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石の支配  作者: シュシュ
第1章 『涙から始まる物語』
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第46話『鈴と猫』

「にゃはは!さぁ、どうするにゃ?この子、切り裂いちゃうにゃよー」


「ブルアはフミオの方へ行って。そして、あなたも……」


「分かりました。お気をつけて」


 ブルアとシロキはフミオの方へ走る。

 フミオはさっきからずっと、ミドの頬に触れ続け、可愛がっている。


「あぁ、私の可愛い息子……」


「おい、何故自分の子どもを犠牲にする?」


「あなたは、子どもを犠牲にするような人ではなかった筈です!」


「あぁ、シロキ。裏切ったのですね?恩を忘れたのですか?」


「忘れてませんよ。私たちを拾って頂いたこと、感謝しています。だけど、あなたは変わってしまった」


「くっ、こいつらにも術をかけておくべきだったか」


 先程まで、敵のブルア達にも丁寧な言葉遣いで話していたフミオだったが、急に口調が変わった。


「そうだね。洗脳しておくべきだったかもね」


「はぁはぁはぁ……シロキ!早く私を殺しなさい。でないと、もうすぐで私はっ……」


「お前は黙れ」


「フミオ様!?」


 苦しんでいるフミオの着物の襟から、二匹の黒い蛇が出てくる。

 そして、二匹の蛇は彼の首を噛んだ。


「かぁ!?あぁ……」


「何が起こっている!?」


「あの蛇はどこかの神様でしょう。フミオ様の体を完全に乗っ取る気です!」


「やめてくれ……!」


「フミオ様!?」


 フミオはミドに触れないよう、必死に自分自身の腕を掴み、押さえつけている。

 シロキは一枚の札を指で挟んで、顔の前に出した。


「黒影よ。我らと彼らの間に壁を作りたまえ。我の望みを叶えたもう」


「フミオにこれ以上、加勢されては困ります。なので、ニャナは三人に任せて、私たちで挑みましょう」


「そうだな!」


 ◇◆◇


「リゼを離せ」


「うーん、どうしようかにゃ〜まぁニャナは優しいから、離してあげてもいいけどにゃね。だけど……」


「まぁ、いっかにゃー!」


 ニャナはリゼを放り出し、リンに攻撃を仕掛ける。

 シルラはリゼを抱え、後ろの方に退いた。


「にゃはは!アンタと戦う方が楽しそうだにゃ!」


「にゃーにゃーうるさいのよ!」


 二人は刃を重ね合わせ、攻め合う。

 絶対にお互い、譲らない。

 それぞれ、守りたい者が居る。守らなければならない者が居る。

 この戦いは二人共、負けられないのだ。


「ねぇ、フミオのやっていること、本当に正しいと思っているの……?」


「正しいかどうかなんて関係にゃい!フミオ様は私を救ってくれた!だから、私はフミオ様がどうにゃろうとついて行くって決めたんだにゃ!」


「アンタ達にとっては狂った敵でも、私たちにとっては神様なんだにゃー!!」


「それでも、私はアンタ達の主を討つ!仲間のミドを救う為に!絶対に負けられないの!」


 リンはさらに力を込め、ニャナを押す。


 ーー私は負けられない。ミドとは会って間もないけど、それでも仲間なんだから。大切な仲間を救いたい!


 ーーリンカ、私に力を貸して!!!


「うぉぉぉぉ!!!!!!」


 リンは思いっきり叫びながら、さらに押し続ける。

 そして、ニャナを弾き飛ばした。

 ニャナは体が倒れる床に倒れる前に柔軟な身体使いで、少しリンから距離を取った。

 武器の爪の調子を確認する。

 そして、ニャナは何かの魔法を詠唱し始める。


「闇よ、応えよ。我のこの爪先に汝の証を刻みたまえ」


「にゃは♪」


 ニャナが詠唱し終わると彼女の爪が禍々しく光った。


「アンタ、魔法使えないんだにゃよねー!弱っちい!」


「魔法が使えなくて、何が悪いの?私は正々堂々とこの剣で戦ってアンタに勝つ!」


「アンタ、何だかムカつくんだにゃ!」


 ニャナはリンとの距離を一気に詰めてきた。

 自身の爪を大きく振るう。

 リンは冷静に判断し、彼女の攻撃を避けた後、腹に蹴りを入れた。

 だが、ニャナは体を縮こませ逃げる。


「その魔法は何の為に出したのかしら?意味がないように見えるけど」


「もう少しで、膝からちょっと血が出るにゃよー?」


「え?」


 ニャナにそう言われた後、リンの膝からは血が少しツーッと流れていた。

 彼女はリンの攻撃を避けた後、爪先を少しだけ膝に触れさせていたのだ。

 この程度の怪我ならリンにとってはいつものことなので、気にする程ではない。


「っ!?」


 だが、突然リンの膝が崩れた。

 膝の傷口を見ると少し開いていたのが完全に閉じていたのだが、その代わりに膝には妙な形のアザのようなものが出来ていた。


「私に何をした?」


「何って、オシャレなタトゥーを付けてあげただけだにゃー」


「にゃーんて!それでしばらくアンタの膝は使いものにならない」


 ニャナはリンの前にしゃがみ、自分が付けていた爪の武器を外し始めた。

 そして、リンの剣を奪い取り遠くに投げる。


「どういうつもり!?」


「ねー?私のこの姿どう思うにゃ?」


「はぁ?」


「答えて」


「……」


 ニャナの姿というのは簡単に言うと猫人間だ。

 耳や尻尾は付いているが、体は人間。

 だが、四つん這えでも動ける。

 さらに完全に猫の姿に化けれるとも聞いている。


「何も言わないってことは言いづらいのかにゃ?アンタも私のこと"化け猫"として見る?」


「何が言いたいの?」


 リンはあくまでも強気な態度で接した。


「私、これでも普通の人間から産まれてきたんだにゃ。小さな村の娘として。だけど、何かがおかしかった。突然、耳や尻尾生えだして、お母さんにわけを聞いてもごめんねって泣くばかり。友達には化け猫呼ばりされて?石投げられて?お父さんに見捨てられて、挙句の果てにお母さんは罪人として捕まった。そして、私は恐ろしい化け猫として檻に入れられて、村の見世物小屋でみんなに変な目で見られ続けて……」


「そんな……酷い」


「そんなときに私を救ってくれたのがフミオ様なんだにゃ。この城を守る者達みんなそう。生きる場所がなくて、ずっと蔑まされ続けてきた。だから、みんな感謝してる」


「ねぇ?アンタ達もずっと苦しい場所で生きてきたんでしょ?だったら、私がこの戦いに負けられないの分かるよね?もうすぐ、儀式が始まる。だから、邪魔しないでにゃ?」


「アンタ、バカなの……?私も負けられないんだけど?もう、自分の幸せの為に他人を犠牲にするのは見てられない!!」


「アンタ強いから生きさせてあげても良いかなーって思ってたけど。もう良いにゃ」


 ニャナは爪の武器をまた付け始めた。

 リンは使える手で彼女の方に攻撃を仕掛けようと思ったが、ニャナと目が合った瞬間、動きが止まってしまった。

 きっと、ニャナも魔法で目を合わせた相手の動きを止める力があるのだろう。


「じゃあね」


 ニャナは爪を振りかざし、リンの体を切り裂こうとする。

 もうダメかもしれないとリンは悟ってしまった。


 だが、切り裂かれなかった。


「ニャナ、無理して柄にもないこと言うなよ?」


「シノ!!!」


「やっほーリンちゃんだっけ?お助け参上だよ?」


 シノと呼ばれた青年によって、リンは助けられた。






本編完結後にまとめてフミオ達の過去編を書きます。ぜひ、読んでみてください(* 'ᵕ' )

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