(第040話)勝負銅山にて.5
広野は世界が利己的になっているのが”鋼身”への対策が出来ないと言っていたが、もう一つ知っていて隠していたことがあったが、それが明らかになったのは随分後の事だった。ともかく、その時は勝負銅山にあるという”パンドラの鉄棺”を探して坑道の奥へと向っていった。
坑道の中は荒れ果て今にも崩れそうな状態であったが、最近人が通った痕跡を辿りながらいった。また奥に行くにつれて広野が持参してきた装置の数値はドンドン上がっていた。
「広野、その数値はいったいなんだよ? まさか放射線量ではないだろうな」
「いや、違う。なんていったらいいんかなあ。まあ一種のエネルギー波の数値とでもいうべきかな。とにかく、こいつが強いほど”鋼身”はコントロールされるというわけだ。だから」
一行が地下を歩き始めて一時間ぐらいして、広野の持っていた装置の数値は最大限の状態になっていた。すると広野は三人の銃のようなものを渡した。
「これって、まさかピストルですか?」
「いや違う。これは一種の光線銃で人間には無害だけど”鋼身”が浴びると一時的に行動不能になるんだ。これは兄貴が開発したものだけど、本当に効果は一時的だから逃げる時にしか使えないから」
「広野さん、その”パンドラの鉄棺”だけど、誰か守っている人でもいるんじゃないですか? もしかすると彩華の叔父さんとか」
その可能性が高いからこれを渡したんだ。そうそう、何かがあったら脱落者が出ても助けずに元来た道を戻って逃げろ。逃げ切ったらとにかく片山さんの家まで逃げる事!」
広野は三人にそういうと、”パンドラの鉄棺”に取り付けると言っていた装置をバックから取り出してセットを始めた。
「この装置は一種の起爆装置だ。もし本物の”パンドラの鉄棺”なら起爆スイッチが入った時に一種の核分裂反応が起きて爆発するはずだ。もし爆発しなければ・・・その時はその時で考えるしかない」
「いったい”パンドラの鉄棺”の中身はなんですか? いい加減教えてもらえませんか?」
「それははっきりしていないんだが、一種の物質転送装置みたいなもので、人間を機械に変える物質を送り込む装置なんだ。そのあたりの物理法則はわからないけど、もしかすると我々地球よりも数千年文明が進んだ異世界の文明から送り込まれたものかもしれない。
だから”パンドラの鉄棺”を破壊すればこの周辺の人間が機械になる現象は収まるかもしれない」
「そうですか・・・でも、この”パンドラの鉄棺”を破壊する装置は誰が考えたのですか? 広野さんのお兄さんですか」
朋美が聞いたとき広野は一瞬、悠爾の顔を見ており、なにか告白しないといけない真実を言おうとしていた。