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花しか描けない宮廷画家  作者: Kaspar.
コスモス編
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9.コスモス(7)

「そう、そこは軽く動かしてください」


 ディアンとアーネは庭で花を描いていた。もう、何にも縛られない、自由な芸術だ。アーネの目は輝いていた。ディアンも言うまでもない。誰かと楽しむのが一番良いのだ。


「そろそろ戻らないといけませんよ、ディアン様」

「えっ、ああもうこんな時間か」


 城の門を出て民衆の丘に向かうと、すでに多くの市民が集まっていた。そろそろ国王の演説が始まる。


 民衆の丘から見えるドアが開くと、市民はどよめいた。新しい時代への期待に感じられた。


「愛するパウロの民よ」


 歓声が上がる。


「今日はここで問いたい。皆の正直な思いは何だ?この国に抱いている不満は何だ?聞かせてくれ」


 皆口々に言い始めた。丘の下から大声を上げた。


「水が汚い!」

「村の生活が貧しい!」


 ディアンの後ろの青年が叫んだ。


「そうか、そうか」


 全てを聴けているわけではないだろうに、ずっと国王は頷いていた。少年の「美味しいお肉が食べたい」という叫びには笑って答えているように見えた。


「皆の声で、心で、私はこの国を動かしたい!嘘をつかずに生きられる、誠実な国を目指す!」


 演説の後、ディアンとアーネはデビンの元に向かった。デビンは演説には行っていないようだった。アーネはそのわけを尋ねようとした。


「理由なんてないさ。ただお父様が今日の朝、『退位しようと思う』なんて言い出して、さすがに早すぎると思って止めた」

「陛下が退位?」


 ディアンは出された茶を飲む手を止めた。


「ああ、国を変えるためにはそれくらいしないとならんとおっしゃっていて、僕は、『あなた自身が変われは十分ですよ』って言ったんだ」

「なんからしくないですね」

「らしくないとは何だ、ディアン。今日はちゃんと言ったんだぞ!」


 アーネはその掛け合いを見て笑った。久しぶりに笑った顔を見たと、デビンは喜んでいた。


「そういえばディアン、お前のお友達が個展を開くそうだよ」

「えっ、ラッセルが!?本当ですか」

「ああ。街の掲示板に貼ってあった」


 ディアンはすぐに部屋を飛び出し、街へと駆け出していった。それを見て、デビンはアーネに言った。


「面白いくらい、友人思いなやつだ。アーネは行かなくて良いのか?」

「すごくついて行きたいけど……今はディアン様の大切なお友達との時間なので」

「そうだな。あんたも良いやつだ」


 街の小さな美術館に着くと、ラッセルが待っていた。


「おい、ディアン。そんな焦って来なくても」

「いや、びっくりして……」


 もう肩で息をしていたディアンを見て、ラッセルは笑った。


「個展を開くなんて……すごいじゃないか」

「お前も大概だよ。やることはやったんだろう?」

「うん」

「自分の力で、欠点があっても自分を貫いた。たぶん芸術家精神の塊だな」


 ディアンは美術館の中をのぞいた。ラッセルの進歩を見たくて仕方がなかった。


「入るか?」

「もちろんだよ」


 ラッセルの作る芸術の世界に、ディアンも踏み込んだ。


 新しい芸術家人生のはじまりを思って。


 《了》

ここまでお付き合いいただきありがとうございました

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