LV70
「………………に今日、お母さんが倒れて……病院に入院し……連絡があったの。……怖くなっち……いメ……しまったの。ごめ……けに泣いちゃ……るよ私。」
………………
「……ねぇ? 聞い……? 私……話つ……ない?………ごめんね」
ゆるふわちゃんだ。BOXシートで俺の前に座りハンバーグセットを食べながら身の上話をしている。
ここは、どこだ?いや、どこだじゃないぞ。知っている。知っている場面だ。これはゆるふわちゃんが目指していた12/25日のカフェだ。この後、ゆるふわちゃんはお母さんの入院の知らせを聞いて、慌てて帰省するんだ。
……嘘だろ。帰れたんじゃないのか?元の世界に?
初音さん、初音さんは?
俺は店の他の客を見渡したが、あの黒髪ロングのすらっとした初音さんを見つけ出すことは出来なかった。
どういうことなんだ?……初音さんは?店にいるよな?俺の知っている25日なら。
「ゆるふわちゃん、ちょっと30分位外に行っても良いかな?」
「全然、いいよ」
「ごめんね」
「どこ行くの?」
「……彼女の様子が見たくて……実は、今、彼女を待たせてるんだ。ごめんね」
俺は、少し驚いたあと笑顔で良いよと言ったゆるふわちゃんを店のBOXシートに置いて、初音さんの日本食レストランまでの200m程度の道を駆けた。
片側4車線、計8車線の大通りを渡り、高層ホテルの一階、暖簾が見えるそこには初音さんが………………
いない。俺の記憶の中ではワンサイズ小さいミニスカサンタコスを着て店の前に立っていたはずのあの人がいなくなっている。
どうしてだ……また、違う世界にでも来ちまったのか……
俺が、店の入口の目の前でうなだれているとトナカイの女の子が俺を見るなり慌てて店の中に入っていった。
ああ、店先の入口で怪しいよな。俺は仕方なく。元来た道を引き返す。
「ちょっと、店先で陰気に佇まないでくれる? 軽い営業妨害よ!」
俺の背中に聞きなれた声が喧騒の大通りにあってもはっきりと聞こえてきた。その声の方に俺は向き直り、その声の主をいとも簡単に見ることが出来た。赤いミニスカサンタコス、小さめピチピチ。肩幅に足を開き身体の前で腕を組んで巨乳を乗せて胸を張る初音さんが笑顔で店先に立っていた。
「ねぇ? 会いたくて戻ってきちゃったの? 知ってるわよ。私のこと大好きだものね」
俺は10m程離れたところから、咄嗟に駆け付け無防備な初音さんを抱きしめた。
「ちょ、ちょっと、何よ。いくら大好きでも、私、仕事中なのよ。しかも、店の前で」
「いいから、ちょっとでいいから、このままでいて」
初音さんの耳元で囁くと俺に抱きつかれていた初音さんの力が抜けて身体を預けて来るのが感じられた。




