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異世界を恐怖で支配する魔王の力は全部特撮なのにこの世界の人たちは私の言葉を信じてくれません! ~総天然色異世界~  作者: 猫長明
第1章:異世界を恐怖で支配する魔王の力は全部特撮なのにこの世界の人たちは私の言葉を信じてくれません!

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10/29

第10話:怪獣を見た

この物語はフィクションですが、

登場する人物・団体・名称等は、

実在のものが意識されています。


本作品は特撮作品及びその関係者を批判するものでなく

全ての特撮作品へのリスペクトを持って執筆しています。

この場を借りて情熱をもって素晴らしい特撮作品を

作られたすべての方々へ謝辞申し上げます。

 特撮で異世界の人々を騙し、

 人々を恐怖のどん底に突き落とす魔王軍。

 彼らを倒そうというリンネは、

 3つの目的を達成する必要がある。


 1つに、魔王軍の特撮映像と

 同じレベルの特撮を目の前で見せること。

 2つに、見せた上でその技が

 トリックであるとネタバラシすること。


 しかし、リンネには大きなハンデがある。

 魔王軍の側にはオプチカル・プリンターをはじめ、

 特撮を撮るためのあらゆる道具と人員、

 さらには豊富な予算までが揃っているのに、

 リンネの側には何の手持ちもなく、

 技術水準が11世紀前後の世界で手に入る道具で

 それらを再現せねばならないということ。


 ついでに言えばこの世界、

 微妙に地球とは組成が異なると来ており、

 火山が無かったり、発酵が早まる土壌があったり、

 厳密に調べる方法はないがおそらく、

 偏在する物質の元素配列が異なる可能性もある。


 このただでさえ難しい状況で、

 リンネは特殊撮影の『撮影』にあたる

 超重要要素、カメラを持たない状態で

 クリアせねばならない。


 それはもうトラウマを思い出したとか関係なく

 勝てるわけがないと諦めても仕方ないだろう。


 だがそれでも、それでもリンネには

 極めて強力なモチベーションの種があった。


 それは彼女が、特撮が大好きだということ。

 だからこそ、魔王軍が許せないということ。


 その思いがあるからこそ、

 彼女には3つ目の勝利条件が追加される。

 すなわち……


 特撮は楽しいものだと、知らしめることである。




▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼




――数ヶ月後


「おーおー、ゴミが人のようじゃん!」

「ふむ……」

「テーマパークに来たみたいです」


挿絵(By みてみん)


 水晶伯の水晶鉱山は、すっかり姿を変えていた。

 顔をしかめて無言で働く鉱夫達の姿は消え、

 老若男女大勢の人々で溢れかえっている。


 左右には焼きトウモロコシやホットドッグ、

 ドネルケバブなどなどの屋台が並んでおり、

 そこで働く人々は全員筋肉のついた男達。

 おそらく、元鉱夫達だろうことがわかる。


「見よ! ポップコーンじゃ!

 ポップコーンを売っておるぞ!

 わらわはキャラメルポップコーンという

 ハイカラな物がずっと食べたかったのじゃ!

 わらわにキャラメルポップコーンを献上せよ!」


挿絵(By みてみん)


 そんな元鉱山の町を走り回る白髪の幼女。

 彼女が世界を恐怖のどん底に突き落とす魔王軍筆頭

 魔王(代理)「斜光のアキ」だとは

 ここにいる誰も気付かないだろう。


「はい、アキ様。ポップコーンです」


挿絵(By みてみん)


 そんなアキに屋台で買ったポップコーンを

 差し出す魔王軍四天王、レッド・ノアこと

 ノアなのだが。


「む……ち、違う! 違うのじゃノア!

 わらわはキャラメルポップコーンが

 食べてみたいのじゃ!」

「申し訳ありませんアキ様、

 キャラメルフレーバーが売り切れらしく……」


 絶望に染まるアキの顔。

 わなわなと体を震わせた後で四つん這いになり。


「キャラメルポップコーーーーーン!!」


 魔王代理アキの絶叫が、鉱山の町に響いた。


挿絵(By みてみん)




▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼




 さて。そんな仲良し家族にしか見えない

 魔王代理と魔王軍四天王の5人連れだが、

 彼らの目的は決してポップコーンではない。


 その目的こそ、元水晶鉱山の坑道を利用して

 開設したアトラクション施設、

 『ゴメス・ザ・ライド』である。


「やっと順番が来たのじゃ!」


 今日でオープン2週間、

 平日午前中だというのにこの大盛況。

 噂を聞きつけ、大陸中から人々が集まっている。


 乗り込むトロッコは4両が連結された形。

 それぞれ2人乗りで、合計8人で乗り込む形だ。


 魔王軍の5人に一般客3人を加えた8人。

 彼らはトロッコに乗り込む……前に。

 隣の小部屋へと案内される。


「ようこそ、ゴメス・ザ・ライドへ!」


 8人を前に屈強な男が大声を張る。


「俺はこの水晶鉱山で働いていた元鉱夫、

 ガイバーだ!」


「「「「なっ……!」」」」


 唐突に驚きの表情を浮かべる魔王軍の4人と。


胸部粒子砲メガスマッシャー!!」


挿絵(By みてみん)


「おいばかやめろ!」

「やめるのじゃミケ!

 いきなり脱ぐのはやめるのじゃ!」

「好きなのはわかっていますから!

 カタギの前でやめてください!」

「というかガイバー違いでしょ!

 多分これは冒険野郎の方!」


 胸元を開こうとするミケを4人でぼこぼこにして

 止める魔王軍の面々。

 一般客3人と案内役のガイバーさんはドン引きだ。


「あー、いいか?」

「す、すまん。つい興奮して……

 そうだな、よくよく考えれば冒険野郎だ。

 続きを頼む」


 何と勘違いしたのかはさっぱりわからない。


「……ごほん。改めて、俺の名はガイバー!

 水晶鉱山だったここで働いていた鉱夫だ。

 これからお前達に、俺がこの鉱山で遭遇した

 魔王軍の恐ろしい大怪獣の話をしよう!」

「……ほう」


 真剣な顔でにやりと笑う魔王軍の5人。

 魔王軍の名が出されはしたが、

 彼らにしてみれば初耳も初耳だ。


「ある日俺は、坑道の中でソレを見た。

 光輝くソレは、暗い坑道の中に

 突然満月が輝いたかに見えた。

 一瞬何なのかわからなかったソレが、

 ぎょろりと動いて俺を見た!

 そう、それは……巨大な瞳だったんだ!」


 芝居がかった口調と身振り手振りで

 8人に訴える元鉱夫ガイバー。

 その鬼気迫った演技は、

 おそらく専門の演技指導がついていたのだろう。


 魔王軍の5人は真剣な顔を作りつつも

 にやにやを隠すためか表情筋がぷるぷるしている。

 片や一般人3人は真剣な表情でごくりと息を呑み、

 恐怖由来の冷や汗と震えでぶるぶるしている。


「上下3メートルはある坑道に一杯に広がる目。

 それは、ここに潜む何かが巨大であること……

 そう! 魔王軍の大怪獣がここに潜んでいることの

 証明に他ならないのだった!」

「なんと……!」


 笑いをこらえつつも驚いた演技をする魔王代理。

 重ね重ねになるが、初耳である。


「俺達はその大怪獣をゴメスと名付けた!

 何故こんな鉱山に魔王軍の怪獣がいるのか?

 ゴメスを追って崩壊した坑道の奥に進む俺は、

 さらに驚くべきものを見る!

 それは……地底に広がる町だった!」


(アガルタ……!)

(地下帝国ヨミ……!)

(ダウンワールド……!)

(地底王国ピンケリア……!)

(テレスドンの地底人……!)


 せめてどれか1つにして欲しい。


「そう! 魔王軍の大怪獣、

 ゴメスの狙いは地下に広がる

 超科学文明の隠された町だったのだ!」


「「「「「な、なんだってーーーー!!」」」」」


挿絵(By みてみん)


 相変わらず極めてノリのいい5人である。

 案内役のガイバーも何故か自慢げなドヤ顔だ。


「今も大怪獣ゴメスは地下の町を

 攻撃している……!

 君たちにはゴメスの様子を調査し、

 俺に報告する役目を頼みたい!

 極めて危険な任務だが……

 君たちにしか頼めないのだ!」


 ごくりと息を呑む3人の一般人。

 まさかこんなことになるとは聞いてない。

 丁重にお断りしようと手を上げようと……


「よかろう! わらわに任せるのじゃ!」

「いざとなればわしがニ号と電エースを呼ぶぜぇ!」

「闇に生まれ、闇に忍び、闇を切り裂く……」

「はい。これは私達科特隊の仕事です」

「そちらの3人も是非協力して欲しいわ」


 言葉の意味はわからないが、

 とにかく凄い自信である。

 この5人といっしょなら、大丈夫かもしれない。


「では、まもなくトロッコが戻って来る!

 戻り次第乗り込み、偵察に向かってくれ!」


 こうして事前説明を受けた後、

 8人はトロッコに飛び乗る。

 ゴメス・ザ・ライドのスタートだ!




▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼




 乗り込んだトロッコが坂道を下す形で

 ゆっくりと動き出した。

 操作するためのレバーやブレーキはなく、

 ここからはもう止まるまで降りることはできない。


 そう、()()()()()()()()()()

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 まだまだ速度は出ていないが、

 気分は既に遊園地のジェットコースター。

 次第に速度が加速していく中、

 緊張しつつ無言で前を凝視していると。


「右だ! 右を見ろっ!」


 横の坑道から鉱夫の声が響く。

 つられて一同が右を向くと……

















「!?」


挿絵(By みてみん)















 闇に輝く巨大な目が、一瞬だけ坑道の奥に見えた。


「い、今のがゴメスか!?」

「でかい! でかい目だ!」

「なら、体はもっと……!」


 がくがくと震え始める3人の一般人。

 一方の魔王軍5人はというと……


(素晴らしい……)

(やってくれるぜ、あの姉ちゃん)

(その発想力、侮れん)

(カメラがないと場面切り替えもできない)

(その致命的問題を、まさかこんな方法で)


 ごくりと息を呑みつつ、

 鉱山の中のセットに注目する。


 おそらく、その目はよくよく見れば

 アラが見えてしまうチープな作りだったのだろう。


 だが、高速で移動するトロッコがそれを許さない。

 むしろジェットコースターめいた乗り物に

 乗っているという恐怖が、冷静な判断力を奪う。


 エキストラの鉱夫からの声掛けも完璧。

 反射的に右を向いて、

 ぎりぎり見えるところで声がかけられた。

 言ってしまえば、遅いとも言えるタイミング。

 それが絶妙な演出として機能していた。


「動いてるぞぉ!」


 ここでさらに鉱夫の声が響く。

 しかし、肝心のゴメスの姿は見えない。


 見えるのは慌てて逃げ出す鉱夫、

 トロッコからの死角を指さして震える鉱夫、

 坑道の奥から吹き出してくる石と砂利。


 一切ゴメスの姿が見えていないのに、

 既にトロッコに乗り込んだ人々の脳には

 巨大な大怪獣の姿が想像で見えている。


 魔王軍の5人は当然、この演出を知っている。

 それは彼らにとっての聖典とも言える映像。

 何度も何度も繰り返し見た97分。


(ゴジラ(1954)だ……!)


 後に続くゴジラシリーズの第1作である

 金字塔とも言えるこの白黒映画において

 主役とも言えるゴジラはなかなか登場しない。

 だが、その巨大な「何か」を見て怯える人々を

 順々にカメラが写していくのだ。


 一体怪獣はどんな姿なのか。

 広い場所に出ればその姿が見られるのか。

 緊張する8人を乗せて疾走するトロッコが

 ついに、広い場所に出る。そこに見えたのは……


「アガルタ!」

「地下帝国ヨミ!」

「ダウンワールド!」

「地底王国ピンケリア!」

「テレスドンの地底都市!」


 だから1つにして欲しい。


 ともあれそこに見えたのは、町。

 もとい、町の、ミニチュアセットだった。


「よ、よく見えな……」

「おいあまり身を乗り出すと危ないぞ!」


 トロッコが走るのは広い空間で、

 ミニチュアセットが線路の下側。

 だが、身を乗り出せば振り落とされてしまう。


(よく見ようと思えば見えるのに!)

(しかしこっちに自分で見ないことを選ばせる!)

(なんて演出だ……!)


 そしてトロッコは再び坑道に入った、その時。


――ドンッ!!


 と、()()()()音がした。


(やってくれる……!)


 もう5人には、わかっている。

 おそらくこのゴメス・ザ・ライドでは……


 ()()()()()()()()姿()()()()()()


(きぐるみにしろ人形にしろ、

 全体像を見せてしまえば嘘がバレる……!

 だから全体像を、想像させる……!

 こうして……)


「危なぁぁぁぁあああい!!」


 エキストラの叫びと同時に急な角度の

 つけられたスロープを急降下するトロッコ。

 その直上には、ゴメスの腕と爪が見えた。


(こうして部分だけを見せてくる!

 しかも、つい体が萎縮してしまうタイミングで!)


 もう既に、8人はゴメスを見た気でいる。

 彼らの脳内にはそれぞれ別のゴメス像がある。

 見えていないゴメスが、見えているのだ!


 ここで再びトロッコが広い空間に出るが。


「あぁ! 町が!」

「ひでぇ……!」


 そこで見えたのは破壊された町のミニチュア。

 一部では炎が燃え立ち、黒煙がトロッコを襲う。


(煙でよく見えぬが……)

(おそらく実際には燃やしていない)

(ミニチュアを燃やせば、炎が大きく見えてしまう)

(だから火の光の角度に加えて、オレンジの薄膜で)

(燃える町並みの嘘を見せている!)


 こうして最後に再び坑道に入ると同時に

 次第にトロッコの速度が落ちていく。

 おそらく傾斜が上向きになっているのだろう。


 やがて、ゆっくりとトロッコが止まり、

 先ほどのガイバーと同じ格好のエキストラが

 8人を出迎えた。


「報告してください!

 ゴメスは……ゴメスは見えましたか!?」


 ごくりと息を呑む5人の隣で。


「あぁ! 見た! 魔王軍の大怪獣ゴメス!

 俺達は、怪獣を見た!!」


 3人の一般人達が、本気の叫びでそう告げた。

この物語は第一章最終話まで書き上げたものを

予約投稿して公開してるの。

毎日22時20分更新で全18話、

第一章最終話は11月4日になるわ。

文字数は約10万文字で、普通のラノベ1本分くらいね。




気に入った方は前作もよろしく。


★異世界で国鉄分割民営化を回避するため走る

 鉄オタエルフの奮闘記。


異世界で森を切り開き鉄道敷いて魔王を倒したエルフの後日譚

「ファン・ライン」~異世界鉄道物語~

https://ncode.syosetu.com/n8087ko/

【Nコード:N8087KO】

挿絵(By みてみん)




★全員クズの勇者パーティの中に

 裏切りものが1人いる(※1人しかいない)とわかり

 全員が暗躍しはじめる話。


このパーティの中に1人、魔王の手先がいる!

https://ncode.syosetu.com/n7991lc/

【Nコード:N7991LC】

挿絵(By みてみん)

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