第47話『裏切ったとしても』
「やっほー!リンちゃんだっけ?お助け参上だよ!」
「シノ!この裏切り者……」
ニャナはシノと呼ばれた青年のことを睨みつける。
どうやら、この人はシロキと共にフミオのことを裏切った者らしい。
「ごめんね、ニャナ」
そう言うとシノは隠し持っていた短剣をニャナの腕に突き刺した。
「っ……刺すなら殺す勢いで来なさいよ」
「ニャナは殺されたいの?」
シノはもう片方の腕の方も突き刺す。
「ゔっ!」
「な、何してるの……?」
「敵が増えたら君たちが困るでしょ?大丈夫。死なせはしない」
シノは少し物悲しそうな顔をしていた。
きっと、裏切った彼らは好んで裏切りに行動したわけではないのだろう。
元仲間を攻撃するのは苦しい筈だ。
「ニャナ、少しだけ眠っててくれ」
「や、やだよ……」
シノは小さい布のようなものを軽く嗅がせ、ニャナを眠らせた。
優しく体を支え、壁に寝かせる。
「眠ったら、普通の可愛い女の子なのね」
「ウサナ!」
知った声の方を向くとウサナが腕を組んで立っていた。
だが、少し不機嫌そうだ。
「あぁ、お嬢様」
「女の子の嫌なことをする男は嫌いですわよ」
何があったかは知らないが、どうやら二人はもう知り合いみたいだ。
リンはウサナの手を借りて立ち上がるとシルラとリゼに向かった。
「二人共、大丈夫!?」
「心配かけてごめんなさい。監視者がこんなんじゃ情けないですね……」
「立てる?」
「はい!」
「よし、ブルア達の方に援護に向かうよ!」
◇◆◇
「あー来た裏切り者第三号」
「僕、三番目なの?」
苦笑しながら、シノはカナメの隣に座る。
カナメは戦闘離脱後、監視室に入り戦いの状況を見守っていた。
どうや、先程助けたリン達はシロキの方の援護に向かったようだ。
「ニャナは?」
「医務室で寝かせてる」
「お前がニャナの腕を刺すとはな」
「こんな辛いことはないよね」
「なぁ……」
「うん?」
「何で裏切った?」
「フミオ様の尊厳を守る為かな」
「シロキ、クロキ、シノのお前はフミオ様に引き取られた子どもの初期メンバーだ。誰よりも長くフミオ様と居る。そんなお前達がどうして裏切るんだ?ちゃんと教えてくれ」
「僕たちがどうして拾ってもらえたから分かる?」
「え、優しさじゃないのか?」
「それは第一にあるけど、ある人材を探してたんだ」
「ある人材?」
「自分を殺せる人材だよ」
そう。あの人は分かってたんだ。
いつかおぞましい何かに乗っ取られて、自分が自分で居られなくなるのを。
決して、自分の子どもを生贄にするような人じゃない。
『シロキ、クロキ、シノ……私が私で居られなくなったらーー』
『躊躇せず、殺してくれ』
僕たちのこの行為は神殺しも同然だ。
シロキやクロキは落ち着いているように見せているが、心の中では苦しんでいる。
僕たちは色々な人やものから見捨てられた存在だ。
誰からも必要とされず、幸せな人生を歩めなかった。
そんな僕たちを救って育ててくれたフミオ様はとても大切な人。
お父さんが居なかったら僕にとっては、フミオ様がお父さんだ。
育ててくれた父親殺し。
救ってくれた神殺し。
だけど、せめて……。
苦しまずにその命を終わらせてあげたい。
久しぶりの投稿です。
読んでくださり、ありがとうございます。




