第9話『騒がしいお食事会』
ピッ……ピッ……。
心電図の音が規則的に鳴る。
カーテンは締め切られていて、中の様子は伺えない。
ただ、聞いた話によると、頭や腹などに包帯が巻かれ、目覚めないのだと言う。
ミドはレルナのお見舞いに来たが、やっぱり引き返すことにした。
ーーレルナさんを置き去りにした僕が、レルナさんのお見舞いに行く資格はあるのかな……。
目覚めたら、顔を合わせられない。
そう、思った。
「みーどちゃん!」
「うぁっ!……ラルフさん?」
「食事しに行こうぜ」
「……今は食べる気になれないんです」
「レルナが選んだ道なんだから、ミドちゃんが責任感じる必要、ないぜ」
「でも……」
「責任感じてるんなら、なんでさっき、見舞いに行かなかった?」
「資格がないと思って……」
「食事が終わったら、行ってやれよ。レルナに早く戻ってきて欲しいんならさ」
「……⁉︎はい、そうですよね……」
「じゃあ、行こうぜ!」
♢♦︎♢
ここの食事はみんなが集まる談話室でとる。
談話室はとても広いから、食事も娯楽もみんな揃っているのだ。
「あれえ?お貴族様も食事?」
「近づくなよ」
ラルフが小さい声で、耳打ちしてくる。
「ミドちゃんは座ってろ。俺が取ってくるから」
「え?いえそんな……」
「気にするなって!」
「いだっ⁉︎」
思いっきり、肩を叩かれた。
彼は気にせず、食事を取りに行ってしまった。
カシャ。
ーー……ん?
「良いねぇ〜その儚い表情!」
「いや、儚くも何も……」
「うんうん!分かるよ!肩を叩かれて痛いけど、仲間との青春だなって思っていて、怒れないんでしょう?うんうん」
ーーいや、青春とかは感じていないんだけど……。
スタルは、ミドのことを気にせずに写真を撮りまくっている。
何十枚も取った後、飽きたのかカメラをしまった。
だが、すぐにスケッチブックと鉛筆を取り出し、今度は絵を描き始めた。
「フムフム……ここはこうして、ネックレスでしょ……」
「あの、誰の絵を?」
「ミド君の絵」
「え?ネックレスとか言ってませんでした?」
「あ〜!ドレスのフリルは増やした方が良いかなー?」
ーーは……?ど、ドレス⁉︎
ミドはスタルさんの絵を覗いてみた。
ーー……⁉︎
なんと、ミドにドレスを着させている。緑を基調としたドレスで、エメラルドのネックレスをしている。
「可愛いでしょー?」
「いや、何故女の子なんです⁉︎」
「だって、見た目が女の子だから」
「いやいや!どうみても、男ですよ!」
「ミド君、君は気づいていないようだね……」
「え?何なんです?急にーー」
本当に急にスタルがバンッとテーブルを叩いて、ミドと顔を近づける。
「君は男ではない。"男の子"だ……」
「え?そこ?」
また急にバンッとテーブルを叩いて、今度は指を指してーー
「君は野蛮な男なのではない!とても、純粋で果汁100%のジュースのような、"男の子"なのだ!」
「はぁ……」
「二人もそう思うだろ⁉︎」
「え?」
スタルはまたまた、急に今度はセイラとウサナに振った。
「まぁ、男ではなくて、男の子なのは分かるけど……」
ーーえ⁉︎分かるの⁉︎
「けど、わたくしは結婚するなら、男が良いですわ」
ーーウサナさんは、何を言って⁉︎
「まぁ、男でも趣味が合ったら、いっか」
ーーえ?良いの⁉︎
「持ってきたぜ、ミドちゃん!オムライスで良かったか?」
「はい!ありがとうございます」
ーーラルフさん、救世主!
「ねぇ、ラルフもこの絵見て!」
「は?絵?」
ーーラルフさんなら「流石に可哀想だろー!」って、言ってくれるに違いない。
ラルフは、絵を覗き込んだ。
「っ⁉︎」
ーー……ん?
ラルフは、頰を赤くしている。
そして、ボソッと--
「可愛い……本当に女だったら、惚れてたかも……」
ーーラルフさぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!
「スタル、やめてあげてください」
凛とした声が耳に聞こえてきた。
それはシルラだった。
「ミドさんが困っています」
「はーい」
返事をするとスタルは、違う所に行って、絵を描き始めた。
他の三人も、椅子に座り、食事を取り始めた。
ミドも座り、オムライスを一口。
「美味しいっ!」
「先程はすみません」
「いえ、助けて頂いて、ありがとうございます」
「いえ……」
シルラは笑っているのか、笑っていないのか、よく分からない表情をした。
「そういえば、シルラさんは野菜が好きなんですね」
「はい。脂っこいものは苦手でして……」
シルラのプレートには、わしよく?ってやつの料理が乗っていて、横には野菜がたっぷり入った小さなガラス製のボウルがあった。
わしよくは確か、ヤヨイ国の料理だったような気がする。
「そのスープって、とても茶色いですね」
「味噌汁っていうものです。和食は体に良いですよ」
「へー今度、試してみます!」
ミドはオムライスを平らげて、病室に向かった。
ーーレルナさん……早く、目覚めてください。




