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仲良し

 とりあえず外に突っ立ったまま会話というのも変なので、ストラが今過ごしている洞穴の中に移動することにした。

 洞穴と言っても中はかなり広く住みやすくなっている。壁はしっかりと固められ、燭台のようなものもありそこに火がともっていた。

 なんだかダンジョンのお宝が眠る隠し部屋、といった風情にちょっと胸が高鳴っている。


「しかしストラ、無事でよかった。いや見た目的にかなり無事じゃないが生きててくれて何よりだ」


「ご主人……。うちの頑丈さ知っとるやろ? こんな呪い何十年かけられたって死にはせんわ」


 俺が変なテンションになっているが、マキは懐かしそうにストラの頭をなでながら無事を喜ぶ。リンクが切れたとかストラが言っていたが、それはマキも同様で気になっていたのかもしれない。


「はいはい! ストラさんて言うんだね! 私はお兄ちゃんの妹のエミです! 将来の夢はお兄ちゃんのお嫁さんだよ!」


 横っ飛びで二人の間に入り込み、自己紹介と大っぴらに兄妹愛をアピールする。兄弟愛と言っても歪みまくっていて目も当てられない状態だが。ちなみにストラの頭を撫でている手を払うのも忘れない。


「わ、私はファルネですにゃ。お二人とは近くの町で会って成り行きでご一緒してますにゃ。最強種族と名高いドラゴンさんと会えてとても恐縮ですにゃ」


 ファルネはファルネでドラゴンに畏怖とか尊敬とかそんな感情を持っているのが見て取れる。獣人にとってドラゴンは特別な存在だったりするのだろうか。


「そんな気ー張らんと大丈夫や。うちはフォレストドラゴンや。ストラ言うんはご主人が付けてくれた名前や、二人ともよろしゅーな。それとご主人と付き合いが一番長いんはうちやからな? そこんとこよろしゅうな?」


 ストラは友好的な態度でファルネの頭を撫でるが、妹にはちょっとした対抗心みたいなものを見せる。二人とも笑顔だがどうみても牽制しあってます本当にありがとうございました。喧嘩すんな。


「ほんでご主人たちはこんな遅くに何しにここに来たん?」


「端的に言うとお前に会いにきた」


「ご主人……そこまでうちの事大切に思ってくれてたん……!?」


「お前の不始末を片付けに来ただけだが?」


「さっきまで優しかったのに急に辛辣! でもそこがええ!」


 びくんびくんと聞こえそうな感じで自分で自分の体をだきしめるストラが気持ち悪い。なんだろう、マキの周りには頭おかしい奴が集まるのだろうか。妹はマキでなく俺の周りだがマキの周りって事でいいだろう。


「お兄ちゃん、このストラ変態さんなの?」


「お前には劣るよ」


「もー、お兄ちゃんたらー」


 はははと笑いあってるが誰も褒めてないし喜ぶところでもないしまじでなんなんこいつら。ファルネがひきつった笑いを浮かべながらちょっとだけ距離取ってるだろ。


「そんでご主人はなんで人間の恰好しとるん? 人間の妹というのもおかしない?」


「そこは色々あったんだよ。死にかけてたんだがこの体の持ち主に助けられたってとこかな」


「そうなん? というか助けられたって事はまだ生きてるん?」


「ついでだから証拠見せてやるよ」


 というとマキは俺と体を入れ替える。なんだか体の主導権がマキが握っているような気がしないでもない。


「あー、初めまして。体の本体ことトモキですよろしく」


「うわほんまや! なんやこれどうなってるん!?」


 ストラが俺の体を触ろうとしてくるが妹がささっと間に体を滑り込ませてくる。


「……なんやのこの子」


「ストラこそなんなの? 私のお兄ちゃんに気安く触らないでくれる?」


 バチバチと火花を散らしそうな視線をぶつかり合わせる二人。初対面のドラゴンにこれだけ強気に出る人間なんてほとんどいないだろうなぁと我関せずと気にしないことにする。あと妹のじゃない。


「人間のお嬢さん、ちょいと外まで面かしな。どっちが強いか思い知らせたる」


「はっ! 夜目の利かない鳥さんがこんな時間に外いって大丈夫?」


 売り言葉に買い言葉で二人は仲良く視線を交じ合わせながら洞穴を出て行く。え、まじで戦う気なのあの二人。


(流石エミちゃんだな、なんのためらいもない)


「いやこれ止めなくても良いのかな……」


(個人的には面白いから止めなくていいと思う)


「マキも相当だな……」


 ファルネと一緒に二人が出て行ったのをぽかんとしながら眺める事になってしまった。ファルネはここに来る前からかなりビビらせてるからそろそろ本当に申し訳ない気持ちになってくる。


「トモキさん……マキさんて誰ですか……? それに雰囲気が。というか本体とかどうのって一体……」


 そういえば言ってなかった。すまないファルネ隠しておく気満々だったんだけどこれもう隠せる雰囲気じゃないな。

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