだ!」


 怯える3人の一般人を満足げに眺める魔王軍。

 なかなか面白い物が見れたと5人共満足げだ。


「よし! 帰るかの!」

「ここから地上まで歩かねぇといけねぇのは

 めんどくせぇが、イイモン見れたんで

 チャラにしてやるぜ」


 と、スロープを登ろうとする5人だが。


「お待ち下さいお客様。

 まだゴメス・ザ・ライドは、

 半分しか終わっておりません」


 5人の前に屈強な鉱夫が立ちはだかる。


「半分じゃと?」

「はい。下りがあれば上りもある。

 みなさんはこれから地上に戻るのですが

 そこで今見たものの真実の姿を見てもらいます」


 下りがあれば上りもある。

 下りで魔王軍を信じさせ、

 上りで魔王軍の嘘を暴く。


 そう、このアトラクションの目的は

 特撮の裏を見せること。

 ノンストップのトロッコでは

 じっくりと見れなかった特撮の裏を

 落ち着いて見せることにあるのだ。


「なるほど、面白い」

「私達としては複雑ですが……

 確かになるほど。単純に面白そうですね」


「はい、そこでなのですが。

 お客様には4つの上りコースが用意されています」

「4つ?」


 うまい商売だ。少なくとも4周させてくる!

 まるで限定トレカ付きの映画上映のようだ!

 しかし4つの角度からセットの裏を

 じっくりと見せて貰えるとは……いいじゃないか!

 なら喜んで4周するぞ!


 と、資本主義に飼いならされた魔王軍だが。


「トロッコに乗り鉱夫に押してもらう

 VIPのAコースは1000クレ。

 普通に歩いて戻るBコースは300クレ。

 みなさんでトロッコを押すCコースが100クレ。

 トロッコに砂利を積んで戻るDコースが50クレです」


 資本主義は怖い!!


「「「「はぁっ!?」」」」


 そう、このトロッコには動力がない。

 ならばしっかり乗ってきたトロッコを、

 上に戻して貰わねばならないのだ!


「ちょ、ちょっとまちぃな!」

「なにか?」


「AとBはまだわかる! そういうもんだ!

 だがなんでCはタダじゃねぇんだ!

 ていうかDに至っては採掘の手伝いだろ!

 逆にバイト代貰ってもいいはずだぜ!」

「しかし、それでみなさん来てますし、

 説明もあったはずです。

 お支払いできないならこの先で

 半日ほど働いていただきますが……」


 聞いてないぞと慌てる4人だが。


「あぁ、はい。ありましたね」

「「「「シグぅっ!?」」」」


挿絵(By みてみん)


「だってみなさん、ポップコーン食べたり、

 屋台でいろいろ楽しんでましたから……」

「ま、まぁ、それは、その……」


「でも、そのためにちゃんと1000クレ分、

 両替で持ってきてますよね?」

「「「「!?」」」」


 5人は別にカネがないわけではない。

 しかし、このテーマパークで使える

 通貨に関しては事前に両替した

 1000クレしか持ち合わせがないのだ!


「はい、私はAコースでお願いします」

「「「「うぐっ!?」」」」


挿絵(By みてみん)


「私は……まぁ、歩けますが……」

「「「ノアぁ!?」」」


挿絵(By みてみん)


「仕方あるまい。俺も歩くぞ」

「「ミケぇ!?」」


挿絵(By みてみん)


「押すしか……ないか……!」

「キッカぁ!?」


挿絵(By みてみん)


 ここまでは、まだいいとして。

 問題は……


「わ、わらわは……」

「…………」


挿絵(By みてみん)


「……アキ様。私が払います。

 歩いてください」

「ノアぁ!! 愛しとるのじゃぁ!!」


 と、どうにか纏まりかけるが。


「ちょっと待ったぁ!」


 当然のように待ったが入る。


「キッカはトロッコを押してください」

「待て! 待てよ!」


「ではアキ様に押せと?」

「う゛っ……!」


 流石にクソガキキッカも

 魔王代理であるアキに押せとは言えない。


「あ! そうだ! シグ!

 お前一人だけ楽するつもりか!?」

「はい」


「わしら一蓮托生だろうが!

 自分だけずるいと思わんのか!?」

「思いません」


「くっ……! そ、そうだ!

 わしがおらんとここから先の解説に

 抜けが出ることになるぞ!」

「3人の解説で十分です。

 そもそも私もおそらく解説は

 アキ様からお話を聞ければ十分です」

「そういう意味でアキ様の分を払ったのもあるの」


「おのれらぁ! わしは……わしはぁ……!」

「往生際が悪いですよキッカ」

「カキタレといっしょに電エースを呼んでください」

「イカでもコアラでもカニでもいいぞ」

「……すまぬ、キッカ。上で待ってるのじゃ」


 こうして4人は歩き出す。1人を残して。


「覚えてろよぉぉぉぉおおおお!!」


挿絵(By みてみん)




▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼




 それはそれとして、キッカを残して

 帰りの道を歩き始めた魔王軍の4人と

 居合わせた一般客3人は、ここまでの裏を見る。


「あの地底の町はおもちゃだったのか……!」


 一般人がまず驚くのはそこから。

 近くでよく見ればただのおもちゃとわかる

 チープな作りではあるのだが、

 余裕のない状況で遠目で見てはまるで気付けない。

 それは既に自分たちの目が証明していた。


「ん? ちょっと待て。

 なんかこのおもちゃ、サイズがおかしくないか?」

「手前は小さいが、奥のは大きくなってるな……」

「どうしてなんだ?」


「それは、トロッコから見た際の見え方、

 遠近法を利用しているのじゃ」


 疑問を口に出した3人に、

 魔王代理、アキが解説を挟む。


「エンキンホウ……?」

「うむ。近くにあるものは大きく、

 遠くにあるものは小さく見える。

 経験があるじゃろう?」


「あ! 確かに!

 あれは遠近法っていうのか!」

「厳密には違うんですがまぁいいでしょう」


 一人トロッコの上から補填を入れるシグ。

 遠近法はあくまで平面に近い状況に

 奥行きを表現するための技法名の1つである。


「わらわは今、セットを逆から見ておる。

 これをトロッコの側から見た時、

 よりセットに奥行きが見えるようになるのじゃ」

「だから町があんなに広く見えたのか……!」


 なるほどと納得する一般人。

 ここでアキがミニチュアの隣に立つと……


「どうじゃ? わらわが巨大に見えるじゃろう?」

「本当だ! じゃ、じゃぁもしもここに

 でかいワニがいたら……!」

「ワニの大怪獣に見えるだろうな」


 腕を組んで頷くミケ。

 そう、これが大怪獣を演出するセットである。


「しかもこの町、燃えてなかったんだな」

「オレンジの光でそう見せていたんだ」

「燃やさなかったのはミニチュアが壊れるからか?」


「確かにそれもある。が、火の燃え方で

 町の小ささがバレるからというのもあるの。

 町を小さくしても、燃える火は小さくできんからの」

「そこまで考えて……!」


 こくりとノアが頷いて。


「本物を使うことで逆に嘘がバレることもある。

 むしろ特撮の嘘は、本物より本物に見えるのよ」


 納得した上で先に進むと……


「あれ? さっきと同じ町が……

 あっ! 別の物だったのか!?」

「考えてみれば当たり前だ……

 同じ町が燃えてたから気付かなかった……!」


「うむ。これがカット割りという手法じゃ」

「カットワリ……?」


 ついうれしそうに解説を挟んでしまうアキだが。


「アキ様、それ以上は」

「む、確かにの」


 ここを詳しく説明すると自分たちの首が絞まる。

 もとい、下手をすると何者かバレてしまう。


 と、ここで前方から。


「動いてるぞぉ!」


 前方から鉱夫の叫び声が響き。


「ひぃっ!?」


 思わず身を隠してしまうのだが。


「お客さん隠れて隠れて!」


 一同を死角に誘導したスタッフは、

 決してゴメスから彼らを守ったわけではなく。


「うわぁ!? 地底に町があるぞぉ!!」

「おい危ない! 落ちるぞ!」


 まもなく通過するトロッコから一同を隠したのだ。

 そして、トロッコが最初のミニチュアを

 通過すると同時に。


――ドンッ!!


「うおっっ!?」


 あの時と同じゴメスの足音が響く、が……


「つ、吊るしていた岩を落としただけぇ!?」


 スタッフがにやりと笑い、

 落として音を出した岩を再度鎖で引いて

 天井に固定する。


「じゃ、じゃぁ! この先の!」


 そこから先に一同が見た者は

 坑道の死角からトロッコに向け

 狂ったように石を投げるスタッフや、

 何もいない場所を指さして怯える鉱夫。

 そして最後に。


「ゴメス……の、目だけぇ!?」


 色付きガラスで作られた、ゴメスの目だった。


「じゃぁ……ということは……!」


 これら裏を見れば、気付いて当然。


「ゴメスなんかいなかった……!

 全部嘘だったのに、居ると思い込んでいた……!」

「そういうことじゃ。そもそもお主ら、

 一度でもゴメスの全身を見たのか?」


「「「あっ!!!」」」


 見て、いない。

 見ていないのに、想像してしまっていた……!


「な、なら……魔王軍の大怪獣……!」

「同じようなトリック。

 そう考えても、問題ないじゃろうな」


 こうして人は、魔王軍の嘘に気付く。

 少なくともミニチュアの町を用いた

 大怪獣の特撮に関しては、バレたと言っていい。


「で、でもまだビームとか!

 変身とか! 分身とか!

 あれの秘密はわからないし!」

「あぁ、わからない……わからないが……

 あれらもこういう、

 トリックがあるのかもしれない……」


 心から恐怖が晴れていく。

 魔王の呪いが、解けていく。


 テーマパークは夢に浸る場所。

 しかし、水晶鉱山跡を利用したここは、

 夢から覚めるテーマパークなのだ。


「……やってくれたな、リンネとやら」


 一呼吸を挟んで悔しさで思わず爪を噛むアキ。

 これは魔王軍の4人にとっては

 決して笑って見過ごせる状況ではない。

 彼らの目的は未だ不明だが、

 少なくともその妨害に働くことは間違いない。


「いかがしますか、魔王様」

「爆薬は持ってきております」

「ご命令あらば……」

「…………」


 目を瞑って考えるアキ。

 確かに。確かにこの施設はまずい。

 破壊しなければ、魔王軍の計画が……


「おいもう一回だ! もう一回並ぶぞ!」

「あぁ、トリックがわかった上で

 もう一度見てみよう。

 今度はきっと別の面白さが見えるぞ!」

「嘘だろうがなんだろうが、

 面白いことには間違いないからな!

 あ、嬢ちゃん達、解説ありがとな!」


 と、再びライドの行列に並ぶ3人を

 手を振って見送ってから、

 改めて、先程の質問に答える。


「必要ない。捨て置くのじゃ」

「はいっ!」


 その指示に、3人は胸を撫で下ろす。

 3人共、いや、4人共、思いは同じだった。




――こんな特撮愛に溢れた施設を爆破できるものか。


挿絵(By みてみん)




 それは確かに魔王軍の目的を考えれば

 判断ミスと言わざるを得ない。


 しかし、それでも、


「大怪獣ゴメスの名と、

 魔王軍が探し求める魔王の名に免じて……

 今日のところは、目を瞑るとするのじゃ」


 こうして魔王軍は敗北した。

 そして、勇者リンネの旅は、

 まだまだ続くことになったのだった。




▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼




「ふざけ……るなっ……!」


 が、しかし。ここに納得できない者が1人。


「わしは認めないし……許さん……!

 覚えてろよ、リンネ・セーデルルンドぉ……!」


 理不尽な逆恨みから復讐に燃えるクソガキ。

 魔王軍四天王がひとり、蒙古斑のキッカである。


「わしと、わしのニ号が……

 お前をくだらなさ1億%の笑いと恐怖で

 肥溜めに突き落としてうんこまみれにしてやる……!」


挿絵(By みてみん)

この物語は第一章最終話まで書き上げたものを

予約投稿して公開してるの。

毎日22時20分更新で全18話、

第一章最終話は11月4日になるわ。

文字数は約10万文字で、普通のラノベ1本分くらいね。




気に入った方は前作もよろしく。


★異世界で国鉄分割民営化を回避するため走る

 鉄オタエルフの奮闘記。


異世界で森を切り開き鉄道敷いて魔王を倒したエルフの後日譚

「ファン・ライン」~異世界鉄道物語~

https://ncode.syosetu.com/n8087ko/

【Nコード:N8087KO】

挿絵(By みてみん)




★全員クズの勇者パーティの中に

 裏切りものが1人いる(※1人しかいない)とわかり

 全員が暗躍しはじめる話。


このパーティの中に1人、魔王の手先がいる!

https://ncode.syosetu.com/n7991lc/

【Nコード:N7991LC】

挿絵(By みてみん)

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