五、難航する玲莉の捜索
劉翔宇の隠れ家についた建明と黒風は春静に玲莉がさらわれた時の状況を聞いていた。
「玲莉をさらった者たちは玲莉が聖女であることを知っている者たちだろう。しかし、このことは少数の者しか知らないはず。王家が漏らすとは考えにくい。あとは知っていそうなのは陛下と・・・。まさか・・・そんなはずは・・・」
建明の頭の中にはある人物の顔が思い浮かんでいた。
(もし私の予想が当たっていたらどうする?それが事実ならば・・・私は・・・)
建明が思いつめた様子で何を言っているかはわからないが、ぶつぶつ言っていた。
建明は何かを決心したように立ち上がった。
「黒風・・・たしかめに行くぞ」
黒風は何のことだかさっぱりわからなかったが、建明に声をかけられるような雰囲気ではなかった。
建明は黄飛と春静には何も告げず、去って行った。
黒風も一礼し、建明の後を追った。
春静と黄飛は顔を見合わせながら、首をかしげていた。
玲莉を家に連れ帰った男は玲莉を布の上に寝かせ、手当てできそうな薬草を探していた。視界に光を感じ、玲莉を見ると、淡い光に包まれていた。
不思議な光景に驚きながらも男は恐る恐る玲莉に近づき様子を見た。
すると、玲莉の手足の切り傷が綺麗に消えていった。
「どういうことだ?まさかあの光はこの娘が・・・」
男は玲莉に会う少し前に同じ淡い光の輝きを見たことがあった。
傷が癒えると光は玲莉の中に戻るかのように消えた。
(この娘は何者なのだ?)
男は玲莉のそばで胡坐をかき、玲莉が目覚めるまで、玲莉をじっと見つめていた。
大雨になったせいか寒松は途中で玲莉の行方が分からなくなったようで、冬陽の袖をつかみ、首を横に振っていた。
「殿下たち、ひとまず雨宿りしましょう。この集落にいるのは間違いないでしょう。しらみつぶしに捜すしかないようですね」
皆はとりあえず近くにあった空き家らしき家に雨宿りした。
それから、冬陽は口笛を吹き、鳩を呼んで、王浩に今いるおおよその位置を伝えるため、記した紙を鳩に託した。
「殿下たち、焦る気持ちはわかりますが、ひとまず旦那様が来るまでここで待ちましょう。人数を増やして手分けして捜したほうが、玲莉お嬢様が見つかる確率は高くなります」
劉翔宇と李義は一刻も早く玲莉を捜したかったが、冬陽の意見は正しかったため、気持ちを抑え、冬陽に従うことにした。
灯りもない真っ暗な暗闇の中、月明かりだけが輝いていた。
心地よい風にあたりながら、劉翔宇は空を見上げていた。
(秀英、どこにいるんだ。君はいつも俺のそばから突然いなくなる。君を見つけたら、絶対に離さないからな。覚悟しとけよ)
「秀英とは誰のことですか?」
後ろから李義が近づいてきた。李義は劉翔宇がぼそっと発した言葉を聞き逃さなかった。
「もしかして玲莉以外にも想っている女性がいるのですか?それならば、玲莉のことは私にお任せください」
李義はニヤリとしながら、勝ち誇ったかのように劉翔宇を見ていた。
「聞き間違いですよ。私の心には玲莉しかいません。今世で前世でも・・・」
「前世?」
劉翔宇は鼻で笑いながら、何もないと言ってまた空を見上げた。
「李義殿下、私は負けませんから。今度は絶対に離しません。もう二度と・・・」
劉翔宇の深刻な顔に、李義も真剣な表情で言った。
「翔宇殿下、私も玲莉を誰にも渡しつもりはありません。忘れないでくださいね。玲莉との距離は私が一歩進んでいますから」
李義は自分の唇を指でさした。
劉翔宇は李義と玲莉がキスをしていた時の光景が頭に浮かんだ。
「李ー義ー!」
劉翔宇と李義が一触即発の状態になっていた時、松明の灯りがこちらに向かっているのが見えた。
劉翔宇と李義は互いに向けていた剣を松明の方へ向けた。
「王丞相!?」
馬に乗って数人引き連れていたのは王浩だった。
「やっと見つけました。冬陽と寒松は?」
劉翔宇は案内しますと言って王浩を二人のもとに連れて行った。




