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石の支配  作者: シュシュ
第1章 『涙から始まる物語』
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第33話『僕のせいだ』

 無理矢理、タンスの奥から服を出すと他の服はどうなってしまうだろうか。

 せっかく畳んだのに形が崩れてしまう。

 ミドはまさにその状態だった。

 今までの自分の記憶が全て偽物だったのだ。

 本当の出身国はヤヨイ国で、名前は「タチバナ・ミド」姉が一人居た。


 そして、大好きだったお父さんが狂ったのも、フミカお姉ちゃんが自分自身の存在を消すことになったのも、お母さんが死んだのだってーー


 僕のせいなんじゃないか?


 僕がこの世に生まれ落ちてしまったから。

 僕が両親を二人に選んでしまったから。

 僕の瞳の色が変わってしまったから。


 僕という存在が居たばかりに三人は僕の前から消えた。


「僕の……せいだ」


 ミドは壁に近づき、頭を軽く打ち付ける。


「僕の……僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の!!!!!」


 力が段々と強くなる。

 そして、今度は自分の腕を強く掴んだ。

 赤いけど、そんなことはどうでも良くてーー

 今すぐに家族に会いたくてーー


『フミカさんという女性がある戦いで、亡くなってしまったんです。僕らがフミカさんを殺したのではないかと、疑われていまして……』


 あぁ、そういうことか……。

 死んじゃったんだ……フミカお姉ちゃん……もう居ないんだ。


 だったらーー


「会いに逝くよ……」


 何故かは知らないけど、都合良く近くには短剣が置いてあった。

 それを心臓にーー突き刺す筈だった。

 だが、突然、扉が開かれて、シロキとクロキがミドを止めた。

 二人の後ろにはミドを社の中に閉じ込めた黒髪の男も立っていた。


「はぁはぁはぁはぁ……」


「大丈夫ですよ。怖くない怖くない」


 シロキが小さい子をあやすようにミドの頭を優しく撫でた。

 そして、黒髪の男を睨みつける。


「勝手な行動は慎めとあれほど……」


「だって、こうでもしないと、固い記憶の南京錠は開けられなかったでしょ?」


「シノ、てめー……」


「うぐっ……」


「どうして、死のうと?」


「……会いたい。家族に会いたい」


「う……うぁーん……!」


 ミドは赤子のように大きな声で沢山、泣いた。ステラ国では絶対に許されない行為だが、この国では誰も咎めない。

 その様子を見て、シロキはまた、優しくミドの頭を撫でた。


「ったく、まだまだ子どもだな……」


「亡くなった家族に会わせてはあげられませんが、私たちはあなたの敵ではありません。仲間と再会させますよ」


「なーに勝手なこと言ってんの?」


 社の近くには、カナメを先頭にしたフミオの私兵達がミド達を逃さないように囲み、シロキやクロキの方を睨んでいた。


「これから、フミオ様の元へ連れて行く」


「まだ、そのときではないと思いますが?」


「いくら、シロキでも、命令を無視するのはいかがなものかしら?」


「僕の力があれば……一瞬で飛ばせる」


「分かりました。ロキ、お願いします」


「うん、この子だけで良いの……?」


「えぇ……」


 ロキはミドに近づき、頭に触れようとしたが、ミドはシロキの後ろに隠れた。


「必ず、助けに行きますよ。なので、今は言うことを聞いてくれませんか?」


ミドはシロキのことを信じ、頷いた。

 今度こそ、ロキはミドの頭に触れ、転送した。


「シロキ、裏切るのか?」


カナメが笑いながら、シロキに問いかける。


「別に裏切りたいわけではありませんよ。ただ……」


「ただ…?」


「慕っている主が間違った道に進もうとしているなら、それを止めるのも部下の仕事だと思いまして。私は昔のフミオ様に戻って欲しいだけです」


 ♢♦︎♢


 ミドが転送された場所は、無駄に広い空間で、奥に置いてある椅子に誰かが座っていた。そして、こちらに近づいて来る。

 ミドはその姿を見て、記憶の中にあったお父さんのことを思い出した。

 だが、目の前に居るのは昔の優しかったお父さんではない。全くの別人だ。


「ミド……あぁ……やっと会えた。私の可愛い息子ーー」


「あなたはお父さんじゃない!あなたは誰ですか……?」


「誰って、お前が大好きなお父さんだよ?」


 フミオがミドにハグをする。

 昔は嬉しかった筈なのに、今はすぐにでも離れたい。

 それに、彼には暖かさが全く感じられなかった。どこまでも冷たくて、心までが冷え切っているように感じる。


「ミドは父さんの力になってくれるだろう?」


「嫌!!!」


 ミドはフミオを突き放そうとしたが、抱きしめる力が強く、離れられない。


「さぁ、また幸せに暮らそう?」

 

「ひっ……」

 

 ミドの目元からは、恐怖で涙が流れた。











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