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転生聖女ー運命に抗う姫と三人の皇子ー  作者: 日昇
第二章 三人の皇子との同居生活

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三、冬陽と寒松

春静(チュンジン)玲莉(リンリー)が父王浩(ワンハオ)からもらった笛を落としていることに気づいた。

春静は地面に顔を擦りつけながら、口を塞いである布をなんとか顎にの下までおろし、口の中に詰めてあった布を吐き出した。

春静は口で笛をくわえると、思い切り吹いた。しかし、音が鳴った気がしなかった。

もう一度吹こうとしていると、春静の目の前に目元以外全てを隠している二人の男が現れた。頭から足先まで全身黒づくめだった。

一人の男が春静の手足の縄を解きながら、春静の声をかけた。

「春静、聞いてると思うが私が冬陽(ドンヤン)でこっちが寒松(ハンソン)だ。お嬢様に何かあったのか」

「お嬢様がさらわれました。私のせいです。私が・・・。お嬢様を助けてください」

春静は興奮状態にあり、冬陽の胸ぐらをつかみ、泣きながら訴えていた。

「大丈夫だ。安心しろ。お嬢様は必ず助ける」

春静は何度も頭を下げながら、二人に懇願していた。


外から騒がしい声が聞こえ、劉翔宇(リウシャンユー)李義(リーイー)も庭の様子を見に来ていた。

二人から見ると、春静が二人の男に襲われているように見えていた。

二人は顔を見合わせ、頷き、剣を抜いて二人の男に向かって行った。

春静は殿下たちが勘違いしていることに気づき、冬陽と寒松の前に出て、二人を止めた。

劉翔宇と李義は春静が目に前で止めに入ったため、剣をゆっくり下ろしていった。

「春静、襲われていたのではなかったのか?この男たちは何者だ?」

春静は劉翔宇と李義の目の前で、膝から崩れ落ちた。

「翔宇殿下、皇太子殿下・・・お嬢様がさらわれました」

「何だと!」

劉翔宇はくそっと言いながら、地面を拳で力強く殴っていた。

李義は驚きのあまり声も出なかった。

劉翔宇は春静を落ち着かせ、何が起こったのか詳しく話させた。

劉翔宇と李義は誰が玲莉をさらうよう指示したのかある程度予想がついていたが、玲莉をどこに連れて行こうとしているかまではわからなかった。

「春静、お嬢様の持ち物を持ってきてくれるか。できれば身につける頻度の高いやつを」

突然言い出した冬陽の言葉に皆首をかしげていた。春静も不思議に思いながらも、玲莉の部屋へ走っていった。

春静は櫛、衣、装飾品など手あたり次第思いつくものを持ってきた。

冬陽はある物を手にして、寒松に渡した。冬陽が寒松に渡したのは玲莉の肌着だった。

「それはお嬢様が今朝着替えたばかりの肌着です」

(お嬢様ごめんなさい)

劉翔宇と李義は何を想像したのか、ゴクリと唾を飲み込んだ。

寒松はそれを手に取ると、隠していた鼻を出し、その肌着を顔の押し付け、思い切り嗅いでいた。

「何をしている!」「何をしているのですか!」

劉翔宇と李義は慌てて止めよとしたが、冬陽が二人の前に出て、説明した。

「寒松は犬並の嗅覚と聴覚を持っているのです。春静、笛の音聞こえなかったでしょう?あの笛の音は寒松にしか聞こえません。その点は優れているのですが、人と話すことや意思疎通には難がありまして。ちなみに私と寒松は実の兄弟ですので、私だけは寒松の言動が理解できます」

「なるほど。それにしてもうらやま・・・。いや、その、素晴らしい能力ですね」

本音が漏れそうになった劉翔宇を李義と春静は冷めた目で見ていた。

寒松は玲莉肌着を嗅ぎ終わると、今度は周りをクンクン嗅ぎはじめた。

寒松は何かを感じ取ったようで、冬陽にある方向を示し、走っていった。

「皆さん、私についてきてください」

冬陽は寒松の後を追いかけて行った。

劉翔宇は黄飛(ホアンフェイ)に春静と残るように命じ、劉翔宇、李義、白庭(バイティン)は冬陽の後に続いた。


黒風(ヘイフォン)建明(ジェンミン)の明日からの荷物を置きに劉翔宇の隠れ家に来ていた。

(何だ?この静けさは)

黒風は奇妙な違和感を感じた。

違和感を感じながらもとりあえず荷物を持ち、建明の使っている部屋に行くことにした。

玲莉の部屋の前を通ろうとしていたら、春静が縁側に座り、魂が抜けたように一点を見つめている姿が見えた。顔には痛々しい擦り傷があった。

「春静、その怪我はどうした?」

春静の止まっていた涙が再び流れはじめた。

黒風は春静が急に泣き出し慌てた。

「黒風さん、お嬢様が・・・さらわれました」

「それは本当か!」

春静は黒風に玲莉がさらわれたこと、殿下たちが救出に向かったことを話した。

「殿下に伝えないと」

黒風は王家にいる建明のもとへ急いで行った。




「ありがとうございます。建明殿下。わざわざ王家の足を運んで、玲莉がどう過ごしているか知らせてくださって」

建明は王家を訪れて、玲莉の母や姉たちに玲莉の近況を話していた。

「建明殿下、春静が殿下たちに粗暴な態度をとってしまい申し訳ありません。帰ってきたら叱っておきますので」

思敏(スーミン)は困った顔をしながら、ため息をついていた。

「王夫人、気になさらないでください。春静は玲莉を守りたいと思ってそのように振舞っているのですから。春静が見張っていないとあの皇太子殿下たちは玲莉に何をするかわかりませんよ。叱るどころか褒めてあげてください」

そう言って建明は温かい笑顔をしていた。

蘭玲(ランリン)は建明の笑顔を見て、胸が高鳴るのを感じていた。

(まさか、そんな・・・そんなはずはない。建明殿下は玲莉の許嫁よ)

蘭玲は鼻で笑い、今の胸の高鳴りは気のせいだと言い聞かせていた。

「明日にはまた玲莉のところへ戻りますので。安心してください。玲莉は私が必ずお守りしますので」

建明の言葉に思敏、蘭玲、(ジャオ)は安心した表情をしていた。

建明が立ち上がり、挨拶をして帰ろうとしている時だった。

「殿下ー!」

建明は自分の名を呼ぶ声が聞こえたので、戸を開けた。そこには、息を切らしながら、焦っている黒風がいた。

「黒風、どうした。そんなに慌てて」

建明は軽く笑いながら、黒風に近づいた。

「殿下、玲莉お嬢様がさらわれました」

「何!」

建明の顔は一気に青ざめ、黒風とともに劉翔宇の隠れ家に急いだ。

「母上、父上に知らせないと」

思敏は護衛の者に声をかけ、早急に王浩に伝えるよう指示した。

「母上、大丈夫です。父上が助けてくれますよ。それに、殿下たちもいますから」

「そうね」

思敏は平静を装っていたが、明らかに手が震え、動揺していた。

蘭玲は思敏の手を握り、自分にも言い聞かせるように大丈夫、大丈夫とつぶやいていた。

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