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75/87

【75】 牛丼店

 博之は、警察を出た。


博之「あ~~~っ、腹が減ったー」


 自宅までの帰り道、博之は最初に目にした外食店に入った。気持ちが落ち着いたら急に腹が空き、食べられればどこでも良かった。


博之(どこでもいいや。おっ、牛丼店がある。よし、ここで食べよう)

 博之は牛丼店に入った。


店員「いらっしゃいませ」

博之「注文は食券ですか?」

店員「いえ、口頭で承ります」

博之「そうですか、ちょっと考えさせてください」

店員「はい、決まりましたら、お声を掛けてください」

博之「はい」


 博之はメニューを見始めた。そして

博之「すみませーん」

店員「はい」

博之「牛丼の並と、しじみ汁と、半熟卵と、キムチをください」

店員「はい。牛丼並、しじみ汁、半熟卵、キムチ」

 店員が繰り返した。


博之(牛丼店かぁ、久しぶりに来たなぁ)

博之(そうだ、)

 博之は、ふと思い出した。

博之は、今まで自分してきたことを思い返していた。

博之「今まで随分ひどいことを言ってきたからなぁ」


【回想の始まり】


 税務署で納税相談を担当していたとき。


滞納者「食費はどうしても一日千円はかかるだろう。だから月3万円」

博之「えっ、そんな高いもんを食べてるんですか?」

滞納者「高いかな?」

博之「高いですよ。牛丼や立ち食いのかけそばなら一食280円で済みます。3食食べても840円ですよ。差額の160円は納税に回せるでしょ。一年中、牛丼だけを食べてればいいんですよ」

滞納者「毎日牛丼かい?」

博之「最高じゃないですか。大体、今、3食食べない人も多くなっているんですよ」

滞納者「それは、3食食べるな、って言ってるのか?」

博之「完納するまで、我慢も必要でしょ」


【回想の終わり】


博之(こんなときもあったなぁ)


【回想の始まり】


滞納者「子供が産まれて、そっちに随分と金がかかるんだよ」

博之「子供が産まれちゃったんですか?」

滞納者「めでたいだろう」

博之「どこがですか?」


滞納者「なんだと!」

博之「なぜ、子供を作っちゃったんですか?」

滞納者「出来たもんは、仕方ないだろう。自然な流れよ」

博之「普通、税金を全部支払ってから子供を作るんじゃないですか?」


滞納者「誰がそんなことを決めたんだよ」

博之「納税は国民の義務です。憲法にそう書いてあるでしょ」

滞納者「ふん」

博之「督促状は持ってきましたか?」

滞納者「いや」

博之「不持参ですね」

滞納者「何が富士山だって?」

博之「『不持参』の意味もわからないんですか? そんなことだから滞納するんですよ」


【回想の終わり】

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