十八、秀英と聖女の謎
秀英は王玲莉に会うために夢の中にいた。
「王玲莉、私はどうしたらいいの?」
(何を悩んでいるの?)
「あなたは私でしょう?言わなくてもわかるでしょう」
王玲莉はくすくすと笑っていた。
(やっと高翔宇のことを思い出したのね。私としてはうれしいことだけど)
「ねぇ、なぜあなたは翔宇と私をくっつけようとするの?私のために連れてきたからと言っていたけど、それだけじゃないでしょう?」
(・・・)
王玲莉はしばらく黙っていた。
(そうね。高翔宇と一緒になってほしいというよりかは・・・李義と一緒になってほしくないかな)
「なぜ?王玲莉は私が皇太子殿下のことが好きなのは知っているでしょう?何になぜ?」
(私は自分の聖女という運命から抗いたかったの。だから、聖女の力を使って、あなたの魂を私に取り込んだのよ。聖女はあなたが思っている以上に特別な存在なの。それこそ本来ならば存在すら隠さなければならないくらいにね。あなたにはまだ十分な力がないから周りは警戒はしないだろうけど。きっとあなたは私以上に聖力が強いわ。私はあなたのように瞳は赤くならないし、髪も白髪にならなかった。あなたこそが本当の聖女だと思うの。そんなあなたが李義と一緒になったら・・・指一本ですべての国を牛耳ることができるわよ。あなたと李義は結ばれる運命だけど、結ばれてはならないの。世界の均衡を保つために)
玲莉は理解が追いつかなかった。
(いずれ全てを理解するときが来るはずよ。秀英、一度楚に行くといいわ。あなたが持っている聖女伝が、なぜ楚の元公主劉若㬢の手元にあったのかわかる?)
「もしかして、聖女の祖先は代々楚の国の者だったの?」
(私も詳しくはわからないわ。でも、なんとなくはわかるの。なぜ聖女が楚の者だったのか。それなのになぜ今の代の聖女は魏の娘がなったのか。それはきっと水晶玉が聖女を引き寄せようとしているのよ。でも、その水晶玉には決して近づいてはならない)
「どういうこと?水晶玉と私にはどんな関係があるの?」
(とにかく今は高翔宇とともに楚に行くことを勧めるわ。聖女の力について詳しくわかるはずだから)
「・・・考えてみるわ」
秀英は劉翔宇と楚に行くことに気乗りしなかったが、王玲莉の言った言葉が気になっていた。
(私が王玲莉以上の力を持っている?皇太子殿下は運命の相手だけど、結ばれてはならない?全然理解できないわ・・・そういえば)
「王玲莉、あなたの記憶だろうけど、建兄との過去のことも私は知っているの。私が忘れていた記憶は当たり前だけどあなたの記憶も自分の記憶のように頭の中を駆け巡ったの。どういうこと?」
(・・・私にもわからないわ)
「そう・・・」
秀英は自分自身と聖女に関する謎がまた増えていった。
「・・・様!玲莉お嬢様!お嬢様!」
玲莉は春静の声ではっと目が覚めた。
「旦那様と奥様が来てありますよ」
玲莉が寝台から起き上がると、目の前に二人が机を囲んで座っていた。
「玲莉、どうした?具合でも悪いのか?先程まで翔宇殿下が来てたと思うが」
「父上、大丈夫です。ただ、ちょっと疲れただけです。翔宇殿下も父上たちが来るだろうからと言って帰られました。また明日来るそうです」
玲莉は劉翔宇との間に何が起きたのか絶対に悟られないようにした。
「姉上は?」
「あぁ、蘭玲は・・・今部屋で休んでる。あとでお前に会いに来るだろう。玲莉も蘭玲も明後日には王家から出て行ってしまう。陛下が気を遣ってくださり、二人が家を出るまで休みをいただいた。勇毅も逸翰も夜には帰って来るだろう」
玲莉は寝台から立ち上がり、椅子に座った。
王浩と思敏は少し疲れ切った様子だった。
「父上と母上こそ顔色が悪いですよ。私のことはいいから休んでください」
王浩は悲しそうに笑っていた。
「玲莉とこういう風に話せる時間も少ないのだ。父も母も心配なのだよ。ここ最近のお前にはいろいろありすぎた。今でこそ何も起きていないが、いつまた身の危険にさらされるかわからない。そんな時、私は父としてお前をそばで守ることができないのだ。きっと思敏、勇毅、逸翰も同じ気持ちだろう。私たちはただ玲莉には幸せなってほしいだけだ。いつまでも笑い続けてほしい。私は丞相で陛下の側近という立場にいる。何があっても私は陛下を守らなければならない。自分の娘が目の前で危険にさらされていてもだ。この立場のおかげで家族と裕福に暮らすことができたが、今立場だからこそ娘を失うこともある。玲莉、まだ笛は持っているか?」
玲莉は首にかけていた笛を王浩に見せた。
「冬陽と寒松にはお前の護衛を任せている。もちろん陛下には内密にだ。冬陽には宦官のふりをして忍び込ませる。寒松は外から見張らせる。このことは絶対に漏らすな。春静もだぞ」
春静は顔を引きつらせながら頷いた。
「父上、そこまでしなくても。もし誰かに知られたら・・・」
「確実に首が飛ぶな」
王浩は大笑いしていた。
「父上笑い事ではないですよ」
王浩は再び真剣な顔つきになった。
「私は父親としてそれくらいしかできぬ。大切な娘なのだから」
「玲莉、私も反対したの。もしこの秘密が知られてしまったら、浩だけでなく、王家皆処刑されるかもしれないわ。でも、私も玲莉のことが心配でたまらないの。だから、浩の提案に同意したわ」
(なんで私のためにそこまで・・・私は皆をだましているのに・・・本物の王玲莉は私の中で眠っているのに)
玲莉は椅子から下りて、二人に向かって跪いた。
「父上、母上、私は二人の娘に生まれて幸せです。本当にありがとうございます」
玲莉は深々と頭を下げた。
皆涙を堪えることができず、号泣していた。




