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石の支配  作者: シュシュ
第1章 『涙から始まる物語』
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第10話『強制参加のお茶会』

 誰も居ないと音が響くというが、本当のことなのだと思う。

 誰も居ない廊下は一つの靴音が静かに聞こえてくるだけだ。


 コツン、コツンと。


 けど、しばらく歩いている内に、向こう側から足音が聞こえ、人影が見えてきた。

 人影は何か大量の荷物を抱えているせいか、よろけながら歩いている。

 段々と近づいてくると、サクヤの助手のサクナだと言うことが分かった。


「あ、ミドさん」


「こんにちわ、サクナさん」


 相変わらずサクナは、大量の書類を抱えている。

 何故、この人はいつも大量の書類を一度に抱えてくるのか、不思議だ。

 先輩のサクヤに毎回のように怒られていると言うのに。


「大丈夫ですか?手伝いましょうか?」


「いえ!これも僕の仕事なんで、頑張ります!」


 だが、数秒後。


「あわわ!」


 予想通り、サクナは大量の書類をバラまいてしまった。

 急いでサクナは紙を拾うが、慌て過ぎて拾えていない。



「もう、いつもサクヤさんに言われているじゃないですか、大量に持つなってーー」


 手伝おうと思い、紙を拾おうとしたが、止まっているのに気がついた。

 サクナもバラまかれた書類も時計もみんな止まっている。


 ミド以外全ての時間が止まっていた。


「えーー」


 浮いている紙を取ろうした。

 取れるは取れるが先程の浮いている形、そのままだ。


「どうして、止まってーー」


「みーつけた」


「っ⁉︎」


 目の前に現れたのは、青髪のお兄さんだった。


「ねぇ、付いて来てよ」


 そう言われ、お兄さんに手を引かれる。


「うぁっ!」


 一瞬、ぐにゃりと空間が曲がるような音を聞き、驚きで目を閉じた。

 数秒後、お兄さんの声が聞こえてきた。


「着いたぞ」


 目を開けると、先程は廊下に居たのに、急に景色が変わった。しかも、さっきの青髪のお兄さんじゃなくてーー


「お前に用があってな」


 悪魔のネビロスだった。


♢♦︎♢


 教会に入ると、ラピス達が居た。

 そして、ラズとルズは、カップを置いたりなど、お茶の準備をしていた。


「あ!ミドさん、ようこそ」


 ニコッとラピスは笑うが、急にサクナや紙が止まったり、急に悪魔のネビロスに連れて来られたり、何がなんだか、よく分からなくて、ミド頭が混乱中だった。


「時間は戻したのか?」


「あぁ、戻したぜ?」


 おまけに、天使のミカエルまで居る。

 ミカエルは祭壇の所に座り、くつろいでいるが、大丈夫なのか。バチが当たらないのかと思ってしまう。

 頭がこんがらがっている中で、ラズとルズが小走りでこちらにやって来た。


「名前を覚えていますか?」


「茶髪がラズ君、桃髪がルズ君でしょう?」


「正解です!」


 二人は息を合わせて言った。

 まるで、双子のようだ。

 見た目が全然違うから、双子ではないのだろうが。


「今日はカモミールなんですよ!」


「後、僕たちが一生懸命に作ったスイーツもあるんです!」


「一緒にお茶会、楽しみましょうね⁉︎」


「え?」


 確かによく見ると、カモミールティーが入ったガラス製のポットとクッキー、ケーキ、タルトなど、色々なスイーツが並べられていた。


 ーー美味しそう……。


 うっとりしてしまった。

 ミドは甘いスイーツが大好きだ。

 昔、お母さんの手作りパンプキンパイが好きだった。

 焼きたての匂い、外はサクサクの生地、甘いかぼちゃの味、今でも忘れていない。

 もう、今となっては食べられない味なのだが……。


「へーどんな人間も甘いものは好きなんだな。めちゃくちゃ、悪魔に魅了されているときみたいな顔してるぜ」


「まぁ、似てなくはないですけど」


「どうぞ、食べてくださいな。お茶会を楽しみましょう?」


「ありがとうございます……」


 ラズにお茶を注いでもらい、ルズからスイーツを乗せたお皿をもらった。

 その中にはすでに切り分けられていたパンプキンパイもあった。

 パンプキンパイを一口サイズに切り、口へ運んぶ。


 ーーん〜!美味しい!


 サクサクの生地にかぼちゃの甘いクリームがとろけるような舌触り、とにかく美味しい。


「美味しいです!」


「あれも、悪魔に魅了されているときの顔だな」


「こらっ」


「もっと、食べてください。ラズとルズのスイーツは極上の美味しさですから」


 他のスイーツも食べてみた。

 だけど、パンプキンパイが美味しくて、また食べる。

 甘くてとろけて、溺れてしまいそう。

 溺れて、何も考えなくてもいいと思ってしまいそうだ。


「なんだか、アリスのお茶会みたいですね」


「確かに僕が帽子屋で、ラズは三月ウサギ、ルズは白ウサギで、ミカエルは眠りネズミ、ネビロスはチェシャ猫ですかね?そして、主人公のアリスは、君ーー」


「え?」


『私はパンプキンパイ作りが得意なのよ!』


『アリスのお茶会みたいね?』


 茶髪で、クリーム色の服を着ている女の人が見えてきた。


『Drink me……』


 女の人は耳元で囁いてくる。

 ボーッとして、何も考えられない。

 カモミールティーが入っているティーカップを手に取る。そして、飲んだ。


 ゴクリ。


 暖かい液体が喉を通り、流れていく。

 そして、口の中でカモミールの良い香りが広がってきた。


「いってらっしゃい。夢の中のお茶会へ」


 ♢♦︎♢


 ここは、夢の中だろうか?

 緑が広がる地面、雲一つない青い空。

 小さな家が建ち並んでいる。

 幸せな空間だ。

 小さな丘の上に一人の女の子が居た。

 話しかけようとすると、女の子が振り向いた。

 何故だか知らないけど、顔はよく見えなかった。


「あのーー」


『君はだぁれ?』


「僕はミド。ミド・テトラ」


『本当に?』


「え?」


『本当に君は、ミド・テトラ?』


「どうして?」


『君はどうして、ミド・テトラなの?』


「そんなの、聞かれても分からないよ」


『そっか……なら、みんなにも聞いてみるわ』


「みんなって?」


『お茶会メンバー!』


「あ!待って!」


 女の子は走ってどこかに行ってしまいそうになった。急いで追いかける。

 けど、すぐにお茶会場所には着いた。


『みんな、お客様を連れて来たわ!』


 席についているお茶会メンバーは、二人居た。

 どちらも、和服を着ている。

 成人男性と16〜18歳くらいの女の子。

 どちらも、顔が暗くて見えない。


『セツナとセツカも誘いたかったけど、用事があって、来れなかったみたい』


『大丈夫だよ。ーー、座って。お客様も一緒に』


『私はーー、よろしくね』


 肝心の名前が聞こえてこない。


『ねぇ、みんなに問いたいの。この子は何故、ミド・テトラなのかっていうこと』


「な、何を言っているの……?僕はミド・テトラだよ?」


『君がミド・テトラという証拠はどこにあるの?』


「どうして、証拠が必要なの?」


『じゃあ、話を変えるね。私を含め、三人は誰だと思う?』


「分からない」


『アンタガ"殺した"ヒトタチだよ』


「ひっ⁉︎」


 急に三人の顔がおかしくなり、黒くなっていく。

 そして、「ケタケタ」と笑い出した。


『アンタはーー私達の存在をーーした』


 周りの風景もドス黒くなっていく。


『どうして、誰も愛してくれないんだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』


『セツナ!セツカぁぁぁぁぁ!』


『お願い、私を忘れてーー』


 誰かの叫び声や絶望の声が聞こえてくる。

 それはとても苦しく、悲しい。

 耳の中でこだまする。

 鼓膜が破れそうなほど、大きく聞こえてくる。

 それを止めれる気がしなかったが、叫んだ。


「やめて!僕が何をしたって言うの⁉︎」


『君は何もしていない。だけど、君が狂わせた』


 影の三人はこちらをじっと見つめる。

 目は見えないのに、強い視線を感じる。

 そして、地面や影の三人に亀裂が入り、割れていく。

 立っていた場所も割れ、真っ暗な闇に落ちてしまった。


「うぁぁぁーーーーーー!!!!!」


 一瞬、沈黙と空白が訪れた。

 何も聞こえず、何も見えない。

 ただ、悲しそうな表情をしている顔が見えない女の子の姿が頭の中に焼きつけられるだけだ。


「帰って来いミド!」


「スイナ……さん?」


 気づくと、スイナが近くに居て、体を揺すっていたみたいだった。

 そして、彼女はラピスを睨みつける。


「勝手にミド・テトラを連れ出すとは、罰を与えることになるぞ」


「とても、美味しいスイーツとお茶が出来たので、食べてもらいたくて」


「それは、ただの茶や菓子ではない。幻想を見せる魔法で作った茶と菓子だろう?」


「幻想では、ないんですけどね」


「ミド・テトラに手出しはさせない」


「そうですか。では、しっかり守ってくださいね?」


「行くぞ」


 スイナに手を引かれて、教会を出た。

 まだ、ボーッとしていたし、心が悲しくなっていた。あの子のことが忘れられない。



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