LV63 1/2(土)-7
ゆるふわちゃんの落ち着きを取り戻すのに三十分を要した。あの興奮状態で会話をしてもカメがおとなしくバス停だか道端だかに止まりそうもないと俺は考えた。俺のすべきことは目の前のゆるふわちゃんに現状を認識してもらう事しか無いと思っている。それが、最短でカメから降りる方法だと思っている。その先にゆるふわちゃんが悲しい思いをしてもこの瞬間は許容してもらうしかないと考えている。よくある事だ、自分の想いが相手に伝わらない、自分の気持ちがすれ違う事など、実にありふれた物語だ。
……俺はそう自分に言い聞かせている。
「ゆるふわちゃん。悪いけど、君の気持には俺は答えられない。例え、このまま、12月25日に戻ったとしてもそれはないも変わらないよ」
「何でよ! あなた、その人の事好きなの? 愛してるの? はっきり言って!」
「俺は、わからない。愛しているのかってそんな事はわからない。でも、はっきりしている事は一番大切だ。もし、俺が逆の立場で元の世界で彼女を探して、ここにいると分かれば俺は何の迷いもなく、ここに飛び来む。たとえそれが命の危険があったとしても俺は躊躇しない。万が一の確率だってやり遂げる覚悟がある」
涙を隠すことなく俺を険しい表情のまま、見続けるゆるふわちゃんに続けた。
「悪いがゆるふわちゃん。俺の正直な気持ちだ。それをゆるふわちゃんが愛というのであればそうなんだろう。でもな、俺にはそんな言葉ではなくて、ただ大切なんだよ。理由なんてのもわからないよ。わからないんだ。でも、一緒に居ると自然に嬉しくなる。楽しくなる。安心する。悲しませたくない。全部欲しくなる。頼りになる。時々、頼りにならない。それから……」
「もういいよ。気持ち悪い……そんな話。つまんない。もうやめる……やめやめ、なんかくだらなくなって来た。……もう……もう、いい……」
ゆるふわちゃんの嗚咽だけが部屋に響いていた。




